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今までで一番シンプルな目標を立てた話 【2023-24シーズン振り返り】

2023-24シーズンが終わりました。いつも応援してくださっている皆さん、今シーズンもたくさん応援してくださった皆さん、本当にありがとうございます!結果はフィンランド国内トップリーグで3位。1位になってもおかしくないチームだったので準決勝で負けてしまったのが悔しく惜しかったですが、勝ちでシーズンを終えることができて嬉しさと安心感で締めくくることが出来ました。そんなシーズンの振り返りに、考察や情景をメインにエッセイ調でここに書いていきたいと思います。それでは!

たどり着いた先は、「楽しんで勝つ」だった。

今シーズンは、自分の中でも革新的なシーズンの一つだった。というのも、うまくいくためのルール、みたいなものの認識が、実体験を通してガラッと変わったからだ。端的にいうと、これまでは、勝つためには苦しまなきゃいけないと思っていた。楽しい思いをすることや、欲しいものを手にすることを我慢しなくてはいけない、と割と本気で思っていた。だけど、今シーズンを通して辿り着いたのは、「楽しんで勝つ」。これは楽をして勝つ、というわけではない。楽しむと言いながらももちろん、乗り越えなければいけない瞬間はある。でも基本的には、「勝つために我慢する」という概念を諦めた。そしたら結果的に、最近の中で一番いいシーズンになった。

ハーバード時代、私は試合出場時間が常に多いわけではなかった。出場した時はいいプレーをするし失点もしないし、1年生からベンチに入って出場機会自体はあったものの、「点取り屋」の1、2セット目として出場する機会は4年生で出場した数試合の他には数少なかった。トップリーグにいられることに拘って「一番上のレベルの中で、一番下でも食らいつく」というポジションで自分の役割を全うして数年過ごしてきたここ数年間。そんな私にとって、今年入ったリーグ・チームは新しい挑戦だった。レベルは高いけれど、年間40試合、毎週行われる試合で毎回出番もあり、その中で結果を出していく・チームに貢献する、ということが求められる。久しぶりの立場での挑戦。人からみるとどうかはさておき、自分の中ではこれはまた新しくそれなりに難しい挑戦で、ちゃんと凸凹した中を歩んで「今シーズン」という名のマラソンのゴールについた感覚だ。

ピンチは何度かあった。セットが落ちる危機。試合に出れない危機。メンバーに入れない危機も、一度だけ。だけど不思議なことに、それらに遭遇するたびに、「楽しんで勝つ」という概念を立証するような経験をした。

11月中旬。前も書いたが、一度目のピンチはシーズン開幕のセットから少しずつ下に落ちていって、一度だけ下のチームで試合に出たこと。コーチは、他の選手にチャンスを与えるために一度だけ変わってくれと、試合の数日前に前もって伝えてくれた。半分は本当だと思う。でも、そこで1回でも自分が代わる選手になる、ということがショックだった。だけど心のどこかでわかっていた。「これをどう捉えてどう行動するかが分かれ目だ」と。この試合まで、珍しく、緊張する試合が続いていた。自分が氷に降りるたびに、失敗してしまわないか・何か一つでもミスをして使われなくなるんじゃないかと怯えていた。試合や練習に行く時も、楽しい嬉しいという思いより、「うまくやらなきゃ、いいプレーをしなきゃ」という、「しなければ」マインドになっていた。でも、この時にどこか吹っ切れて、「周りの人が決めること・決めたことは自分が変えられない。だけど自分の毎日なんだから、人の決断や周りの環境に左右されて感情が変わるのではなく自分にある毎日を楽しい・幸せと思える最大限の過ごし方をしよう」と思った。まあ、その時の言葉で言えば、「明日も明後日も同じ速さできては同じ速さで過ぎる。だったらどんな状況でも楽しんだもん勝ちじゃない」と。単純に、そう思った。結構吹っ切れたのだと思う。そしてそこでそう思えたのがよかった。

それを機に私は、してしまうかもしれないミスや起こってしまうかもしれない失敗に恐れることなく、今を最大限に楽しむことにフォーカスした。それまでも、頭でそれが大事なことは分かっていたけれど、身を持って感じた。その出れなかった1試合という大きな変化がきっかけで、何かが吹っ切れたように「今を感謝して楽しもう」と素直に思い、それに従って過ごした。そしたら自然と何故かプレーも良くなって、自分の良いところを見てもらえるようになり、出場機会も増えた。今まで起用がなかったパワープレーにも使われるようになり、キルプレーでもより頻繁に使われるようになった。初めて、自分が少し自由になった気がした。「楽しむ」と言い聞かせたことで、他の考えすぎな部分や心配を一度放ったことで、調子も上がって、そして本当にもっと楽しくなった。

