妻はうつ病じゃなく認知症だった(7)

今回は、我が家の基本的人権と運転免許証返納と車を買ったわけについて書いてみます。

実に重いテーマです。みなさんのご家族は免許証の返納は進んでいるのでしょうか。なかなか難しい面があるようですね。今回私は当事者になりイヤというほど思い知り、そして疲れました。はぁぁ······

  リベラル>パターナリズム
基本的に私は、リベラルでありたいと思っています。自分が批判や攻撃などされない限り、他人の自由や権利など全てを認めるという態度をとっています。
妻や子どもに対しても同じです。勘違いしないでほしいのは、突き放しているわけではないという点です。まずは、あなた達の意見を聞こうということです。
助けを求められれば助けますし、アドバイスを求められれば行います。求められてもいないのに、自分からしないだけです。当たり前ですが、求めない自由も尊重しているからです。
求められていないのにするのは、バターナリズム(温情主義)だと思っているので、積極的には行いません。

冷たいのではありません。全ての人の人格を認めて尊重しているからです。

世間にはパターナリズムが多いのでなかなか理解されることはありませんが······

  リベラル<パターナリズム
ところが、ここで悩ましい問題が発生しました。妻は認知症になったので正常な判断ができなくなったからです。

私は基本的にはこれまで通りお好きにどうぞという立場をとっていました。
彼女には重要な書類が来ているかもしれないのでこちらへ渡して下さいと伝えていました。
しかし、重要という意味すら失われています。認知症なので大事な書類が私に届くとは限りません。自身の誇りなどもあるのでしょう。病気のため全てを自分で管理できなくなっているのです。
このまま彼女の人格を尊重するだけではダメということに気づいたのです······認知症の人にリベラルな立場だけではダメなのではないか?パターナリズムにならざるを得ないのではないか、と。ここでパラダイムシフトが起こりました、

ある時、重要な書類が来ていたらどうしよう?と思い、彼女の手紙類が気になりました。仕方なく妻あての手紙類をパラパラ見ると、そこに運転免許証の更新のお知らせハガキがありました。期限まで残り10日ほどで失効するではありませんか!マズい!失効する!
妻に「免許証の更新期限が迫ってるよ!知ってたの?」と聞いてみると、「めんきょってなに?」「こうしんってなに?」聞いた私が悪いのです······

   彼女の車は廃車へ
実は、昨年10月から11月にかけて、彼女は何度も車をアチコチにぶつけていました。人を巻き込んでいないのが不幸中の幸いでしたが。
車に色々凹みがあったので聞いてみると、「事故なんか知らんよ!どこにもぶつけてない!」という返事でした。認知症の特性か、本当に思い込んでいるのか分かりません。認知症って恐ろしいと思った瞬間でした。

修理の見積もりをあげると50万ほどかかると言われ、病気のこともあり廃車にしました。つまり、免許証の更新が成功しても、自分の車がないので運転出来る環境はなくなりました。
痛い出費でしたが、必要経費として私名義の車として買い直すことにしました。

   診断書の提出命令!
免許証の更新に認知症のテストがあるらしいので、免許証の更新ができないと思います。更新の手続きに私は仕事の都合で行けませんでした。当然手続きは終わりません。聞くと2時間ほど警察署で手続きをしたけど、できなかったそうで講習の受講予約を手にしていました。

数日後、警察署から診断書の提出命令が届きました。出さないと取り消すか、医師の診断書を見てから判断するという内容で、道路交通法に規定されていました。

      ジレンマ
診断書を出したところで運転は認められませんし、すでに運転出来ない環境です。それとは別に、希望しているのに免許証の更新をさせないのは、彼女の権利を否定しているのではないだろうか。悩みました。

彼女の希望を受け入れて更新の手続きを試みても、診断書がないと免許証は取り消されます。つまり、何をしても免許証の更新は出来ないのです。
これらの事実から、免許証を諦めるように諭すことにしました。嫌がっていましたが、それしか方法がないのです。最終的に免許証更新手続きを中断し取下げて失効させ、運転経歴証明書の申込にしましたが、私の中ではジレンマでした。

   リベラルと認知症
認知症にはリベラルの立場では対応が出来ないという結論に至りました。介護にはパターナリズムの方が相性はいいのかと思います。これまでの私の生き方とは相反するけど、特例として受け入れざるを得ません。

これからも認知症とリベラルとで悩むことになるだろうと思う1日でした。警察署の手続きだけで2時間かかり、病院→警察署→昼から仕事と激務でした。自分を否定されているようで疲れた·······

皆さんはご家族の免許証返納がスムーズにいきますように。


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