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東京タワー

映画「東京タワー」の初めの方のシーンに、
オカンとボクが病室から東京タワーを眺めるシーンがある。
26年前、二十代前半だった私も病室から、
東京タワーを見ていた。
股関節の手術をして一ヶ月寝たきりのベッドの上で、私は鏡に反射させた東京タワーを見ていた。
何故、鏡に反射させて見たかというと、体を起こしてはいけなかったので、枕の上に頭を乗せ、体を起こさぬまま、反射させて見ていたからだ。
あの頃をとても懐かしく思う。
それと同時に私はあの頃、素直じゃなかったなと思う。
両親に対して。
二十代の前半で股関節に痛みが出て、母とデパートへ買い物に出掛けても、座り込んでしまい、長く歩けなくなってしまった。
夜、寝る時には痛みで、股関節を保冷剤で冷やしながら寝たりした。
検査をすると元々の持病だったようで、その後に手術をしていただく事になる。
父は都内での仕事を終えると、私の入院していた港区の病院まで、良く洗濯物を取りに来てくれた。
それなのに、私はとても素っ気なかった。
疲れている仕事のあと、通うのは、大変だったと思う。
母は自宅から電車を乗り継いで、毎日のように通って来てくれた。
父にもだけれど、これには感謝しても感謝してもしきれない。本当に大変だったと思う。
若かった私は、母にも素っ気ない態度だった。
それどころか、母が悪い訳でもないのに、足の事で母に言わなくて言い事まで言ってしまった。
今考えれば、可哀想だったし、申し訳なかったと思う。
手術も成功して、痛みも取れて、杖も使わなくていい生活になれたのは、言うまでもなく、父と母のお陰だ。
だから、東京タワーを見る度に、何だか私は申し訳なくなってしまうのだ。
昔の幼かった自分を反省すべく、父と母の偉大さを感じるのだ。

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