現在、ソウルの二村(이촌)にある国立中央博物館では、10月9日まで「巨匠の視線、人に向かう~英ナショナル・ギャラリー名画展」を開催しています。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵の絵画が韓国で紹介されるのは、これが初めてです。来韓したのは、15世紀のルネサンス美術から20世紀初頭の後期印象派まで、50人の巨匠によって描かれた作品です。
この巨匠というのが、ボッティチェッリ、ラファエロ、カラヴァッジオ、ティツィアーノ、ベラスケス、レンブラント、ヤン・ステーン、ヴァン・ダイク、ゴヤ、トーマス・ローレンス、ターナー、コンスタブル、セザンヌ、ルノアール、マネ、モネ、ゴーギャン、ファン・ゴッホ・・・錚々たる名前がずらり。
これは、絶対に、見逃せん!
開催直後から大人気ということで、チケットを予約し、有料のオーディオガイドも借りて、特別展に臨みました。
特別展「巨匠の視線、人に向かう~英ナショナル・ギャラリー名画展」
I.ルネサンス、人のもとに来る神(르네상스, 사람 곁으로 온 신)
ルネサンスの画家たちは、空間描写の線的遠近法を習得するために数学を、人体を正確に描写するために解剖学を、そしてインスピレーションを得るために古典を探求しました。キリスト教の観念に従い抽象的な神の世界を描いた中世の画家たちとは異なり、自らの瞳に映る世界を科学的に分析することで、作品を創造したのです。
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II. 分裂した教会、異なる道を行く(분열된 교회, 서로 다른 길)
1517年にマルティン・ルターによって始まったローマ・カトリック教会に対する宗教改革。新教のプロテスタントが誕生し、キリスト教世界は分断されます。
このような背景の下、17世紀のヨーロッパ美術は発展します。イタリア、フランス、スペインなどのカトリック国家では、美術の力で人々の信仰心を高めようと試みました。そこで生まれたのが、見る者の感覚や感情に訴えるバロック美術です。一方、プロテスタントの中心である北ヨーロッパでは、絵画に描かれた人物が神のように崇拝されることを憂い、宗教美術を否定。画家たちは、自由に人物や自然の世界を描きました。
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III. 新しい時代、自己に対する関心(새로운 시대, 나에 대한 관심)
17世紀後半以降、人間の理性を重視した啓蒙主義が広まります。その影響で絶対的だった神と王の権威は危うくなり、人々は次第に個人の自由と幸福に関心を持つようになりました。1789年のフランス大革命は、このような背景の下で起こります。
新時代の絵画は、宗教や哲学思想と人々を繋ぐ媒体としてよりも、個人の経験を記録する役割を担うようになります。そう、画家たちの視線は、人々の人生へと向かったのです。
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IV. 印象主義、輝く瞬間(인상주의, 빛나는 순간)
19世紀後半、フランスで登場した印象派は、産業革命で近代化された都市に関心を抱きます。また、写真の登場で対象物をリアルに模写する必要性がなくなり、さらに、手軽なチューブ絵の具は画家たちを外の世界へと向かわせました。印象主義の画家たちは、刻一刻と変化する光と色彩を描こうとしたのです。
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今回のロンドン・ナショナル・ギャラリー名画展は、絵画を楽しみながらヨーロッパ美術の発展を学べる貴重な展示でした。
ただ、あまりにも偉大な画家の作品が集まり過ぎて、まとまりに欠ける気がしました。線にはなっているけど、中心がない感じ? そういう点では、昨年の「ハプスブルク600年、魅惑の傑作」は、本当におもしろい展示だったなと思います。
それでも、これだけの名作を韓国で観ることができ、ただただ感謝です。もう1回くらいは、観に来ないとな。