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世界最古の歌(セイキロスの歌♪)

九條です。

皆さま。世界最古の歌とは、どのような歌かご存知でしょうか?

それは、今からおおよそ2200年〜1900年前(紀元前2世紀〜西暦100年代の頃)に造られた古代ギリシア時代の墓碑に刻まれている歌です(以下約1,600文字)。

それは日本の歴史でいえば、ちょうど弥生時代にあたりますね。

さて、その墓碑は「セイキロス」という名前の男性のお墓の碑で、そこには妻のエウテルペさんへ宛てて贈った詩が当時の言葉である古典ギリシア語(古代ギリシア語)で刻まれています。

その詩には、なんと、当時の音符や旋律の指示書きも記されているのです♪

長年の研究の結果、古代ギリシア時代の楽器とともに現在ではその「詩と旋律」(すなわち「歌」)が復元されています。

もちろん、これよりも古いと考えられる歌は存在していて僅かに断片的に現在まで伝わっているものはいくつかあるようですが、ほぼ完全な形で学術的にきちんと(正確に)復元できる歌としては、このセイキロスさんの墓碑銘の歌が現在のところ世界最古のものとなっています。

それでは、とても短い歌ですが、その歌をご紹介したいと思います。

なお、このセイキロスさんの歌が収録されている音源は、今から15年ほど前にアテネ在住のギリシア人の友人から当時の現地(アテネ)で販売されていたCDをプレゼントしていただいたのですが、先日ネットで検索してみるとYouTube上でもGoogleによる(?)公式チャンネルで公開されていました。

ですからここではそのYouTube上の公式チャンネルで公開されている動画をご紹介させていただきます。^_^

『セイキロスの碑文』(「セイキロスから妻のエウテルペへ」)(グレゴリオ・パニアグア/2007年録音/1分53秒)

※音量が小さいです。適度にボリュームをあげてお聴きになってください。

【原文(古典ギリシア語)】
〔前文〕
Εἰκὼν ἡ λίθος εἰμί.
(エイコン[イコーン]・イ・リソス・エイミ[シーミ])
Τίθησί με Σείκιλος ἔνθα μνήμης ἀθανάτου σῆμα πολυχρόνιον
(ティティシ・ミ・セイキロス[シーキロス]・エンタ・ミーミス・アッサナートウ[サッサナートゥ]・シーマ・ポリュクロニウ[ポリフロニュ])

〔本文(歌詞)〕
 Ὅσον ζῇς φαίνου
(オソン・ジース[ディース]・パイノウ[ペヌー])
μηδὲν ὅλως σὺ λυποῦ
(ミーデヌ・オーロス・シ・リプー)
πρὸς ὀλίγον ἔστι το ζῆν
(プロス・オリゴヌ[オリゴノ]・エスティ・ト・ジーン)
το τέλος ὁ χρόνος ἀπαιτεῖ
(ト・テロス・オ・クロノス・アパイテイ[アペイティ])

〔あとがき〕
Σείκιλος Εὐτέρ…〈πη〉…
(セイキロス[シーキロス]・エウテルぺ…〈ピイ〉…
以下欠損

※[ ]内は歌っている女性による発音
※あとがきの末尾の〈 〉内は欠損部分の推定補足

(片仮名読み:九條正博による読み)

【日本語訳】
〔前文〕
私は墓碑です
セイキロスさんがここに建ててくれました
想い出が永遠で不滅のものとなるための印として

〔本文(歌詞)〕
命ある限り輝いていてくださいね
思い悩んだりしないでくださいね
人の一生は、ほんの僅かな間なのですから
時はいつも奪われて行くものなのですから

〔あとがき〕
セイキロスより(妻の)エウテルぺ…〈へ〉…
以下欠損

※あとがきの末尾の〈 〉内は欠損部分の推定補足

(日本語訳:九條正博 訳)
ヘファイストス神殿(B.C.415年頃/アテネ)
※ギリシア本土では最も残りの良い古代の神殿

昔、必要に迫られて古典ギリシア語を約半年間、現代ギリシア語を約1年間学んだことがあります。ですから何とかギリシア語を読むことはできます。

またその意味も何となくですが大まかには分かります(雰囲気が掴める程度です)。けれども辞書がなければ書くことはできませんし、話すことは全くできません。

なので、あまり深くは突っ込まないでくださいネ。

ちなみに、古典ギリシア語は英語のような「強弱アクセント」ではなくて、日本語と同じ「高低アクセント」の穏やかな言葉です。

ですから、私たち日本人は古典ギリシア語を聴いてみると、何となく(意味は分からなくても)スッと心に入ってくるような、何となく親しみが湧いてくるような気がするのではないでしょうか?


©2024 九條正博(Masahiro Kujoh)
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