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2024年3月に読んだ小説についてつらつらと

朝方、空が明るくなる時間帯が早まってきて嬉しい気持ちになるなあ、例え仕事の日だろうと空が明るいとちょっぴり心の動きが前向きな方向に進む感じが好きだったり、明るいというは偉大。
3月月末のバタバタがようやく一段落でホッとしている4月1日でもありますね。4月、新年度かあ…1年前のいま頃って何を考えていたっけなあ…とか、何か目標立てていたっけなあ…とか、色々と振り返ってしまう時期な気がする。一日一日を過ごしているとそれを積み重ねているうちにいつの間にやら日々があっという間に過ぎていて、立ち止まってふと後ろを向こうとするとぼうぜんとした気持ちになる。
ただそんな時でもnoteを始めるようになってよかった事の一つに、楽しかったイベントや読んだ本の感想記事を読み返していると、確かに楽しかった事もたくさんあったな…と気軽にその時の感情に再び触れられて気持ちがふわっと軽くやわらぐのがいいなと思ったり。

さて、2月は個人的な小説強化月間…?な感じで読んでいたので、わりと多めに小説を楽しんだ月でしたね、楽しかったな…また小説強化月間やりたいです。そんなこんなで今回も先月に読んだ小説についてつらつらと振り返ってみましょう。


音はつき「夜に溶けたいと願う君へ」(スターツ出版文庫)
初読み作家さん、思った通りというか私の好きな雰囲気の青春小説を書かれる作家さんだったなあ…好き。まわりから優等生として頼られるヒロインの松下色葉は、居場所がない息苦しさを覚えた時にふらりと夜に消えたくなるような気持ちを抱えながら夜の街に向かう秘密を抱えて…。
瓦井くんのあの場面の背中かっこよかったです…。松下さんも瓦井くんも関わり合ううちに少しずつ関係性が変わり、表情がやわらかくなっていく姿がとても好きでしたね。彼女と彼のこれからの日々が呼吸のしやすい日々でありますように…。ところで瓦井くんはちくわぶ好きの同士です…(笑)


織島かのこ「嘘つきリップは恋で崩れる」(GA文庫)
こちらの作家さんも初読みでした、今年挑戦したい作家さん5人のうちの1人をようやく手に取りました、いやー…すごくよかった一気読みしてしまった…。薇色の大学生活を目指すために大学デビューを果たした七瀬さんと、おひとりさま主義の生活を貫くために彼女の薔薇色の大学生活を目指すことに協力する事になった相楽くんを中心とした大学生青春恋愛もの。
私はわりと高校生あるいは中学生の青春ものを好んで読む人ですが、この嘘つきリップはスッと入り込みやすくて夢中で読みきってしまったなあ…。
七瀬さんがどうしてそういう姿に変わるために努力したのかという気持ちがまさに青春であり、何に対しても真摯な姿勢で物事に向き合う姿が好きでたまらないものがありましたね…好き。
ぶっきらぼうだけどだんだんと七瀬さんの言うことには弱い一面をのぞかせる相楽くんの姿も好きでした…楽しかった…。
極めつきに、ただのゆきこさんの素敵イラストが良すぎてもうほんとに………。北條くんと須藤さんの青春模様もいいぞいいぞ、もっと二人の姿も読みたい感じだったり。そうそう京都が舞台なのも好きポイントでした、季節が巡っていくのも好きなところだったんだよなあ…私は春夏秋冬の季節が移ろっていくお話に弱い……。好きポイントが多すぎる青春もので大変楽しかったです、堪能。


