住まいの「買い時」を考える
「いつが買い時なんでしょう?」
こんな質問をよく受ける。答えは簡単なのだが
自ら問題を難しくしている方が多い。
その質問に私なりのお答えをしたいと思う。
なぜ「今」では無いのか?
「高い買い物だからじっくり考えたい」は良いのだが、冒頭の「買い時」を聞く方は「得なタイミング」で買いたいと考えている。
当然、高い買い物なので少しでも安く手に入れたいのは理解できる。
答えを出す為に、いくつかの「情報」を紹介したいと思う。
1.価格の推移をみる
ハウスメーカーの坪単価一覧
/まるわかり注文住宅より
住宅産業新聞からのデータで2009年から2019年の坪単価が列挙されている。
注目すべきは、「坪単価の上昇」。
一番上に紹介されているメーカーは、2009年時には74.6万/坪だったのが、2019年には101.4万/坪となっており、36%もアップしている。
その他のメーカーもそれぞれ差はあれど、殆ど一様に価格上昇している。
(この上昇は単なる値上がりだけではなく、この10年間で住宅の高断熱化などの性能アップや、太陽光発電その他エネルギー関連のアイテムの採用が増えてきている事にも起因している。)
また、私自身25年間住宅に関わる仕事をしているが、一度として「値段が下がった」経験はしていない。不景気に対しての「廉価版」を発売する会社などもあったが、同じ商品がそのまま安くなった事はほぼ無かったと思われる。
住宅の価格は、常に上昇している。
まず「先送り」には「価格上昇が伴う」事を理解して頂きたい。
2.定年退職時のローン残高を考える
住宅を取得する人の多くは住宅ローンを組む。
「月々の返済がいくらか」は非常に関心が高いが、「いつローンが始まり、いつ終わるか」も大きな問題となる。
仮に5000万の住宅ローンを35年返済、年利1%として計算し、定年退職時(仮に65歳として)のローン残高を考えてみる。
35歳で家を取得した場合、65歳時のローン残高は
約800万円となる。
38歳で家を取得した場合、65歳時のローン残高は
約1290万円となる。
41歳で家を取得した場合、65歳時のローン残高は
約1750万円となる。
つまり計画を3年遅らせると、退職時のローン残高が500万弱増えるという事である。
当たり前の話だが、早くローンが始まれば早く返し終わる。何となくは理解していても、緊迫感の無い方が多い。
ただ、具体的に退職時にいくらローンが残るか?を計算すると、自分事として受け止め方が変わってくる。
せっかく貰った退職金が、そのまま無くなってしまう、もしくはローンが残る、と考えると怖いものだ。
3.ローン金利はどれくらい?
suumoによる金利状況の記事。
少し読み取りにくいかも知れないが、住宅ローンの変動金利タイプのベースとなる短期プライムレートは、バブル崩壊後から約25年殆ど変動していない。
にも関わらず、「史上最低金利!」などと目にするのは、「店頭金利」からの「値下げ幅」が、変動しているから。住宅ローンを貸りて欲しい銀行がそれぞれ競争して「金利値下げ」をした結果、先述のような金利変動が起こっている。
それに対して、固定金利タイプのベースとなる長期プライムレートは景気により、結構上がり下がりしている。この固定タイプがニュースで取り上げられて類する事が多い。
いずれにせよ、ここ数年はずっと低金利が続いており、ローンを組む人にとってはありがたい状況。
金利がどれくらいの影響があるか?、先程の5000万円のローンを35年返済で返す場合、1%金利が上がると、なんと「1000万円」程、総返済額は上がってしまう。
見積もりの高い安いは気にするが、この金利による恩恵は、意外と重視されないのも事実である。
4.補助金や優遇措置も検討する
「減税」「優遇」の有る無しを、「買い時」の一番の指標と考える人も多い。
勿論、ローン減税もZEH(ゼッチ)補助金などもかなりの援助となるので、是非活用いただきたいが、ここ迄述べてきた金額的差異と比べると小さい。
ここを「第一」と考えるのではなく、先述した状況下から考えた時期に「うまく活用できる政策」を活用するのがお勧めである。
5.家族の状況を考える
あえて最後に出させて頂くが、「なぜ住まいが欲しいのか?」が一番重要である。
「子供が小さいうちに家を買うとキズや汚れが付いちゃうから、もう少し先で」と言われる方もあるのだが、そもそも「子育て時」に手狭だと思って住まいを検討されたのではないだろうか?
「子供が巣立ってから」では、「広いLDKが欲しい」などの要望も無くなっているかも知れない。
家族で「ゆっくり家で過ごす」のもお子様が小さなうちの話で、大きくなってしまえばそれぞれの外出・時間が増えて、「おうち時間」は減ってしまうのが一般的ではある。
(昨今のコロナ禍では事情が違うが…。)
もちろん、子育て時以外にも「住まいが欲しい」理由は多々あるが、いずれにせよ、それを感じている理由があるはずだ。
「欲しい時」が「買い時」
すでに予想された結論ではあるが、家庭や個人の状況から「家が欲しい」と思う時が「買い時」であり、「少しでも早く」がお勧めと考える。
(その他の絶対要件がある方は別だが)
「もう少しお金を貯めてから」という声もあるが、貯めている間に価格が上昇してしまっては元も子もない。
1の坪単価で考えると10年で坪あたり25万、30坪の家が750万円も値上がりしたことになる。
「貯めた分」以上に「値上がり」してしまうなんて事も。
2のローン残高で考えても、ローンを組むなら少しでも早い方が良いのは明らかだ。
また、先送りは残高や完済年齢の問題だけでなく、今現在の払っている家賃負担等も馬鹿にならない。また、早くローンを組む事で「団体信用生命保険」も、より有利な条件で入れるなどメリットがある。
「団体信用生命保険」については別のnote「'持ち家'か?'賃貸'か?豊かな暮らしのために」でも触れているので参考にして頂きたい。
3の金利、4の経済政策なども、今は非常に有利な状況と言える。
「急いては事を仕損じる」と言われるよう、間違った選択はなさらないで頂きたいが、「欲しい」要件が揃ったのであれば、「出来るだけ早く」、「しっかり検討して」自らにとっての最善のお住まいを取得いただきたい。
そして「新たな家」で得られる豊かな時間を、少しでも永く味わっていただきたいと思う。
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