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どこかに埋もれて見つけられなくなってしまうと悲しいから自分の本棚に飾っておきたい。そんな記事を集めた、自分満足用のマガジンです。
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記事一覧

ピリカ目線~その日、爽やかな風が吹いた

私の音声配信、「すまいるスパイス」に、新メンバーが加わってくれた。 椎名ピザさんと納豆ご飯さんご夫婦である。 お二人がゲスト出ててくれたのは、半年くらい前か。実はその時から「ああ、私はきっとこの方たちにオファーするだろうな」という予感はしていた。 だが、育児中の若いママがメンタルも体力もしんどいことは、普段の仕事で痛いほど感じている。さらにラジオとなると、余計な負担ではないか。 納豆さんはやる、と言ってくれても夫のピザさんはラジオとはいえ、妻が表に出ることに反対かもしれな

【雑談】『すまいるスパイス』で推していただきました。

ありがたいことに、この度『すまいるスパイス』の新企画、『推しについて話そ?』で取り上げていただきました。 コッシーさんと豆島 圭さんという、むしろ推される側のお二人から『推し』として語っていただけるというこの企画。 もう、ドッキリを疑い監視カメラを探すレベルで、惜しげもなく褒めちぎっていただいています。 本当にありがとうございます。 「果たして白鉛筆以外に需要はあるのか」と心配になる内容ですが、コッシー×豆島 圭の2ショットトークが聴けるだけも十分価値はございますので、白

【掌編】ヒーロー

仕掛けられた時限爆弾。目の前には赤い線と青い線。どちらかを切れば今すぐ爆発、どちらかを切れば君は助かる、そんな劇的なシチュエーションにあるとして。 その爆弾に対し、君が取り得る選択肢は、およそ四つ。 ①赤い線を切る ②青い線を切る ③赤い線と青い線を切る ④赤い線も青い線も切らない 一番危ういのは、もちろん③。どちらかを切れば即爆発なら、どちらも切れば即爆発だ。君の身体は木っ端に砕け、確実に助かることはない。 ①と②のリスクは同一。爆発の確率は50:50。手掛かりも保証

街中華のマトリックス

 街中華と瓶ビール。そして強火を使った食事はどこからか抜け出す力を生み出すのかもしれない。    二月の金曜の夜。西高東低の強い気圧配置が列島を覆う。そこに南岸低気圧が八丈島沖を進み、夜半に雪が降る。それまでは三国山脈を乗り越えた冷たく渇いた風が吹く。  大きな発送ミスがあり、会社の冷え切った倉庫で肉体労働を後輩の佐藤と朝から始めた。体を動かした時にかいた汗が冷気に包まれ体を冷やす。それが何度となく繰り返された。昼飯を取る暇もなかった。  夜八時に終わり、近くの街中華に駆

短編小説/夜行バスに乗って

 帳面町には古いしきたりがあって、四人の童貞が神事を務めなくてはならない。巫男と呼ばれている。巫男に選ばれた男は死ぬまで童貞を守らなければならない。巫男の一人だった武田冨福さんが八三歳で逝去されたのは、暖冬のまま終わると思われた冬が急に底冷えしはじめた二月の終わりのことだった。  四人ということに意味があって、三人では駄目なのだろう。諜報員の眼をした自治会の人が見廻りをしている。心の奥を見透かすような笑みを浮かべて、「今日は雨ですね」と声をかけてくる。彼は黒い雨合羽を着ていて

短編小説 | 眠らない

 雨。  三人がけのソファをベッド代わりにしている。薄い毛布にくるまって目を閉じる。  足を伸ばしてもソファの端から端にすっぽりと収まる僕のからだは、同じ年頃の同性と比べて大きいのか小さいのか、よくわからない。  人に会わなくなって、人と自分を比べることもなくなったら、自分のことがよくわからなくなった。  目を瞑り、ソファに収まって、耳だけは知らない誰かが発することばを聞いている。  誰かは恋愛について語り、誰かは今の世の中について語っている。全部嘘かもしれない。  世の

短編小説/イハリ、イハリ、イハリ

 その国には、王様もおらず、指導者もいなかった。所有という概念もなく、通貨もなく、国境も存在しなかった。人々はコカの葉に漬けた林檎を主食とし、眠りたいときに眠り、目覚めたいときに目覚め、喋りたいときに喋った。人々は幸せだった。しかし、わずか三日で崩壊したため、だれも知らない。  イハリ、イハリ、イハリ。  プラスチック製の白いガーデンチェアだ。  肘掛けがあって、放射状にデザインされた背もたれには、大胆な肉抜きが施されている。もっと詳しく知りたければ、ホームセンターのネットサ

