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男性の寿命が短いのは背が高いから?

 生物学的に身体のサイズと寿命には相関がある。別の種同士の比較では身体が大きい方が寿命が長い。ネズミの寿命は数年で、ゾウの寿命は60年だ。ところが同じ種の中だと逆になる。大型犬の寿命は小型犬よりも短い。セントバーナードの寿命は10歳に満たないことが多い。一方でチワワの寿命は14歳にも及ぶらしい。チワワは無理な品種改良で不健康そうなイメージがあったのだが、そんなことはないようだ。

 さて、この構図は人間にも当てはまると思われる。実際の研究でも、身長が1センチ伸びるごとに寿命は0.5年ほど短縮するらしい。ハワイの日系人を調査したところ、150センチ以下の人が一番長生きだったようだ。あまり身長が低いと弊害があるのではないかと思ってしまうが、そんなことはないようだ。栄養状態が悪かった時代は生育環境によって露骨な身長差があったと思われるが、そこもあまり関係ないらしい。どうにも低ければ低いほど良いようだ。そういえば107歳で現役の床屋をやっているおばあさんがメディアに取り上げられていたが、身長は140センチを切っているようだった。婆がバーバー
 
 民族ごとの寿命も身長要因で説明できるかもしれない。日本人はあまり身長が高くないので、ヨーロッパ人と比べて長命という可能性がある。社会インフラが高度に整っているはずの北欧やドイツは寿命がそこまで長くなく、より低身長のフランス・イタリア・スペインといった国々に負けている。東南アジアの国は所得水準が低いため寿命が短いことが多いが、妙に百寿者の割合が高い。カンボジアの百寿者の割合は欧州諸国に匹敵する。カンボジアが最貧国で、しかも老人の大半が内戦で死亡していることを考えると驚異的だ。カンボジア人の体格の小ささに秘訣があるのかもしれない。

 ただ、具体的に長命の有名人を考えてみると、そこまで身長差は感じない。中曽根康弘や村山富市もかなりの長身だった。逆に低身長の橋本龍太郎や小渕恵三は短命だった。総理大臣にはこの法則は成り立っていないようだ。政治家になるには長身であることが必要とも言われるので、何らかのバイアスなのかもしれない。

 さて、日本人男性の平均身長は170センチ、日本人女性の平均身長は158センチなので、平均身長の差は12センチである。平均寿命はそれぞれ81歳と87歳なので、6歳差だ。こうなると、男女の寿命の差は平均身長で説明できてしまうことになる。身長170センチの男性と身長170センチの女性の平均寿命は変わらないということなる。そんな馬鹿なことがあるだろうか。

 男性は不摂生が多いし、テストステロンで身体に負担がかかるから、基本的には早死と言われている。男性という生き物の代償だろう。鬼滅の刃ではないが、強い力を引き出すキャラは代償として寿命が短くなると決まっている。だが、体格面以外のデメリットは以外に少ないということになる。なんとも信じがたい。

 人間は生殖のためのエネルギーを投入するために寿命を前借りしているらしい。これは細胞レベルの話だが、もっとマクロ的な次元でも当てはまるだろう。高身長の男性がモテるのも、寿命と引き換えに生殖にエネルギーを投下しているからと言えるかもしれない。

 それにしても男女の寿命差が身長だけで説明できるということがあるだろうか。流石に半分くらいだろうと思う。我こそは医学に詳しいです、という人がいたら教えてほしい。

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