47. 仮面夫婦

もちろん、当時の私は、夫が私を疑ってるとは夢にも思っていなかった。

自分のことしか見えてないし、自分のことしか考えていなかった。



『おはよう』

翌朝、やっぱりいつもと変わらない夫だった。

子供達も義両親の家から帰ってきて、みんなで食事。

傍目には、ごく普通の家族。

私も夫も笑顔だ。

心なしか、二人とも、いつもより機嫌がいい。

いつもより仲良くできる。

なにしろ、昨夜、久しぶりに一緒に寝たからね。

いろんな意味で、お互い、覚悟したからね。



自分の笑顔が、夫の笑顔が……怖い。

腹の中は、お互い、完全に違う方向を見てるのだから。

本当の仮面夫婦の始まりだ。



『やっぱり離婚したい。』

とは、もう夫には言わない。

夫が言ってた通り、密かに着々と準備をすすめることにした。

まずは、仕事探し。

そして、子供達の学校、幼稚園など、どうするか。転校させるか、学区内で引っ越しするか。

どんな所を借りればいいか。
広さは?家賃は?車はどうする?

名前はどうしよう。苗字変える?変えない?

大切なお金。実際の補助金や福祉は?

調べること、考えることはたくさんあった。


そして、こんな時に頼りになるのがブログだった。

再びブログを更新しだした。

たくさん質問し、たくさんアドバイスをもらった。

親身になって話を聞いてくれ、一緒に悩んでくれた。

昼間、教室にはちゃんと通った。
以前にもまして力を入れた。

夫に疑われないように、家事も一生懸命した。ご飯もたくさん作り、曇りのない笑みで夫を迎えた。

一緒に晩酌をして、みんなでテレビを見た。


夫が子供達をお風呂に入れ、

私がバスタオルを持って待つ。

そして、歯磨きをさせて、夫におやすみなさいを言わせて、2階へあがる。

上2人は子供部屋、末っ子と私は和室。

寝かしつけながら寝てしまう……ふり。

ここまでは、今までと一緒。



夫の扉が閉まり、数分してから…1階へ降り、

もう、外へは出かけない。

代わりに、暗いリビングでパソコンを開いた。

毎晩、みんなが寝静まってからが、私のブログの時間になった。

夜な夜な、カタカタ、キーボードを打っていてた。


そして、夫が、私と同じように最新の注意を払って階段を降りてきて、息を殺して、私の様子を見ていたなんて、、、

全く知らなかった。
気づく余地すら、私にはなかった。


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