AwBH 第1章 日本語化プロジェクト訳者雑感

※本記事は『鱗羽の天使』本編の核心的なネタバレを含みます。未プレイの方は引き返すことを強くお勧めします。

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第1章の翻訳が完了しましたので、振り返りを兼ねて第1章の雑感を書いておきます。

本章はセバスチャンの勤務初日を描いた日常系の出来事で構成されており、ストーリー的な盛り上がりや新発見は多くありませんが、初々しい勤務初日のセバスチャンの様子は微笑ましいものがあります。本編のセバスチャンは着任してから数年が経過していることを仄めかしていますので、本章で描かれている内容は少なくとも『鱗羽の天使』本編の2~3年前ということになります。また、本編では描かれなかった竜の世界のライススタイルが細かく描写されているコマが多数あり、こちらも本編プレイ済みの方にとっては中々興味深い内容になっているのではないでしょうか。


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タッチパネル式の生活家電。イズミによる文明創造が2050年代のテクノロジーに基づいていることを考えれば、家電が現代よりも進化しているのは当然ですね。ただ、ドラゴンの爪は人間同様に電気を通さないでしょうから、スマホ等に搭載されている現代では主流の静電容量式タッチパネルでは反応しないような気がします…ひと昔前の感圧式か、あるいはもっと高度な次世代のタッチパネルが採用されているのかもしれません。

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タッチパネルはいたるところに採用されているようです。

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サラダを容器から直接食べるセバスチャン。この世界にナイフやフォークは不要?

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そしてコミックで公式初登場となったナオミ。本編でも存在については言及されていましたが、諸事情でカットされたキャラクターですね。AwBHの連載が始まる前に完成度の高いファンメイドのMODがリリースされていたこともあり、非公式と公式で容姿や設定が異なるナオミが同時に存在してしまっている状況があります。人によってはMODのほうが馴染み深く、コミックのナオミに違和感を覚えるかもしれません。

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ここに配属された経緯を含め、彼女とブライスとの間には少し込み入った事情がありそうです。ブライス自身も署長に就いて間もない様子ですから、便宜を図ってナオミを雇用したのもそれほど昔の話ではないのでしょう。ただ、それなりに親しい間柄のようにも見受けられますので、以前から知り合いだったのかもしれませんね。

本編の時点では28歳だったブライスも本章では25歳前後でしょうか?年齢についての話は第4章でも触れられることになりますが、いずれにせよ異例のスピード出世には違いありません。通報で要点を聞き忘れるなど年齢相応な部分も垣間見えますが、見事なリーダーシップと貫禄を発揮しています。


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部署内で腫物扱いされているマヴェリック。シリアルキラーであった弟のマイルスを自らの牙で殺めた事件からも日が浅いでしょうから、この扱いも致し方ありません。ブライスが積極的に絡んでいくシーンも多く、彼なりに心に傷を負った部下を気遣っているのだと推察できます。


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セバスチャンが気にしていた"新人への洗礼"ですが、原文では"hazing ritual(s)"、軍隊や警察といった規律の厳しい組織において根強く残っている、新人に対して強いしごきを加えて組織の序列とルールを体で教え込ませる儀式のことです。儀式というと聞こえは良いかもしれませんが、実態としてはいじめに近い性質を持ちます。海外の映画やドラマで観たことがある方も多いかもしれません。儀式の内容は集団によって様々で、度胸試しをする、恥ずかしいことを強要する、水や酒類を浴びせかけるなど、どれも新人にとっては嬉しくない内容であるため、セバスチャンが身構えるのも無理はありません。

コンプライアンスが厳しい2021年現在でもこのような儀式が残っているのかについては訳者もよく分かっていませんが、どうやら竜の世界には受け継がれてしまったようです。あるいは文化的に自然発生したものなのかもしれませんが。

次章ではストーリーが『S』に変わります。本章の話の続きは第4章から。

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本記事は『Angels with Broken Hearts』の日本語訳プロジェクトです。
オリジナルの公式HPはこちら
http://angelswithbrokenhearts.com/

この翻訳記事は制作者の許可の下で行われている公認プロジェクトですが、訳文はファンによる非公式翻訳です。公式は訳文に一切の責任を負いません。訳文についてお気づきの点は訳者までお寄せください。

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訳:Luptas