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新世界 「透明標本」展 by冨田伊織

金沢21世紀美術館市民ギャラリーAで開催されている展覧会
骨格標本は、私も大学の生物学科卒なので、実験実習の鶏胚での骨格標本や、卒業後に務めた安全性試験研究所での、マウスの胎児の骨格標本など、見たり携わったりしたことがある。
「骨の図鑑」も持っているが、とにかく、生物の骨格ってその動物が死んでから細部が分かるというけれど、本当に多種多様の生物の体を支えている骨格って本当に美しい。
「神という創造主の存在」を信じたくなるよね。

学術的な骨格標本からさらに、その美しさを「鑑賞」という視点から美しさを凝縮させて伝えるところまで高めたという冨田伊織さん。
その経歴も北里大学水産学部水産生物科学科卒業ということで、専門的に生物と向き合い、骨格と向き合ってきたということで、展示のまとめ方も系統や発生学の知識に裏付けられているので、生物学科卒の私もとても楽しみにしていた展覧会。

 特に水生生物は、無脊椎動物も多種多様に存在しているし、軟骨と硬骨、そして甲羅や貝殻という骨とは違う成分からできているものも多く、その染め分けもとても美しかった。
アート的で、しかもちゃんとアカデミック要素も抑えているという見応え十分の展覧会。

地球上の生物は、大きく捉えれば「一種類」なのだ。
でも、その生息場所に順応して進化して生き抜いてきた46億年という年月が変えてきた、多種多様な姿の生き物たち・・・
海の中から陸上へ、陸上から再び海中へ・・・そうやって生きてきた動物たちの身体を支えてきて、さらに運動能力を支えてきた骨格・・・
柔らかい組織を支えて、重力と水圧から守ってきた骨格
なんか、この作家の冨田伊織さんの愛しむ眼差しを感じながら、改めて「生きとし生ける者たちへの畏敬の念」を強く感じた。

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