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日本語の動詞の活用は二種類だけ

 日本語の動詞の活用はネイティブであればほぼ意識することがない。ちょっと中学校の授業で習ったくらいかもしれない。ナ行変格活用とか、カ行五段活用といったものだ。なんだか覚えることが多くて面倒だった記憶がある。

 ただ、実際は日本語の動詞の活用は二種類だけである。学校文法よりも遥かに簡便にまとめることができる。学校文法は古文教育との接続性を重視しているため、日本語の文法の整理としては煩雑になってしまうのだ。

 日本語の動詞の活用を考えてみよう。まず最初に除外すべきは不規則動詞の「する」と「来る」だ。英語と違って日本語の不規則動詞はこの2つしかないので簡単だ。調べたところによるとかなり少ない方らしい。古語では「死ぬ」とか「あり」も不規則動詞だったが、現代語では規則動詞に吸収されている。不規則動詞はここでは議論の対象から外すものとする。

 日本語の動詞の二種類の活用の区別は「語幹が子音で終わるか母音で終わるか」だ。仮に前者を「子音末動詞」、後者を「母音末動詞」としてみよう。「子音末動詞」は五段活用に、「母音末動詞」は上一段活用と下一段活用にそれぞれ対応する。

「子音末動詞」の典型例は「切る」だ。この動詞の活用はこのようになる。

切ら(ない)
切り(たい)
切る(。)
切る(人)
切れ(ば)
切れ

「母音末動詞」の典型例は「着る」だ。この動詞の活用はこのようになる。

着(ない)
着(たい)
着る(。)
着る(人)
着れ(ば)
着ろ

 同じ「きる」であるが、両者の活用は異なっている。
「子音末動詞」の切るの場合は語幹が「切」というより「kir」であり、ここに母音をくっつけて活用させていく形になる。それぞれくっつける活用語尾は「aiuuee」となる。

 ところが着るの場合は「母音末動詞」だ。この場合は「着」という語幹に色々とくっつけていく感じになる。未然形と連用形はそのままあとの単語を接続すれば良い。あとは「るるれろ」をくっつければ良い。

 学校文法では上一段活用と下一段活用として分けられているが、ぶっちゃけこの区別はどうでも良い。活用語尾を考える時に両者の違いを覚える必要は全く無いからだ。母音末動詞は語幹の最後の母音が必ずIかEになると言うだけである。

 子音末動詞の活用は「aiuuee」であり、母音末動詞の活用は「○○るるれろ」だ。したがって語末のひらがなは子音末動詞の場合は様々なバリエーションが存在する。「歩・ない」とか「飲・たい」などだ。一方で母音動詞の場合は語末のひらがなはラ行の「るるれろ」しか来ない。「食べ。」とか「起き・ば」などだ。かな文字は音節文字なので活用語尾の構造を可視化しにくい。

 子音末動詞と母音末動詞の判別法は簡単である。命令形にしてみれば良い。子音末動詞はeで終わり、母音末動詞は「ろ」で終わるはずだ。「走る」は命令形だと「走れ!」だから子音末動詞だ。「閉じる」は「閉じろ!」だから母音動詞だ。「叩け」はeで終わるし、そもそもラ行意外が来る時点で子音末動詞である。なんともわかりやすい。

もう一つの判別法としては「ない」を付けてみるというのがある。子音動詞は語末が「歩か・ない」のようにAで終わっているが、母音動詞は「起き・ない」とか「食べ・ない」のようにIかEで終わっている。これは上一段と下一段を容易に区別できるために学校教育では良く用いられる判別法だが、筆者は両者の区別は無意味だと考えている派なので、最善の方法とはしない。

 外国人に対する日本語教育は実際にこの方式が取られているらしい。日本語の動詞の活用は二種類あるという教育だ。日本人は命令形にしてみれば両者を簡単に判別できるが、外国人は無理だろう。だから、一個一個覚えるしかなさそうだ。欧州系言語の男性名詞と女性名詞のような面倒くささだろうか。


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