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ハムスター、懸命に生きたのだ

先日、ハムスターが亡くなった話を書いたところで、
まさか半月でもう一匹の子も亡くなってしまった。
まろ、という名前のハムスターだった。

原因は多分左脇にできた大きな腫瘍。
毎日の健康チェックも欠かさず行っていたのに、
その腫瘍は急に、人間でいうバレーボールくらいの大きさで現れた。

体内の、心臓に近い脇の方。
あぁもうこれは長くないかも知れないと直感的に悟った。

腫瘍を確認したのとほぼ同時に、まろはあまり動かなくなった。

まろは、毎日私たちの気配を感じると、特にプラの袋のガサガサ音を感じると、
音もなくスリコで買ったむしかごハウスから出てきて、
扉の前でずっとおとなしくスンスン鼻を鳴らしている。

ケージを2段にスタッキングしていたので、まろはいつも下の階。
上の階のハムちゃんが動いたり餌を食べたりする音でも出てきていたし、
結構忙しない、よく動くハムだと認識されていた。

そんなまろが、あまり動かない。私たちの気配を感じても出てこない。
「上の階のひとがいなくなって意外とおとなしく寝れてるんかもなぁ」くらいに呑気に捉えていたところだった。

ハムスターの腫瘍は早いと言っても、まろはまだ1歳7ヶ月。人間でいう働き盛りからちょっとおじちゃん、に変わるくらいの歳。
そんなすぐにお亡くなりにはならないだろうって信じようとした。

当のまろは、1分動けば3分はそこでぐったりする、完全な病気状態。
肩から腰のほうまで、常にいつもの倍くらいの鼓動。
水、飲まない。えさ、食べない。唯一食べるもの、小動物用の蜂蜜ゼリー。

緩やかに、亡くなるまで、緩やかに着地させてあげたい。
病気になったペットを持つ人間の気持ちはきっとみんなこう。
なるべく、頑張ってほしいけど、それでも無理しないで
ゆっくりもう、無理なら無理でいいから。

方やまろは、そんな気持ちを挟む余地もなかった。
むしかごハウスから出てきたまろ、
いつものように水を与えるが飲まない。
軽く体を触るがいつも通り。

そこからが違った。急によろけたかと思ったら、
いきなり大きな口を開けて、最大限に酸素を吸おうとしている。
これは発作だ。心臓か、何か、大きな変化が起こっている。
そしてこれはもう止められないものだ。

寝室に行ったばかりの息子たちに知らせに行く。
まろを抱いているけど、手からは体温も鼓動も落ちていくのがわかる。

「ねぇ!まろもう死んじゃう!顔だけでも見て!」と子供たちを起こして、
顔を見た時には、最後の呼吸を終えた後だった…

まだ柔らかい、まろの身体。目はいつもと同じように開いている。
でも体からは生命の全部が抜けているのがわかる。

長男も絶句し、急いで次男を起こしてくれた。
次男も、まろの状態を見て、その場で突っ伏した。
だってまだ、時間があると思っていたんだもんな。

ヨボヨボになって、誰もが「この子はもうすぐ命を全部使い切るのだろう」という状態になるんだって疑わなかった。

だけどまろは、ついこないだまで、誰にも負けないくらい
生命力に溢れていて、ご飯もバクバク食べて、散歩も爆走して、
生きることに全力のまろだったのだ。

まろは我が家に来たハムスターにしては珍しく、生年月日がしっかりとわかっていた子だった。
2021年3月9日うまれ。魚座。
先代ハムは水瓶座。なのでよく朝の占いでどちらがいい運勢なのか
勝負していたね。

なぜか田舎生まれで、V系に憧れて、都会に来たという
謎のキャラ付けのおかげで、まろの行動は非常にみんなを癒して
楽しませてくれた。

たった一年半という、ハムスターにしても少し短めの命だったけど
一生懸命、スンスンし、誰よりも食べ物を食べ、どんな時でも弱った部分を見せまいとしたまろに賞賛を与えたい。

まろが動かなくなって、まろが大好きだった回し車がずっと同じ位置で止まっている。
もう何日も、同じ角度で止まっている。
私にはそれが辛い。



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