でももちろん毎日が同じような感覚で同じようなプレーができるわけではない。スポーツをする、とはそういうものだと思う。うまくいく日もあれば、すごく緊張してしまう日もある。ポジションをまた奪われそうになることもあった。1月。ある日の練習で、自分のポジションが突然、前日までは下のセットだった選手と入れ替わっていたことがあった。普通に悔しかったし、苛立ったし、なんでって思ったし、もちろんご機嫌な思いはしなかった。でも、なんとなくその時の自分には分かっている。ここで「頑張っていてもみられていないし勝手に評価が下がっている」と腐った対応をするか、そんな思いがあっても関係なく全力を出し切るか。その時初めてノートに書いた。「楽しんで勝つ」。采配の決断は私にはコントロールできない。私がコントロールするのは、今日ホッケーができることを楽しむこと。全力で力を出し切ること。自分まで自分のことを下げなくてもいい。実際、どういう意図でそういう采配がされたかは予想しかできない。自分がダメだと決めつけて落ち込むよりも、今日も楽しもうと全力のホッケーをした方がいい。結果的に、その練習と次の練習のパフォーマンスは物凄く良くて、その週の試合の試合中に自分のセットが上がって元のポジションでプレーできた。今までの自分だったら、自分の周りにあるコントロールできないことにとらわれて、こんな対応ができなかったと思う。

2月の半ば、レギュラーシーズン最後の試合。年が明けてからはしばらくアウェイの試合が続いていたので、久しぶりのホームでの試合。クオピオに住む日本人の方も応援に来てくれる。なぜか少し緊張していた。「うまくプレーできなかったらどうしよう。自分のプレーが発揮できなかったらどうしよう」緊張すると、体が少しずつ強張ってくるのがわかる。陸上でウォーミングアップをしながら考える。緊張する、けどそこにもちゃんと突破口があるはずだ。そしてまだ試合まで時間がある。ちょっとずつ落ち着いて頭の中で呟く。というか、小さい声で普通に呟く。私が勝手にブツブツ言っても、日本語がわかるチームメイトはいないからそういう点でものすごく便利だ。「自分が今持つこの緊張する気持ちと、実際何分後かに氷の上でプレーしてる自分の身体は別だ。本当にゾーンに入っている状態の自分は、自分の頭の中で起こっている思考とは別物だ。よく読んでいた本にもあったような、『もう一人の自分』もしくは、『無意識』の状態。だとしたら、意識している自分ができることは、氷上に乗った時の動く自分が最大限に動けるように体を準備しておくこと。そして、氷に乗った自分のことを信用して過度に心配しすぎないこと。自分の体への信頼を寄せて、準備をするだけして、あとは任せる。その信頼は普段の練習やこれまでの試合の経験からくる。その自分を手放しで信じ切れることを『自信』というのではないか。」ここまできて、やっと、心配を手放した。やるだけあって、あとは、プレーする自分に任せるだけ。その試合の途中で、私はまた上のセットの選手と交代して多くのプレータイムを得ることができた。

ここ最近の年は、コンスタントに試合に出るという経験が少なかったから、シーズン初めの段階では自信や経験、というものに欠けていた気がする。だけど、経験を積むたびに、自分の今までの学びや積み重なってきた哲学的なものが「自分ごと」としてアップデートされていくたびに、少しずつ自信となって、リアルとなって、シーズン最後へ向けてプレータイムや評価が上がっていくいいシーズンとして締めくくることができた。

一言で表すと、やっぱりあの日手帳に書いた「楽しんで勝つ」だと思う。これまでは、自分が一番欲しいものが手に入るまでは楽しんではいけないと思っていた。練習以外でも例えば、チームメイトと同じように遊ぶのが後ろめたいのも、チームメイトと同じようにオフの日にアイスを食べるのに気が引けてしまうのも、「自分が成功するまでお預け」だと思っていた。だけど楽しむときに楽しめなきゃ、日々の瞬間が充実していなければ、本領を発揮したい時にもできない。普段の気持ちや自分の在り方はいざという時の自分をも影響する。

根底にあるのは、「自分の人生の舵を取るのは自分だ」という思いがより強くなってきたからかもしれない。と、客観的に思う。ちょっと残酷にいうと、夢から目が覚めた、のかもしれない。いくら努力しても頑張っても、必ずしも毎回、自分が欲しいものが手に入るわけではないし、保証されているわけでもない。わたしたちは社会で生きていて、自分が全てを決められるわけではない。でも、それを受け入れた上で、自分は常に自分が選んできた道と共に幸せでいたい、いると決めた。もし、欲しいときに欲しいものが手に入らなかったとしても、それに自分の幸せを依存させて「つまらない、辛い」と言いながら日々を過ごすのは勿体無いと思った。夢だって目標だって変わらず持っている。それに向かう姿勢もモチベーションも変わっていない。ただ、マインドセットがちょっと進化した。自分の道にもう少しだけ責任を持って、もう少し自分の手で舵を取ろうと思った。

今まで積み上げてきた学びや経験がまた少し役に立って、今までよりも強くなれたような、まだここから行ける、と思えるような1年になった気がする。来シーズンのチームや場所はまだ決まっていないけど、次の舞台でもまた自分の夢に向かって全力投球する、そんな準備のオフシーズンにしたいと思う。

最後になりますが、今シーズンを通して、日本、フィンランド、そして世界中の方からたくさんの応援をいただきました。このように応援してくださり温かい言葉をくださり見守ってくださる方たちがいるからこそ、どんな日も前を向いてプレーすることができました!本当にありがとうござました!来シーズンも頑張りますので引き続き見守っていただけましたら嬉しいです♡

フィンランドでの生活や、氷上の外での活動、考えていたことなど、また別の記事で報告しようと思っています。

最後まで読んでくださりありがとうございました!皆様にとって今日も明日も明後日も、素敵な1日でありますように♡

月咲



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