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日本史上最悪の大量殺人犯は1人の僧侶だった

 物騒な話題だが、日本史上最悪の大量殺人犯は誰だろうか。

 一般に言われる戦後最悪の大量殺人犯は2019年の京都アニメーション放火事件の青葉真司である。ガソリンに着火したところ、ものすごい勢いで火が広がり、36人が死亡した。

 もっとも証拠があやふやなものを含めれば更に上が存在する。放火説が濃厚な2001年の歌舞伎町ビル火災は44人が死亡した。オウム真理教事件では公式の犠牲者29人の他に教団関係の行方不明者が数十人おり、本当の犠牲者は50人を超す可能性が高い。

 殺人として処理されることは無かったが、戦後の混乱期に発生した寿産院事件では貰い子100人前後が放置され、死亡した。戦前にはさらに上が存在し、1913年の名古屋貰い子殺人事件では200人が死亡したと推測されている。一般に殺人事件と認識されているのはここまでだろう。

 1943年の戦艦陸奥の爆沈事件では1000人の兵士が死亡した。爆発の原因は諸説あるが、放火という説が有力だ。これが事実であれば、近代史上最悪の殺人事件ということになる。

 しかし、さらに上には上がいる。日本史上最悪と考えられる大量殺人事件では死者は2万人に及んだ。一個人の犯行によってこれほどまで多くの人間が死亡した事件が実は存在したのである。

 それは1772年に発生した明和の大火だ。目黒付近で発生した火の手は強風の影響で江戸を横断するように広がり、日本橋の付近にまで至った。死者行方不明者は2万人に達し、江戸の三大大火に数えられた。関東地方でこれ以上の大惨事は明暦の大火・関東大震災・東京大空襲のみである。

明和の大火で延焼した地域
強風に煽られ、帯状に炎が広がった。

 この明和の大火の原因は放火だった。犯人は僧侶の真秀という男である。寺に盗みに入る際に放火したらしい。火災の後間もなく真秀は逮捕され、処刑された。

 大量の犠牲者を出す事件は放火が多い。人間1人の力を遥かに超える事態にまで広がる時があるからだ。明和の大火はその極端な例である。たった1人の人間の愚行で2万もの人命が奪われることがあるのだ。おそらく戦争や虐殺に関するものを除くと、人類史上最悪ではないかと思われる。


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