杉井光「世界でいちばん透きとおった物語」(新潮文庫nex)
ようやくです…ようやく読みました…ほんとに杉井光さんという作家さんはその度に心震わせる物語を書かれるなあ…おもしろかった。読み終わった時の感情を何と表現すればいいのか…途方もない……。
大物ミステリ作家である宮内彰吾が亡くなり、彼の死ぬ間際に書いていたとされる『世界でいちばん透きとおった物語』その物語には一体どんなお話が書かれているのか…徐々に浮かび上がってくる真相に驚きを持って読み終えた…。杉井光さんの書く物語「さよならピアノソナタ」「神様のメモ帳」「楽聖少女」「楽園ノイズ」などなど…その時その時でほんとに心動かされてきたけれど、また新たに「世界でいちばん透きとおった物語」が追加されました……。


阿部暁子「カラフル」(集英社)
この様々な事が起こる世界で一人一人違う色を持って生きているからこそ、関わることでいろいろな影響を受けたり気持ちが動いたり感じとれていなかった世界が見えるきっかけが生まれたりすんだろうなと思う。
気持ちの強いヒロインよかったなあ…車いすユーザーである渡辺六花と、とある出来事により陸上の道から遠ざかってしまった荒谷伊澄…それぞれが出会いによって新たに思いを懸けられる確かなものに辿り着くまでの青春もの。特に矢地先生の言葉が染みたなあ…ずっと頭の中で響き続けている…。阿部暁子さんのお話やはり好きでしたね…お話が動き出してくると登場人物たちの表情とか感情が生き生きと感じられるのがすごく好き…。渡辺さんと荒谷くんのやり取りをもっと眺めていたかったです…いい青春ものでした。


光原百合「十八の夏」(双葉文庫)
それぞれの短編に花がモチーフとなって登場するところが印象的、人が人と関わる中で生まれる切なさ温かさ…そしておそろしさなど、様々な読み味が心を揺らす四つのお話が収録された短編集。一番のお気に入りは書店員が主役となる『ささやかな奇跡』だったなあ…読後の余韻も好きでした。ああ…そして『イノセント・デイズ』の凄味が…。光原百合さんのお話は登場人物たちの細やかな感情の揺れにとても深く入りこんで読んでしまいますね…。


小川洋子「博士の愛した数式」(新潮文庫)
とても温かな気持ちに包まれる読後感…80分しか記憶がもたない数学に強い気持ちを向ける『博士』と、家政婦をすることになった『私』と、その息子である『ルート』3人の温かく思いやりに満ちた日常のやり取りに胸がいっぱいになりました……。タイトルだけは以前から知っていたけれど、第1回の本屋大賞受賞作だったんですね…あらためてこうしてしっかりと向き合って読んでみてよかったと心から思える一冊でした。
博士が毎朝の起床時にどういう気持ちで自分の現状と向き合っているのか想像すると目頭熱くなってだめだったな……。
小川洋子さんの本はまだまだ読んでいきたいですねー。


有栖川有栖「ロシア紅茶の謎」(講談社文庫)
こちらも今年挑戦したい作家さん5人のうちの1人、有栖川有栖さん。いきなりこの本から読んで楽しめるかという思いもあったけれど、いやもう全く問題なく楽しめたなあ、とても真っ直ぐに楽しむことが出来るミステリで面白かったです、ミステリって面白い…!と率直に感じるミステリ短編集。
臨床犯罪学者の火村英生と、その友人である推理作家の有栖川有栖のコンビが、時おり肩の力が抜けるやり取りを挟みながら次々と事件の謎を解き明かしていく姿を楽しみました。『赤い稲妻』と表題作の『ロシア紅茶の謎』を特に楽しんで読みましたね。
ずっと心の中で気になっていた『英都大学』という言葉の謎が解けました…(笑) そういう意味でも嬉しい本でした、手に取ってみてよかった。シリーズ読んでいくのが楽しみです。


