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「永久欠番のあなたへ」詩―#青プラ文学部

早苗月(さなえづき)の河岸を
あなたの手を取って
白雲と共に 歩いた

あなたの 歩みは 
壊れた時計の 針のよう
立ち止まり 座り
遠くの 山をみつめる

ベンチに 腰かけて
ポツポツと 細くやせた指で
心の糸で 編んだ袋から 
昔の話を 取り出し
乾いた声で 話し出す

お前は 8歳の時 ここで
おぼれそうになったんよ
お父さんが ものすごい顔して
下駄 履いたまま
川に 飛び込んだ

お前は 本当に
手のかかる 子だったんよ

大きくなったら
どんな 大人になるかと
ずっと 心配しとったわ

大人になっても
人に 迷惑かけたら いけんよ
悲しいことを
他の人に 押し付けたら駄目

母の 「いけん(駄目)よ」ばなしは
滝の細い雫のように 終わることがない

今 「いけんよ」ばなしを 
話してくれる 人は もういない
風に 耳をすますと
かすかに 懐かしい息遣いが
感じられる

母の お気に入りのベンチは
「永久欠番」として 
私の 心の故郷に ポツンと
おかれたままだ

山根あきらさんの企画
「永久欠番のあなたへ」#
青プラ文学に参加させていただきました。
山根さん またお手数をおかけします

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#永久欠番 #山根あきら

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