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YOASOBI「THE BOOK」- 曲順通りに聴く価値をストリーミング時代の寵児が提示する -


まえがき

発売から3年も経って突然アルバムレビューをし始めた経緯が気になる方は、前回記事を読んでいただけると幸いです。
(正式にはEPらしいけど気分としてはアルバムと呼びたい)

さて、改めて紹介します。
YOASOBIの1st EPにして初CD作品「THE BOOK」。

なぜこれを3年も放置していたのか、自分を小一時間問い詰めたいです。
これはとてつもない。
間違いなく、日本の音楽史の新たな金字塔の一つでしょう。

3年も経って今さら聴いてみようと思ったのは、数日前にGWお出掛けで知り合いの車で河口湖まで行った時に、知り合いの車に入ってたから。

そういえばアルバム聴いたこと無いんすよね~聴いてみてもいい?って軽いノリで再生してもらったら、

「ほうほう、書き下ろしインストから始まるの良いね。やっぱりアルバムの1曲目は専用曲に限る」
「2曲目も無難にシングルじゃなく新曲か~。いいねいいねこういう流れ好き」
「お?5曲目初めて聴いたけど、こういう身近な生活感ある曲もあるんだ!ikuraちゃんのこういう曲聴いてみたいと思ってたから助かる~!」

という感じで、予想外に良かったので帰宅したらじっくり聴いてみようと思ったのです。

いやぁ、我ながらチョロい。
音楽に対する防御力が低すぎる。

Epilogueから始まってPrologueで終ってる・・・?

で、帰宅して聴いてみました。

いや、曲順良すぎ!
溜めて溜めて最後に夜に駆ける!いやぁ強い!

という感じで、8曲目の夜に駆けるが終わり、最後の9曲目はインスト曲で綺麗に終わる・・・。

と完全に油断していたら、不意を突かれたのです。

まるでこれから何かが始まるような余韻を残して、唐突に終わる9曲目。
一瞬脳がフリーズしました。
「えっ・・・?終わ・・・った?」

これはこれで綺麗な終わり方ではありました。
アルバムの〆というより、ライブのEDスタッフロール曲みたいな、最後に観客の拍手と歓声が入ることで完成するタイプの曲のような。

でも、なにかとても引っかかる。
まるで続きが待っているかのような、この余韻は一体・・・?
曲名はあまり見ずに聴くのに集中していたので、慌ててiPhoneで曲名を確認しました。

Prologue・・・?
9曲目の最後のインスト曲はPrologueだった・・・?
え、1曲目のインスト曲の方がEpilogueだった・・・?
始まりがエピローグで終わりがプロローグ・・・?

逆順で再生だ!!!

混乱したまま思いました。
これ、逆順で再生してみよう。

これ(元の曲順)が


こう(逆順)じゃ

メチャクチャしっくりくる・・・!

まさにプロローグという感じのPrologueから始まって、1stシングル&大ヒット曲の夜に駆けるが続いて、ハルカ・群青で盛り上がった後はたぶんで場面転換して、あの夢をなぞってから後半パート開始、ハルジオンでライブで言う所の通常パートが終わって、本当にアンコールみたいなアンコールでしっとり〆て、Epilogueで綺麗に終わり。

これが本来の曲順って言われても全く違和感が無い・・・!
むしろ普通ならこの曲順だ!

でも、元の曲順もアルバムとしてキッチリ成立している。
むしろ元の曲順の方が攻めた構成になってる。

盛り上がりのピークを溜めて溜めて、8曲目の夜に駆けるで爆発させて、Epilogueで突き放すように終わる。
夜に駆けるの余韻のまま終わるなら、綺麗にしっとり終わるより、駆けあがったボルテージと後味の悪さのまま終わりたい。
それならPrologueで終わる方が自然。

そして、Prologueで終ったら、そのまま逆順で再生して夜に駆けるからEpilogueまでもう1回聴きたくなる。

まるで最初からこの1セットで想定されているような。
1つのアルバムに2つの違うアルバムが内包されていて、それぞれが表裏一体で繋がり合っているような。

いや・・・天才か・・・?
一番凄いのは、Prologueを聴くまでこの違和感に気付かなかったこと。
どっちの順番でも1つのアルバムとして素晴らしい完成度で成立しているのに、順番を逆にするだけで同じ曲なのに全く違う物語が紡がれる。
まるで、レコードをひっくり返してA面からB面にするような。

夜に駆けるのMVと同じ構成

エンディングの映像が、実は冒頭の映像と繋がってるタイプの映画ってありますよね。
有名な例だと「さらば青春の光」とか。(お笑い芸人じゃないよ)

なんか、THE BOOKを1セット聴いたらそういう映画を観た後みたいな読後感になりました。

・・・ん?
この感覚、どこかで・・・?

夜に駆けるのMVじゃん!!!

冒頭の屋上の2人は、最後に飛び降りる2人だった。
このMVも始まりは終わりであり、終わりは始まりでもある。

しかも、THE BOOKの曲順のちょうど中央に夜に駆けるは配置されていて、夜に駆ける → Prologueで終ったら、Prologue → 夜に駆けるからまた始まる。

やられた。
アルバムのループの中心「夜に駆ける」の中に、もう一つループがある。
ループのマトリョシカ。

しかもこれがただのこれ見よがしのギミックじゃなく、音楽的な意味を持ってアルバムの完成度を上げている。

なんだよこれ!!!天才か!!!

サブスク全盛にあえてアルバムを聴く意味

サブスク全盛の昨今、ストリーミング再生で曲を単品で聴くスタイルが主流になりつつあります。
曲順通りにアルバムやカップリング曲を楽しむ文化は薄れつつあり、配信シングルを(悪く言うと)つまみ食いしながら、色んな時代の色んなヒット曲だけを楽しむこともできてしまう。

そんなストリーミング時代に、不自由なCDやアルバムを聴く理由はなんだろう。

その不自由さに意味がある。
クリエイターが曲順に込めた想いや意思を受け止め、解釈して、作品の世界に入り込む。
その時間と体験に価値がある。

筆者はそう思います。

このアルバムは、その価値を剛速球で提示してくれています。
ストリーミング時代のトップランナー、YOASOBIが。
初のCDとして世に送り出した1st EPで、サブスクで失われつつある不自由さの意味を、改めて見せつけてくれた。

痺れました。
次世代のスタンダートは、常に反骨心から生まれるのかもしれません。

あとがき

こんなに熱苦しくアルバムレビューをしたのは初めてかもしれません。
前記事から読んでいただいた人には笑われるかもしれませんが、今23時36分です。

YOASOBIでYOASOBIしすぎた!
まだ昼ご飯すら食べてない!

というわけで、筆者すっかり沼りました。
今年のドームツアー申し込みます!
絶対当てる!

多分これからも記事増やします。マガジンがまた増えちゃった。

では、そろそろお昼ご飯を食べたいと思います・・・。
OYASUMI(˘ω˘)

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