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【随想】髪の毛が落ちている部屋

大学時代、音楽系のサークルに所属していた。
練習場所は「サークル棟」という2階建ての建物だった。
1階は機材が常設というか置きっ放しになっており、軽音楽サークルやジャズ研究会などが共同で使用していた。
2階は特に物は置いていなかったが、各サークルが時々利用していたようだった。
つまり、普段のサークル棟はほぼ音楽サークルの場所だった。

学校祭ともなるとサークル棟の1階はライブ会場になった。
ただ、2階はひたすら酒を捨て身で呑む場所になり、首から「黒いゴミ袋」をぶら下げ(予めシラフの時に吐く前提で結びつけているのがスゴい)、そこにゲロを吐きながら降りて来て、1階のトイレに正式に吐くゾンビたちで溢れていた。令和では考えられない飲み方である。

学校祭が終わった翌週などは、ある程度掃除はしてくれていたものの、酸っぱい臭いが立ち込めているので窓全開にしてから活動を開始していた。
 ふと見ると、1階のあまり使っていない6畳くらいの部屋の真ん中にイスが置いてあり、周りに男性ひとり分くらいの髪の毛の束が落ちていた。
そこに西日が差し込んで、断髪刑が行われた刑場のような様相を呈していた。

何となく俺がそこを掃除するのが癪だったので、使わない部屋だったこともあり、そのままにしておいた。
しかし、いつまで経ってもそのままで、半年くらい放置されていた。

今でも部屋に西日が入って来ると、その光景を思い出す。

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