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2024年1月に読んだ小説についてつらつらと

年が明けてもう一ヶ月経ってる…時の流れの早さにカレンダーを眺めながらちょっとぼうぜんとしてしまいますね…。2月の月初から仕事まわりでバタバタしていますが、心は平静にのんびりした気持ちを保ちたいものです。
1月中にひさびさに(3年ぶり…?4年ぶり…?)のどの調子が悪くなって体調崩してなんだかとてもしんどかったなあ…体調不良ってこんなにしんどかったでしたっけ…。日頃、たびたび気圧頭痛で頭がいたくなったりする事はありますが、ああやって純粋に体調崩したの久方ぶりだったもので、衝撃があったというか健康の有難みを感じる1月の日々でしたね。

そんなことを感じつつ、先月読んだ本について今回ものんびり振り返っていきましょう。


白石定規「魔女の旅々 学園物語」(GAノベル)
同じ著者である白石定規さんが書かれている「魔女の旅々」シリーズを元にした現代学園パロディ。いやもう…これは嬉しかったです。
こうしてこちらのパロディもシリーズ化したものを読めるのとても嬉しいし幸せでした…楽しい。全力で可笑しさのある展開に振りきっていておなか抱えて笑ってしまいましたね。
ほうきさん…ほうきさんはいいぞ……。


安里アサト「86-エイティシックス-Ep.11 ディエス・パシオニス」(電撃文庫)
いやー…これは…ここまできてまだこれほどの悲痛な心の声があるものなのかと改めてこのシリーズの凄みに息をのむようでしたね…シンの言葉が頭からはなれない……。ようやく前を見て進み出す決意をかため出した矢先に、機動打撃群の前に立ちふさがる数々の亡霊たちは目をそむけたくなるような容赦ない牙をむき……。ここまでエイティシックスを読んできて、わりとこのシリーズの展開には経験値を積んできたつもりだったのですが、その心を躊躇なくさらっていく予想出来ない展開に感情ぐるぐるになってしまったなあ…しんどい。そういえば『オールスター香水バトル』に辿り着くまであと少し…。


綾崎隼「この銀盤を君と跳ぶ」(角川書店)
年明け早々に今年のベスト級の作品に出会ってしまったなあ…ものすごくよかった…感動…。振り返ると読後に目頭が熱くなって止まらなかった感情の動きが今でも蘇るようですね…。フィギュアスケートという氷上の舞台に強い想いを懸けて挑む二人の少女の物語であり、彼女たちが舞う姿を一番側で信じ続けている人達の物語。素晴らしい物語でした、オススメの一冊。
彼ら彼女たちが、その時その時の全力で持ちうるものを抱えながら目の前の高みを目指してあの氷上の舞台に立っていること…そしてそれを支え信じ続けている人がいることにとても心動かされましたね。しかしそれでも競技である以上、選ばれるものと選ばれなかったものが確定してしまうという最終話の『決戦』はもうほんとにドキドキでした…。
京本瑠璃という登場人物にどうしたって惹かれてしまうというか、私の琴線の塊のようなヒロインでした…そして江藤朋香という登場人物も好きで堪らなかった……。
綾崎隼さんのタイトルに「君」が入っている物語は、いつもそうやって私の心を激しく揺さぶってくるお話なんだよなあ…好きすぎるよ…。


八目迷「ミモザの告白4」(ガガガ文庫)
シリーズ第四弾、ついに新刊が読める嬉しさたるや…汐の妹である操に焦点を当てた巻であり、槻ノ木家に流れてきた時間にゆっくりと焦点を当てていく巻でしたね。咲馬と汐、そして汐と操…どちらの関係も良きかたちで続いていくことを願わずにはいられない。例えどういう事態になろうと汐と操がお互いを大切に思うという芯があるかぎりはきっと兄妹であるという事に変わりはないんじゃないかなあと思う。ああ…次で最終巻……。


「小説集 Twitter終了」(中央公論新社)
Twitterという世界に10年以上ものあいだ身を置いている人としては読まざるを得なかったなあ…おもしろかったです、ツイッターが無くなった世界…もしくはこれからツイッターが無くなっていく世界をめぐる6つの物語が収録された本。一番に楽しみにしていた斜線堂有紀さんの『Twitterが終了したので、ここでしか繋がっていなかった助手との関係が切れた。』が特に好きでしたね、根谷はやねさんの「もう一人のあなたを作る方法」も青春味があって好きだったなあ……。楽しい掌編集でした。


鈴森琴「忘却城」(創元推理文庫)
第3回創元ファンタジイ新人賞佳作入選作品。いやはや…鈴森琴さんの本はどういう世界観のお話なのか読み進めて馴染んでくるともう面白さが止まらない…濃密、死者を蘇らせる術により発展してきた王国を舞台としたファンタジー。魅力的な登場人物それぞれの思惑や王家の策謀が明かされる場面など読み所がたくさんあって楽しかったです。盲目の少女死霊術師、『人魚』と呼ばれ心に傷を抱えた青年、王族殺しの異民族の女性などなど…魅力に満ち満ちていて夢中で読んでしまった…。鈴森琴さんのファンタジー、先日のアルスルシリーズもそうでしたが練りに練られた奥行きがあって面白すぎる…。舞蒐と儒艮がとても好きな登場人物だったなあ…続きも読んでいくのが楽しみなシリーズです。


