とまりぎセキュアベース・天の川進

大阪府在住。日々悪戦苦闘しているケアマネジャーやケア実践者を応援する小説を主体に、時折…

とまりぎセキュアベース・天の川進

大阪府在住。日々悪戦苦闘しているケアマネジャーやケア実践者を応援する小説を主体に、時折、認知症やケアに関するコラムもはさみながら、読まれる方の「心の安全基地」となるようなブログにしていきたいと思っています。

最近の記事

コラム3 「その人のいないところでその人の話をしない」

「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 コラム(3)「その人のいないところでその人の話をしない」  これは私の言葉ではなく、森川すいめいさんの「感じるオープンダイアローグ」(講談社現代新書)と、「オープンダイアローグ私たちはこうしている」(医学書院)から引用したものです。  この言葉は私の心に大きく響きました。  私たちはどれだけ「その人のいないところで、その人の話をしているか」ということですね。  主なものとして、うわさ話や陰口など。ある意味大好きな分野と

    • 12.知らない者の視点

      「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】    立山麻里 白駒池居宅の管理者   正木正雄 居酒屋とまりぎのマスター    想井   居酒屋とまりぎの客 12.知らない者の視点 専門職が当たり前と思っていることも、違う世界の人が見るとおかしいと思うかもしれません  心が晴れない立山麻里は、家までの帰り道に必ず前を通る居酒屋「とまりぎ」の前で、まるで引き寄せられるかのようにその暖簾をくぐっていた。  「いら

      • 11.苦情

        「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】    立山麻里 白駒池居宅の管理者    滝谷七海 白駒地区地域包括支援センターの相談員    薬師太郎 要介護1 デイサービス行きを拒否    薬師通子 太郎の妻     薬師淳子 二人の長女 旅行会社勤務 介護者の時間の感覚と、ケア側の時間の感覚とは違うのです。 11.苦情  立山麻里はフェイスシートの続きを読んだ。  薬師太郎の家族のことが書かれていた。  妻の通子

        • 10.人生の概要  

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】    立山麻里 白駒池居宅の管理者    滝谷七海 白駒地区地域包括支援センターの相談員    薬師太郎 要介護1 デイサービス行きを拒否    薬師通子 太郎の妻    一人の人の人生に関わる仕事   その人生の最終章に関わる重く深い仕事だということを誇りに思ってい    るだろうか・・・ 10.人生の概要  立山麻里は、薬師太郎のフェイスシートをじっくりと読み返してい

        コラム3 「その人のいないところでその人の話をしない」

          9.夜が明けても暗い日々

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   薬師太郎 元旅行会社の社長 アルツハイマー病と診断される   薬師通子 太郎の妻 太郎の認知症状に疲労困憊している   薬師淳子 二人の娘 旅行会社に勤務 9.夜が明けても暗い日々  立山麻里と滝谷七海が「とまりぎ」で飲んでいた頃、途方に暮れた薬師通子は、娘の淳子に連絡をとった。  淳子は急ぎ退社し、母通子と共に警察に捜索願を提出した。  警察への届け出は二度目だった。

          8.初回面接を振り返る

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里 白駒池居宅の管理者 主任介護支援専門員   滝谷七海 白駒地区地域包括支援センター管理者 社会福祉士   徳沢明香 白駒池居宅の新人ケアマネジャー 8.初回面接を振り返る  薬師通子が血相を変えて薬師太郎を探している頃、日中なかなか予定の合わなかった立山麻里と滝谷七海は、業務終了後、ようやく包括支援センターの事務室で話しあう時間を持った。既に他の職員は退

          コラム(2) 認知症の人のアタッチメントについて

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 コラム(2) 認知症の人のアタッチメントについて  この小説の基盤は、「セキュアベース 心の安全基地」なのですが、今回の薬師太郎さんにとっては、妻の通子さんがそのセキュアベースなのです。  太郎さんに限らず、認知症の人は認知機能の低下により、不安感が増幅します。それが心の混乱となり、様々な行動へと繋がっていきます。  その不安感を、太郎さんは通子さんにくっつくことで安心感を得て、ネガティブな感情を落ち着かせようとする、つ

          コラム(2) 認知症の人のアタッチメントについて

          7.登山靴のひもを締める

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里 白駒池居宅の管理者   徳沢明香 白駒池居宅のケアマネジャー 薬師太郎の担当   薬師太郎 元旅行会社の社長 デイサービスを拒否   薬師通子 太郎の妻 太郎の認知症による行動に疲労している    7.登山靴のひもを締める  数日後、薬師通子から白駒池居宅に電話が入った。  担当の徳沢明香が不在だったため、立山麻里が話を聴いた。  主訴は前回と同じだが、夫がずっ

