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逗子日記

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神奈川県逗子市で暮らす日々を散文でお届けします。
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記事一覧

最果て前の日常

最果て前の日常  あなたはどれだけ長い間あの本棚の中にいたのだ。  330円の値札に隠された…

流謫社
3か月前
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稀にサイレンが聞こえたりする。

稀にサイレンが聞こえたりする。  締め切ったカーテンの片側を少しだけ中央に寄せる。するり…

流謫社
3か月前
1

怪物が息を止める。

怪物が息を止める。  電車に乗ることもある。言うまでもなく病院へ行くためである。車内の蛍…

流謫社
3か月前
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私は冬と話すために。

私は冬と話すために。  また春になりました。  いつもより多くの人々が前を向いているよう…

流謫社
3か月前
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【逗子日記】 20231114

 この土日は寒かった。海が、人で溢れたバカンスの様を見送ってから逗子を囲む山々の木枯らし…

流謫社
7か月前
1

【逗子日記】 20230922

 海の家が綺麗さっぱりいなくなった。解体されていく様子を何度も見ていた。夜中の砂浜には積…

流謫社
8か月前
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【逗子日記】 20230913

 今日は9月13日。今年の海の日にBandcampで公開した1stシングル『しおんの花かげ』が音楽サブスクリプションサービスでも聞けるようになった。  希望も意味もなく、いや、いつか何らかの希望や意味を見出せたのだとしても、それらを思うこともできない時の、インターネットの海に揺られているだけの誰か、僕はその誰かが身体にのしかかる重みに耐えきれず海底に沈んでいくのか、力を込めることもできず水面に浮かび続けるのかを考えている。僕は光を届けられないと知った場所で聴いた音をよく覚え

【逗子日記】 20230820

 連絡が来た朝だった。僕にしてみれば珍しい朝だ。「行くよ」と返すことができた。夜、「返事…

流謫社
9か月前
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【逗子日記】 20230813

 夕方、好きな作家がゲストとして参加しているトーク配信を見た。2ヶ月遅れの後追いだった。 …

流謫社
10か月前

【逗子日記】 20230804

 骨董市で見た美術雑誌の切り抜き。お店のTシャツのシンプルなデザインにこだわりを感じる。…

流謫社
10か月前

【逗子日記】 20230802

 眠いけれど起きた。朝の4時半だ。昨日は11時前には寝ていた。(のだろう)  それから1時間…

流謫社
10か月前

【逗子日記】 20230725

 静かな港町に似合う立体駐車場は2F、僕はざらざらとした白塗りの表面に手をかけた。眼鏡を外…

流謫社
10か月前

【逗子日記】 20230726

 受付終了の5分前に駆け込んだ待合室は、静かだった。正確な時刻を感じる無菌室。  滅多に使…

流謫社
10か月前

【逗子日記】 20230719

 3時半に起きた。もちろん、なのかどうなのか、それは平日午前のことだ。休日午後の3時半に起床した場合、悲しい気持ちを引きずらせてもらえる間も無く、さっさと1日が終わっていくだろう。  海へ行こう。僕はシャワーを浴びた。空はさっきまで寝ていたベッドのシーツみたいに薄青い。夏用のものだ。例年通り衣替えが遅くなってしまった。  朝が白くなる前に、まだ暗い時間に、外へ出たい。乾燥機はもう止まっていた。  スニーカーはやめにして、普段履くこともないサンダルにしてみた。鳥や蝉が鳴く声は玄