叶田キズ「ねぇ、もういっそつき合っちゃう? 5 」 (HJ文庫)
シリーズ完結巻、いやー…よかったです…ラブコメとして一つのクライマックスと言える想いを伝える方法がとても素敵でした、幼なじみな二人を追いかけてきてほんとによかったと思えるシリーズでした。


白川紺子「京都くれなゐ荘奇譚 呪いは朱夏に恋う」(PHP文庫)
シリーズ第四弾、澪と高良の関係性が巻を重ねるごとに変化していくのをとても面白く読んでいるシリーズ、今回もよかったです。照手大活躍の巻だったなあ…頼もしい、そして可愛い。高良の様々な姿を見るうちに呪いだけを解きなんとか彼を生かす方法が無いか模索する澪の姿に心動かされるものがありました…。しかし相変わらず玉青さんのお料理は美味しそうで食べたくなって困ります…(笑)


青季ふゆ「本嫌いの俺が、図書室の魔女に恋をした」(PASH!文庫)
とても素敵な余韻で終わる青春ラブコメでした、良かった…。何よりも本が好きでそれが無いと生きられない本好きの文月さんと、クラスでは明るい振る舞いを見せる本嫌いな清水くんが少しずつ『本』を通じてお互いの事を知っていき温かいやり取りを重ねていく姿が好きでした…。やっぱりメインの登場人物に本好きがいるお話好きですね、楽しい。文月さんの好きな本を繰り返し読んでしまう気持ちが分かりすぎるほどに分かってしまうのも好きでした…(笑) 本というか物語が好きな人にとってはあの場面はとても心に響くものがあるんじゃないかなとも思う。


古宮九時「不可逆怪異をあなたと2 床辻奇譚」(電撃文庫)
ああ…とてもよかった…続きがあれば読みたいなと強く思っていたので2巻が読めてとても嬉しい気持ちでいっぱいです。それぞれの美しい決断とそれぞれを大事に大切に想う気持ちに感動…。序盤から二色こぺさんの素敵な挿絵にウワッと声が出ていましたね…良すぎた…。読谷さんと墨染雨さんの積み重ねてきたやり取りや時間にも心動かされてとても好きでしたね。蒼汰くんのその強靱なまでのブレない心の強さも相変わらずで…。蒼汰、花乃、一妃…三人のお互いへの想いやそれぞれの在り方がほんとに好きなシリーズでした…。


中田永一「吉祥寺の朝日奈くん」(祥伝社文庫)
好きすぎた…とても琴線をくすぐってくる本でしたね。交換日記を綴り合う少年少女、切ない関係を保つ少年少女の三人の関係性、どうにもならない自分の体質に日々翻弄される少女とそれに興味を抱いた少年とのやり取り…様々な5つのお話を収録した恋愛短編集。とにもかくにも『三角形はこわさないでおく』この短編が好きすぎて…青春もの好きな人にはこの短編だけでも履修して欲しい気持ちが止まらない…読んでください…。中田永一さん「くちびるに歌を」読んだのがもう2年前でしたか…あのお話も好きだったなあ。他の本も読んでみたいところです。


藤つかさ「まだ終わらないで、文化祭」(双葉社)
余韻がもう堪らない本だったな…。生徒側からのサプライズが慣例となっているとある高校の文化祭、そこでは『文化祭』という祭りの裏で様々な人の感情や思惑が動いていて…とても素敵な景色を見せてくれる青春ミステリな群像劇でした、こういう感情を抱かせてくれるから私は青春ミステリを追いかけ続けているんだろうな…と、強く思いました、その一方でほろ苦さもあり…絶妙に好きな要素が盛り盛りだったなあ。そして彼が放ったその一言がずっと頭の中で響いている…。葉月さんと艮さんのからまってしまった関係性がどうなっていくのかもっと続きが読みたい…!二人のその後がもっと読みたい…!


小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」(文春文庫)
静かな感動が胸を満たすお話でした…すごかったなあ…チェスという無限の可能性を宿した海を旅する少年がやがて『盤下の詩人』と呼ばれるチェスプレイヤーになっていく道のりの中で出会った様々な人々…その人達とのゆっくりとしたやり取りにとても心が動かされる小説でした。世の中にはまだまだ出会っていない唯一無二の読書体験を感じられる本が眠っているんだなと強く感じました……。彼が出会った大切に想う人の一人であるマスターの口癖が読み終わった今も静かに胸に響き続けている…。



年が明けてから好きな作品を読み返すのがちょっとしたマイブーム…?になっているような気がします、わりと定期的に訪れる衝動でもありますが…。あとあれですね…!なんといっても私に初めて青春ミステリの楽しさを教えてくれた米澤穂信さんの小市民シリーズの映像化が発表されてそれはもう飛び上がらんばかりの嬉しさでした、どんな小佐内さんや小鳩くんに会えるのか今から楽しみです、楽しみすぎる…。2月も素敵な本に出会えますように…。