乗代雄介「旅する練習」(講談社文庫)
ああ…練習…その言葉の意味は……。サッカーを愛する少女の亜美と、小説家の叔父の1週間という限られた期間での二人旅、鹿島アントラーズの本拠地を徒歩で目指す小さな旅は移り変わる風景のなか、ひたすらに歩き、書いて、蹴る二人の姿で……。どんな形であれその純粋で真っ直ぐな気持ちが未来にどう繋がっているのか分からない日常を生きているんだなあ…と、読後の余韻に何とも言えない気持ちになっていましたね…どこまでも響いて鳴りやまない余韻…亜美を見つめる叔父のまなざしがとても…。そして自分にとってほんとに好きなこと、大切なこと、いつまでも追いかけ続けたいことって何なのかなあ…とか色々考えこんでしまった…。みどりさんの言葉一つ一つが私にはとても強く印象に残っています。


雨森たきび「負けヒロインが多すぎる!6」(ガガガ文庫)
シリーズ第六弾、んー…相変わらず青春してました、おもしろかった…!
今回は焼塩さんの回と言ってもいいのかな、今回の八奈見さんは比較的おとなしいなと思い始めた矢先にあれをむしゃむしゃし始めて大笑いした、油断してた、流石です…。八奈見さん好き…。


平戸萌「私が鳥のときは」(河出書房新社)
バナミさん…中学3年の受験生である蒼子、彼女は夏休みのある日、母親が突然さらってきたバナミさんという存在に戸惑うが…。表題作の『私が鳥のときは』そしてバナミさんの事がより一層好きになる表題作のスピンオフ『アイムアハッピー・フォーエバー』どちらも清々しい風が通りぬける夏の青春ものでよかったです、表題作は第4回氷室冴子青春文学賞大賞作。
平戸萌さん…また追いかけていきたい作家さんが一人増えましたね…。


荻原規子「これは王国のかぎ」(角川文庫)
いやはや…おもしろかったですねー、終盤はもうハラハラドキドキでした…。とある作家さんが呟いていてそれからずっと気になっていた本、「樹上のゆりかご」よりも先にこちらのほうを先に読んだほうがいいとSNSのふぉろわさんに教えていただいて早速こちらから手に取りました。
あらすじとしては、失意の中で誕生日を迎えた上田ひろみは目が覚めると突然アラビアンナイトの世界に飛び込んでいる事に気付き……。復刊による書き下ろし短編付き。
魔神族のジャニとして過ごすアラビアンナイトの世界、様々な王子との出会いや、次々と巻き起こる出来事に夢中になって読みましたね。ラシードのミリアムへの気持ち…じっくりと繰り返し読んでしまったな…。


東崎惟子「少女星間漂流記」(電撃文庫)
初読み作家さんでしたが、カバーイラストの雰囲気を眺めてこれは私の絶対好きな本では…!と思い手に取ってみた本。とても私好みのお話で楽しかったなあ、科学者であるリドリーとその用心棒であるワタリは荒廃した地球に代わる安住の星を探しリドリーの作った風変わりな宇宙船に乗り今日も新たな星に降り立って……ふたりぼっちの宇宙漂流記なお話。
色とりどりの後味がお楽しめる本でしたね、『愛の星』『本の星』『甘の星』のお話が特に好きでした。ワタリさんつよつよで良きでしたー、もっとふたりが旅する姿を見守っていたい気持ちがむくむくと…続きがあるなら読みたいですね。


中田永一「百瀬、こっちを向いて。」(祥伝社文庫)
またしても中田永一さんの本に心揺らされてしまった…良すぎた…『小梅が通る』がどうしても好きなお話だったなあ…柚木さんと山本くんの行く末にはらはらしつつ、土田さんと松代さんの柚木さんを想う言葉にじーんとくるものがあって…。ああ…でも『なみうちぎわ』や『キャベツ畑に彼の声』のお話も好きで、全ての登場人物が愛おしくなる本だったなと思う。表題作もどうしたってその瞬間の彼女の表情を想像してしまうお話で好きでした、恋愛の持つもどかしさ切なさ…そして透きとおるような相手への想いが込められた恋愛小説集。
そのあとに実写映画のほうも観ましたがそちらも楽しみました、屋上で髪切ったあとの相原くんと百瀬さんのやり取り、あの場面の雰囲気が特に好きでしたね…。


