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愛ってそんないいもんじゃないよ。

「まりちゃんにとって、“愛”って何?」
いつだったか幼馴染に訊かれた。
一年ほどぐるぐる考えていたと思う。

愛。愛ねえ。
なんだか、大人になるにつれて、少しふわふわしていて小恥ずかしかったものから、芯のある一つのれっきとした形ある主張のように感じるようになった。
恋がしっくりきていた乙女も愛を知り始めたらしい。

私は、その人の良いことも悪いこともひっくるめて受け入れられるのが愛だと思う。
その場で回答しなければならんとなったら、そんな当たり障りのない、大抵の方なら、「ふむ、その考え方もあるよね、納得」というような答えを出しているのだけれど、ここなら、時間を掛けて答えてもいい場所なので、一年熟成の今の私なりの“愛”を答えてやろうじゃないか。

一年熟成させて削り出した答えは「愛ってそんないいもんじゃない」ということ。

胸が温かくなって、じんわり泣いちゃうような愛を受けたこともあるし、今よりもまだまだ未熟だった10代にとんでもなく心がしんどくなる色恋を経験して、歪んだ愛も、重い愛も、人を傷つける愛も受けたこともある。
後者は愛ではないという考え方もあるけれど、私はれっきとした愛だと考えているから、本当にとんでもねえ変幻自在感情だ。

泥臭いとも思える人間味のある感情、それが愛。愛の形は人それぞれで、これが愛だと頷く人もいれば、それは愛じゃないと嘆く人もいる。愛ゆえにいい方向に進むときもあれば、悪い方向に進むときもある。愛しているからと言って全部がハッピーに進まない、なんなら、バッドエンドだってもたらしちゃう恐ろしいビッグモンスターエモーション。それが、愛。愛って一歩間違えれば、人を滅ぼせる力を持っている。程度が違えば大惨事になる炎のような、そんな存在。

愛って、素敵だけど、案外、そんないいもんじゃない。
四半世紀しか生きていないが、それでも四半世紀は生きたので、四半世紀なりにいろんな愛を見聞きもしたし、体験したし、今の私はそう捉えている。

家族間も友人間も恋人間も愛は存在すると思うし、ストーカーの抱く感情だって、一つの愛の形じゃないか。
ちなみに私の“愛”の形を表現するなら、自分の一部(臓器)を与えてでもこの世にいてほしいと思うこと。自分でちょっとギリ引く重めの感情。

見過ごせないパワーがある、そんないいもんじゃない愛。だけども、それもひっくるめた上で抱きしめたいし、絶対に手放したくない感情だ。

なぜなら、“愛”は“大切にしたい”欲求を生み出すものだと思うから。愛することは、大切にするということ。でも、その大切にしたいは、私の見解では、そのものの存在を自分が少し犠牲を払ってでも残したいと思う強い意志が含まれる。ここまでの欲求は、誰にでも感じるものではないし、すべての身近なものに感じるものではない。それは一生に一度かもしれないし、幾つもの愛したいものに出会うかもしれない。しかも、コントロールできない。自分の理想や社会的理想なんてものはお構いなしで、“愛”センサーが反応すると、自分の理性次第では盲目的に動いてしまうこともある。本当にとんでもねえ。

愚かと言えば愚か。でも、そこまで身を投げ打てる尊さもある。
相反しそうなこの二つの混じり合いを生み出す感情は、実に人間臭い。私はその愚かさと尊さをすべて味わいたい。愛に包まれて幸せだと感じたり、愛に呑まれてもがき苦しんだり。そんな上手いことばかりでない泥臭い人生を、時にスキップしながら、時に地に這いつくばりながら謳歌したい。

忘れたくないのは、まずは、“愛”を自分自身に向けること。誰かにではなく、自分で自分を愛する。グラスの底に空いた穴を修復して、自分の良さも悪さも認める。愛を注いで、己を磨く。そうなれば、余裕が出て、ちゃんと目の前の愛したい人を愛することができる。それを繰り返せば、愛したいと思うもの愛せるようになる。
人を愛したくても、その人に愛を注いでいるつもりでも、自分が満たされていなければ、その愛は届かなかったり、自分自身や相手を傷つけてしまうと、スーパーネガティブ女だった過去の私が教えてくれた。

今、私は愛していると心の底から思うものは、目の前のパートナーと三つ子の片割れ二人、まだまだ未熟な人生の中でも、愛したい、愛していると思える稀有な存在に出会えたことに感謝。一緒に生まれてくれて感謝。
この三人は、自分の臓器を与えてでも生きてほしいと思うのです。
本人たちは真顔で「やめろ」と言うだろうから、決して言わないけれど、万が一があるとき、私もこの世に生き続けられる道で自分の身を捧げられるなら一部だけ捧げる気持ちでいる。


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