掌編小説/ドールハウスの夜

「ねえ、知ってる?」と妻は言う。 「知らない」とぼくは応える。  洗濯物をたたみながら、妻は微笑む。 「昔の人ってね、キャベツ畑から赤ちゃんが産まれてくると思っていたんですって」  そう言って、自分の下腹部を愛おしそうに撫でている。  寝つけない夜だった。  寝室のカーテンが少しだけ開いていて、その隙間から射しこむ光がぼくの顔を照らすからだった。目を閉じていても、街灯の白い光は瞼を透かして、ぼくの眼球に突き刺さった。カーテンを閉めればいいのだが、体はすでに眠りはじめていて

逢魔時

火曜日。日暮れに銭湯の前を通りかかったら、顔面にバスタオルを巻き付けた全裸のオバアが洗面器片手に出てきたのでぎょっとする。 「はだかですよ」と教えると「だから顔を隠しとる」とくぐもった返事をして、平然と歩いて行くのでしばらく見物していると、自転車に乗った豆腐屋を呼び止めて何かを言いつけている。 豆腐屋に首を傾げられたオバアがバスタオルの口元を上下に開いて「きぬ!」叱り飛ばすように叫ぶ。黄色い洗面器に水が張られ、真っ白な豆腐がつるりとすべりこまされる。

毎日超短話13「アパート」

私の記憶では、その角を曲がると小さなアパートがあるはずだった。 だけどその角を曲がってあったのは、花畑だった。 私の頭の中ではまだアパートが浮かんでいて、そこで過ごした日々が巡っている。 はじめての一人暮らし、彼との出会い、別れ、たくさんの夢を見て、たくさんの夢から醒めた場所。 「きれいだね」 幼い息子が私に言って、繋いだ手をぎゅっとする。 「うん、きれいだね。行こうか」 私たちは、歩き出した。

カワウソの行方を子どもが教えてくれた話

「かーちゃんて、どんな話かいてんの?」 と、電気を消した寝室で小5の次男から聞かれた土曜日の夜。 思いがけない突然の質問に、 出来心でやった万引きが見つかったような(未経験)気持ちで、 「どんな……?しいて言えば、へんな……?」 と、うろたえながら答える母。 「へんな話って、どんなー?」 次男と長女から楽しげに質問を重ねられて、 両脇を抱えられてスーパーの事務室にずるずる連行されていくような(未経験)気持ちで、 「レントゲン写真をバキバキにして、こわす話……?」 と、

着ぐるみのイラスト倉庫。

イラストが250枚くらい貼ってあるので Wi-Fi環境下でないと重たいかも知れません😅 今まで描いたイラストを他のサイトでも公開していますが、note用に描いてnoteでしか公開していないイラストがたくさん増えてきました。 この記事にまとめて貼り付けて、 これから描くイラストも不定期でこちらに追加していこうと思います。 記事のタイトル用にササッと描いた物からしっかり描いた物までごちゃ混ぜです。 プロフィール欄にリンクを貼っておきますので 暇な時に思い出したら少しずつご覧

はじめてアニメを作りました。後生だから見て下さい。

去年作り始めたアニメーションがやっと完成しました。 イラストを描いていたら 「これを動かしてみたいぜー!!」 と思って試行錯誤しながらコツコツ作ったやつです。 初めて作ったアニメーション。 胸を張って見せられる立派な物ではないですけど、我ながら頑張ったのでお披露目します! 音も付けましたのでぜひ音声ありでご覧下さい。 そして目を皿のようにして何とか褒められるポイントを探して僕を褒めて下さい(-᷄◞८̻◟-᷅) なんちって。 使用デバイス:iPad Air4 アニメ作画アプ

短編小説/ショッピングモール

 目を覚ましたとき、雨はまだ降っていなかった。  身支度を整えてマンションを出たとき、腕に水滴があたったような気がして、ショッピングモールに到着したときには、どしゃ降りの雨になっていた。  屋外の平面駐車場に車を停めて、しばらくフロントガラス越しの雨を眺めていた。ショッピングモールの壁に取り付けられた衣料品ブランドの看板が輪郭を失って滲んでいる。黄色い雨合羽を着た子どもが車の前を駆けていく。ワイパーが雨模様の景色を右へ左へ掻き乱す。  ショッピングモールに到着したときには、す