白川紺子「花菱夫妻の退魔帖 三」(光文社文庫)
シリーズ第三弾、朗らかに笑う鈴子と孝冬の姿が増えたなあ…なんだかそれがとても嬉しい気持ちになる巻でしたね。花菱家の歴史が詰まった淡路島に行くことになった二人…そこでは神事をこなす一方、島の人々からのお祓いの依頼を引き受けることになり…。すすり泣く青年、悲しげに歌う少女など、孝冬と共に依頼先で様々な出来事に行き合うなかで、鈴子はやがて淡路の君へのとある気づきを得る…続きがますます気になるシリーズ。
鈴子と孝冬のお互いへの穏やかなまなざしが今巻は特に強く感じられてよかったなあ…と、思ったりしました。


阿部暁子「金環日蝕」(東京創元社)
ヒロインである大学生の春風はとある日、目の前で知人がひったくりにあう場面に遭遇し犯人を取り逃すが、後日同じ現場に居合わせた高校生の錬と共に正体を突き止めようと動きだすが…。
どんなにその言葉がもろく見えたとしても信じるという言葉を信じるしかないのかもなあ…。北海道を舞台に、阿部暁子さんの作品の中では特にミステリ要素の強い現代劇だったなと思う。春風や由紀乃さんのとある場面の言葉が忘れられない…忘れないようにしたい…。
阿部暁子さんの小説が好きなのは、呼吸が合うというのもあるけれど、中心となる登場人物たちがそういう世の中でも日々を真摯にかたちにならない想いを信じて生きていこうとする姿が好きなのかもなあ…とぼんやり思ったり。そうあれたら…ありたいという憧れみたいな願いのような気持ちもあるのかなあ…。


東直子「さようなら窓」(講談社文庫)
好きな作家さんがSNSでの読書会でお話されていた本でいつか読んでみようと思っていた本。
一つ一つのお話は眠る前にゆったりと聴いていたくなるような不思議で短いお話ですが、どのお話も余韻をじっくり感じられるお話で読み終わった時にページをめくる手を止めて一呼吸必要でした、いい本でした。
淡く温かい感覚の文章が心地いい感じで好きでしたね…。『希望』のお話が特に心動かされたなあ、背景は違うけれど彼女の言葉に自分がそう感じた時の思い出がよみがえってたまらない気持ちになって涙腺ゆるゆるになってしまった…。人と関わりながら生きていくというのはこれだけの様々な感情を感じながらその時々で自分で決断して日々を過ごしていくということなんだなあと色々と考えこんでしまった…。連作短編集。


荻原規子「樹上のゆりかご」(角川文庫)
おもしろかったです。旧制中学の色濃い伝統がただよう辰川高校に通うヒロインの上田ひろみ、学園祭の準備に追われる中で巻き起こる放火騒ぎや生徒会への脅迫状…終盤に近づいていくにしたがって高まっていく緊張感…はらはらする学園ミステリ?サスペンス?に感じたなあ……。
合唱祭という学校イベントに喜んでいたのも束の間…不穏な出来事を始まりとして同級生との距離感や辰川高校に漂う雰囲気に翻弄される上田さんの姿に夢中になって読んでいましたね、江藤くんがひょうひょうとしていて面白かったです…それに近衛有理という存在が一際強烈に印象に残る……。
荻原規子さんの本を読みたい熱が高まってきたのを感じる、他の本も読みたいですね。「白鳥異伝」も長いこと再読していないので読みたいところですねー。


こうして振り返るとSF読んだのが意外と少なめ…? 4月はSF強化月間にしようかしらん…(笑) 何にせよ自分なりのペースで楽しんでいこうと思います、今月も素敵な本に出会えますように…。