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老舗BtoB企業が広報担当を採用した理由

今回は、老舗缶メーカーで広報担当を採用した話についてです。
先日Twitterで広報担当採用したという呟きをしてから、毎日DMが届いて色んな質問を頂くので、せっかくなのでまとめてみたいと思います。

結論的には次のステージに進むために必要だったということになりますが、やっぱりできることが増えると人も組織も楽しくなるかなあという想いがその一義的な理由の根幹です。

側島製罐と石川貴也について

側島製罐のことも石川のことも初めての方もいらっしゃると思うので簡単に紹介しておきます。

社 名:側島製罐株式会社
代 表:石川浩章
創 業:1906年(明治39年)
従業員:35人
場 所:愛知県海部郡大治町西条字附田89
業 種:スチール缶の製造(お菓子・乾物・ワックスなどの缶)
H P:
https://sobajima.jp/

普段は、海苔屋さんやあられやさんの銀色の缶カンや、デパ地下のお菓子屋さんの缶カンを作ったりしているBtoBの会社です。

そして、自分はこの会社の6代目の予定で、2020年4月に事業承継を見越して平社員として入社しました。2022年7月現在の今も平社員です。


この2年で側島製罐がやってきたこと

2020年末にカラフル缶のTwitterがバズったのをきっかけに、側島製罐ではtoCの領域への挑戦を進めています。どんなイベントがあったか時系列で示していくと

2020年
11月 Twitterがバズる
12月 アニメイト社と取引開始、缶単体での販売を開始

2021年
1月 通販サイトSOBAJIMA立ち上げ、通販開始
9月 ギフトショー初出店(in町工場プロダクツ
   FNNプライムニュース掲載、昨年のツイートが再度バズる

2022年
1月 東急ハンズ渋谷店取引開始
2月 東急ハンズ名古屋店取引開始
3月 新宿マルイ本館 BASE POPUP STORE 出店
   カラフル缶新商品投入
5月 Sotto予約販売開始
   デザフェス出店

そして、2020年末から2022年6月までの時点で、toCの発送1000件以上、プレスリリース発信4回、取材60件以上、商標登録申請3件、といった感じで進めてきました。

ここで語りたいのは実績ではなく、これだけのイベントや対応事項が発生しているにも関わらず、この業務を対応するリソースが全く増えていなかったということです。弊社の人数は35人で、それぞれが製造現場や営業、総務事務などの所掌業務を持っており、上記の業務を石川も含め全員が片手間で協力しながらやってきたという経緯がありました。

カタチだけ整えているばかりで煮え切らない販促

toCの領域については、弊社もこれまで一度もやったことがないところで、石川自身も経験が無く未知の世界でした。最近は通販の文化が根付いており、自分自身もサービスを享受する立場で学ぶ機会は多いのですが、やはりイラレもフォトショップも触れない素人が作る販促物には限界があります。見よう見まねでテンプレートを使用して作ってみたのが上の画像ですが、手作り感満載ですよね。今思えば、世界観も表現されておらず、字数も多すぎ、フォントとデザインも合っていないといった感じでツッコミどころ満載な感じなのですが、片手間でやっていた当時はこれが限界でした。

この同時期に企業公式のTwitterやinstagramも立ち上げましたが、こちらもスタッフがやってくれていたものの本業の片手間でやっていたこともあり、更新は滞り続け、中途半端な状態でした。せっかく商品を受け取った方がタグ付けしてSNSに投稿してくださっても、それに対するリアクションもできず、というジレンマを抱えている状態でした。

今思えば、ものすごく雑な仕事をしてきたと思うんです。BtoBの会社が頑張ってtoC事業を開始している、という免罪符に甘えた状態で、梱包も雑、メッセージカードも中途半端、SNSでのコミュニケーションもできず、という体たらくで、弊社の製品をご購入くださった方に届けられた価値は「モノ」だけだったと感じています。この会社の商品を買ってよかった、と思っていただけるような体験が不十分だったということですね。toCの事業規模が大きくなるにつれてこのようなユーザーフォーカスできていない状況を看過できなくなり、広報担当の採用を喫緊の課題として認識するに至りました。


広報専任ではtoomuchだが…

とはいえ、さすがに35人の製造業の会社で、toC事業もまだ駆け出しであるところ、広報専任者を採用するのはtoomuchな気もしていました。SNSの運用をするためだけに広報担当を採用しました、っていうのもギャンブル感ありますし、社内の納得も得られにくいですよね。

