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実写映画『ゴールデンカムイ』感想――これぞ原作リスペクトだ!

 先日、映画『ゴールデンカムイ』を鑑賞しました。原作漫画のエッセンスを見事に実写に落とし込んでおり、原作ファンも、新規の方も、万人に受け入れられる、非常によくできた作品になっていました。

 『ゴールデンカムイ』は、明治の終わり、日露戦争帰りの元兵士、杉元が、アイヌの少女アシリパと出会い、広大な北海道に隠された莫大な金塊を探し求めるアクションエンターテイメントです。いや、アイヌの郷土料理を味わうグルメ漫画かもしれませんし、男たちの筋肉がぶつかり合う筋肉ギャグ漫画かもしれません。

 とにかく、原作者の野田サトル先生が描く、ジャンル分けのしがたい独特の世界観が売りの漫画です。そういうわけなので、実写化が発表されたとき、正直私は不安でした。多様な要素が複合的に絡み合って形成されるこの漫画の「味」を、再現できるとは到底思えなかったからです。

 ところが、公開から数日で「面白い」との声がSNSでも流れ、何度も繰り返し見たというリピーターも散見されました。それにつられて私も遅ればせながら鑑賞したところ、あまりの面白さに圧倒されてしまいました。

 まず、なんといっても原作再現度の高さに驚きました。政治的なキャスティング臭を全く感じさせず、キャラクター一人ひとりの外見、性格、声をよく分析し、キャストを選定したのだろうと想像されます。

 杉元役の山崎賢人さんも、最初は「杉元にしてはイケメンすぎないか」と思っていましたが、「俺は、不死身の杉元だ!」と渾身の力で叫ぶシーンを見て、ああ、この人で良かったなと心から思いました。彼は目の演技がうまい。感情とか、過去の記憶とか、そういう目に見えないものを瞳に乗せるのがうまいなと、感じました。

 アシリパ役の山田杏奈さんも、原作は13歳くらいなのに、大人すぎないかと思っていましたが、子供っぽさを残しながら、芯の強い女の子というアシリパの特徴が、よく再現されていました。年齢や見た目だけに捉われず「アシリパ」という一人のキャラクターを再現しようという、原作キャラクターへの深いリスペクトが感じられ、とてもうれしかったです。

 他にも、土方歳三役の舘ひろしさんや、鶴見中尉役の玉木宏さんも、「これぞ原作再現」という圧巻のクオリティでした。今回は大きな見せ場もありませんでしたが、それでも圧倒的な存在感を出していました。続編に期待が高まります。

 次に、ストーリーについてです。見終わってから原作を読み返しましたが、今回の映画、ほとんどカットされたシーンはありません。テンポがよく、無駄のない構成の原作のクオリティあってのことですが、それでも、怒涛の展開を128分に落とし込むのは並大抵の技術ではありません。

 「原作に忠実に」という、実写化のお手本のような脚本でした。昨今、こうした話題が議論を巻き起こしていますが、『ゴールデンカムイ』を見て確信したことがあります。制作側が原作に対してどういう思いを抱いているか、映像を通して観客に必ず伝わります。原作をないがしろにしたら、原作者だけではなく、観客も絶対に気づきます。制作側は、そのことを肝に銘じるべきでしょう。

 映画『ゴールデンカムイ』は、原作未読の方にも、原作ファンの方にも、自信をもってお勧めできる実写作品です。
 悪いことは言いません。一度、ご覧になってください。後悔はさせません。

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