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近代日本に見られる俗語5選

みなさんは、近代の日本についてどのようなイメージをお持ちですか?

歴史が好きな方はたくさんいらっしゃいますけど、近代に苦手意識を持たれる方が多いんじゃないでしょうか。

今までの記事でも、近代文学に特化したものをいくつか上げておりますが、私は近代の日本文化には目がありません。

書籍の紹介も面白いんですが、今回は、少しばかり観点を変えまして、明治から昭和初期までに流行した俗語を5選紹介したいと思います😊

①ナオミズム
谷崎潤一郎「痴人の愛」の主人公ナオミをもじった語。少女の美しさに翻弄される中年男性の物語。男性の持つ獣性を手玉にとる姿が圧巻です。

女性に尽くす喜びにひたる男性を指してこの語を用いたみたいですね。

以下は、個人的に好きな文章です。女性美に対する憧憬がすぐれた筆力で描かれています。さすが谷崎ですね。

私の胸にはただ今夜のナオミの姿が、或る美しい音楽を聴いた後のように、恍惚こうこつとした快感となって尾をいているだけでした。その音楽は非常に高い、非常にきよらかな、この世の外の聖なる境から響いてくるようなソプラノの唄です。

谷崎潤一郎「痴人の愛」

②赤い手柄
手柄というのは、日本髪の一種である丸髷につけるアクセサリーで、転じて新妻のことを指します。この言葉を文献で見た時は、丸髷を結った若い奥さんを想起してください。

③学費稼芸者
今でもアルバイトでキャバクラに入る女の子がいますが、その近代版です。芸者というと幼い頃から修行するイメージなんですが、人手不足なのかはわかりませんが、にわか仕立ての芸者がいたみたいです。

④デカンショ節
もとは兵庫県の民謡なんですが、哲学者のデカルト・カント・ショーペンハウアーのことだろうと学生たちが作った言葉。替え歌もあるらしいです。

淪落りんらくの女
松崎天民の著書から転じた語。身分のある女性が様々な理由から下層生活に転落した様をいう。

宗教も、教育も、法律も、「性欲浪費者の群れ」に対して何等の権威もないものであると断定した時、彼はこれが「現代的だな」と思った

松崎天民「淪落の女」

松崎天民は、新聞記者として性産業の実態を暴いた人です。巻の末尾に救世軍の山室軍平が寄稿していますが、松崎自身は廓清運動かくせいうんどう(廃娼運動)に助力した人です。

この言葉を差別的に用いることは本来の意義からは脱しています。「性欲浪費者」諸氏による誤用には怒りすら覚える次第です。

ちなみに、今回は平山亜佐子編著「戦前先端語辞典」を参考にしております。ご興味のある方はぜひお読みください。

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