そこでいったん、弊社で今やりたいけどできていないことを棚卸して、改めて広報担当採用のペルソナを考えてみることにしました。

【MUST】
ネットリテラシー
高い日本語作成能力
基本デジタルツールの利用経験

【WANTS】
illustrator、Photoshop
イラストデザイン
ウェブデザイン
通販サイト運用経験
ライター経験

ご覧の通り、広報の仕事にはデザインやマーケティングの領域も関わってくることが多く、広報採用と考えていたけれど実際にはこれだけの業務領域に精通している必要があるわけです。広報専任では採用に踏み切るには躊躇しましたが、これだけの領域をカバーするポジションが社内にできればシナジーも大きく、改めて広報・デザイン・ウェブマーケティングの兼務で1名の採用に至りました。


広報採用のお知らせに対して寄せられた質問と回答

さて、ようやく本題に入るわけですが、今回広報担当を採用した旨をツイートしたところ、DMや返信でたくさんご質問をいただいたので、改めてこちらでもまとめてみます。


Q.どんな人を採用することが出来たのか?

所謂「中の人」になるので属性情報の回答は控えておきます。そのうちイベントなどでひょっこり現れると思います。スキル的なところの話をしておくと、広報は未経験ですが、日本語作成能力が高く、イラレやフォトショも使えてイラストデザイン、ウェブデザインにもある程度精通している人です。カルチャー、キャリア、スキルのいずれもかなりフィットしている印象です。

Q.どの媒体で採用することが出来たのか

今回の採用の入り口はengageでした。が、途中でWantedlyやnote、Twitterも見てくれていたので、多面的に採用に貢献できたのかなと思っています。

Q.社内でハレーションは起きなかったのか?

結論、弊社ではハレーションは起きていません。今までに採用したことのないポジションだったこともあり、「そんな人必要なの?」と思われがちだから起きる質問なんでしょうかね。この辺は少しパワープレイですが、石川がこれまでオーバーフローし続けながらも広報・toC・デザイン・販促物作成等をやってきて、メディアに出させていただいたりする機会も多くなり、toC事業もそれなりの成果をあげつつあったことに対して人を入れることに対する抵抗はなかったのではと感じています。加えて本人の人柄もとても良いので、社内では基本歓迎ムードだと認識しています。他のポジションにも言えることかもしれませんが、採用したことのないポジションを作るときはそれなり納得できる根拠は必要だとは思っています。

Q.実質的には石川の右腕とか秘書的な感じなのか?

こちらについては、明確にNoです。確かに広報領域は基本的に石川とコンビを組んでやる感じにはなるので必然的に同じタスクを共有する時間は長くなりますが、組織内ではcan推進課というチームに入り、営業の販促物やホームページの管理、社内データインフラ整備など付随業務にも携わってもらうので、石川の専属部下という認識はないです。そもそも石川は全部署横断的に区別なくある程度見ているので、広報はその中のone of themになる感じです。

Q.ペイできるのか?

これは一番多かった質問です。つまり費用対効果がどうなのか、ということですね。今この瞬間にも弊社の商品を買ってくださる方の想いに誠実に応えていくための採用なのでペイできるかどうかは短絡的には考えないようにしている、というのが回答です。弊社のミッションは”世界にcanを”なので、それを実現するために必要なことはやるべき、という覚悟でもあります。
とはいえ、弊社もお財布事情が楽なわけではないのでちょっとは考えるわけですが、新たに開始したtoC事業でこのままのペースで続伸すれば十分手当はできると踏んでいます。

おわりに

というわけで、中小のメーカーのtoC事業挑戦の新たな一歩としての広報担当採用の話でした。

広報ってコストセンターと認識されがちで、特に中小の製造業では採用する会社は多くない様子なのですが、個人的にはうちみたいなBtoBの会社こそ世の中の人たちとのリレーションは大事すべきだと感じています。これまでは側島製罐のストーリーに共感してくださった方が応援的に弊社の製品を買ってくださってた程度に留まっていましたが、これからはそれに磨きをかけるとともに、他機関との連携を深め、点ではなく面でもっと価値をつくっていけたらいいなと思っています。それが僕が思うメーカーとしての矜持です。

採用はやっぱり、自分たちがやりたいけどできないことを実現してくれる人に来てもらえるのが嬉しいし、組織も強くなるから、楽しみだよね、と思います。もっと仕事が楽しくなって、もっと世の中に価値をつくることができますよう。

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