          6.今後に繋がる出会い

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里 白駒池居宅の管理者   滝谷七海 白駒地区地域包括支援センター 社会福祉士   甲斐修代 白駒池特別養護老人ホーム ケアマネジャー   想井と石田 居酒屋とまりぎの客 6.今後に繋がる出会い  先客の男性客のうちの一人は、確かに石の地蔵のようにがっしりとした体格だった。  もう一人は一見学校の先生という風貌のメガネをかけた中年男だった。  「いらっしゃい

          5.居酒屋とまりぎ

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里 34歳 白駒池居宅 管理者   滝谷七海 34歳 白駒地区地域包括支援センター管理者 社会福祉士   甲斐修代 36歳 白駒池特別養護老人ホーム ケアマネジャー   正木正雄 50歳代 「居酒屋とまりぎ」の店主 5.居酒屋とまりぎ  「白駒池居宅介護支援事業所」、通称「白駒池居宅」は、渋谷の中心街から少し離れた奥渋白駒池地区にあった。  昔からある閑静な住宅街

          コラム(1) 認知症の人のライフヒストリーから尊厳を学ぶ

           ケア従事者が認知症の人と向かい合う時、どうしても今の姿に引っ張られてしまいます。そのため、時には「困った利用者」のようなレッテルを貼って、上から視点で認知症の人を見下ろすことが多々あるのではないでしょうか。  今のその方の行動に引っ張られ、「認知症の人は厄介な利用者」と自分の中で形づくってはいないでしょうか。  でもその方にもあの方にも、子どもの時代があり、青春時代があり、そしてあくせく働いてきた時代があるのです。一生懸命人生を生きてこられた人たちなのです。「幾星霜の人」と

          コラム(1) 認知症の人のライフヒストリーから尊厳を学ぶ

          4.霧の中の過去

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】 薬師太郎 75歳 アルツハイマー型認知症と診断 要介護1 薬師通子 73歳 太郎の妻  4.霧の中の過去  薬師太郎は書棚からアルバムを一杯引っ張り出してリビングに広げていた。  登山が趣味だったため、山へ行くたびに撮っていた写真が、数十冊のアルバムの中に収められていたのだ。  「えーっと、どこの山だっけ… わからんなぁ… 」  太郎はイラつきながらアルバムをぱらぱらとめく

          3.白駒池居宅介護支援事業所

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】 白駒池居宅介護支援事業所 立山麻里 34歳 管理者 主任介護支援専門員  徳沢明香 28歳 介護支援専門員 介護福祉士  横尾秀子 49歳 介護支援専門員 介護福祉士  明神健太 31歳 介護支援専門員 介護福祉士  3.白駒池居宅介護支援事業所  「白駒池居宅介護支援事業所」には4名のケアマネジャーが働いていた。  管理者である主任介護支援専門員の立山麻里を中心として、介

          3.白駒池居宅介護支援事業所

          2.ケアマネジャーの誤算

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】 薬師太郎 75歳 アルツハイマー型認知症と診断 要介護1 薬師通子 73歳 太郎の妻  徳沢明香  白駒池居宅介護支援事業所ケアマネジャー 2.ケアマネジャーの誤算  薬師太郎がデイサービスの送迎車に乗ることを渋ったため、仕方なく妻の通子も同乗することで太郎もデイサービスセンターに向かうことになった。  送迎車の中では太郎の表情は強張ったままだった。その表情を見て、同乗の

          1.混乱の朝

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」   ☆「幾星霜」とは、苦労を経た上での、長い年月。いくとしつき。 『 東京編 』 【今回の登場人物 薬師家の人々】 薬師太郎 75歳 アルツハイマー型認知症と診断 要介護1 薬師通子 73歳 太郎の妻 太郎の行動に翻弄されている 薬師順子 38歳 同居 旅行会社に勤務  2019年夏 信州松本市の古風な喫茶店の壁に飾られている山の写真を、しげしげと眺めていた薬師太郎は、 「山はいい

          「幾星霜の人々と共に ・ 白駒池居宅介護支援事業所物語」 イントロダクション

           東京奥渋地区(架空)にある「白駒池居宅介護支援事業所」を舞台とした、4名のケアマネジャーを中心とした物語です。  管理者の立山麻里の配下に、ベテランケアマネジャーの横尾秀子、デイサービス出身の男性ケアマネジャー明神健太、新人ケアマネジャーの徳沢明香が在籍し、特に管理者としてまだ自信のない立山麻里を中心に様々なケースとの関わりの中で成長していく姿を描いています。  この物語では正論を語るというより、迷い悩みながら進んでいきますので、途中で「それはおかしい」とか、「こうすれば

          「幾星霜の人々と共に ・ 白駒池居宅介護支援事業所物語」 イントロダクション