あまり声を掛けないでください。でも例外あり
外に出掛けると、よく声を掛けられます。
1人でトコトコ歩いているときはもちろん、大勢の人と一緒に信号待ちをしているときですら、他の誰でもなく、わたしに声を掛けてきます。ジョギングしているときですら声を掛けてくるので、気が抜けません。「いつでもお気軽にお声掛けください」と顔に書いた覚えは全くないのになあ・・・。
韓国は、人に声を掛けやすい文化です(個人調べ)。
今までイギリスや東南アジアでも数年間生活しましたが、ここまで声を掛けられることはありませんでした。それは、見た目が明らかに外国人だったからだと思いますが、人に話し掛けている光景自体、見掛けることは少なかったように思います。
韓国に来たばかりの頃は、あまりにも気軽に、しかも突然話し掛けてくるので、とても驚きました。言葉も分からず、相手の勢いにおののくこともしばしば。
しかも、相手は場所を選ばないのでやっかいです。
待ち合わせ場所、信号待ち、地下鉄、バス、大学のキャンパスなど、油断しているときにこそ声を掛けてきます。理由も道案内からアンケート調査、教会やサークルへの勧誘まで、様々。声を掛けてくる相手は、アジョッシ(おじさん)や学生もいましたが、割合としてはアジュンマ(おばちゃん)が多かったです。
アジュンマの凄い所は、韓国語は分からないとこちらが意思表示しても、永遠に話し続けることです。恐るべしアジュンマパワー。韓国語が通じない相手に何を話していたのか、そして、理解してもらえると思っていたのか、いまだに不思議です。
◇◇◇
場所を選ばないないためやっかいとは書きましたが、前もって対策できる場合もあります。それは、アンケート調査や署名活動など、何らかの広報活動を行っている場です(興味があるなら別ですが)。ソウルではよく見掛けます。
以前、彼らの動きを観察したことがありました。
すると、数十メートル前から、声を掛ける人間の目星を付けていることが分かりました。さらに分かったのは、話し掛けられない人たちは、しっかりと、話し掛けるなオーラを出しているということです。下を向き、どこか不機嫌で、声を掛けたら怒られちゃいそう。この世のモノじゃない、重苦しい何かを背負っていそうな方もいらっしゃいました。違う意味で、怖い。
このような場は、できる限り避けて通るのは言わずもがな、避けられない場合は一目散に速足で駆け抜けることが大切です。気配を消そうとしても、すでに気づかれているので無駄です。隙を与えず、ただ過ぎ去るのです。
それでも声を掛けてきたら、聞こえないフリをしましょう。目の前に来て立ち塞がる場合は(何度かありました)、「急いでるんで」と片手を軽く上げて、走り抜けましょう。
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こんな感じで声を掛けられることに飽き飽きしているわけですが、先日、可愛らしい声掛けがありました。
ジョギング中のこと、前方から、元気に飛び跳ねながらやって来る女の子2人組がいました。10歳くらいでしょうか。そのうちの1人がわたしのもとへやって来て、「滝はどこにありますか?」と訊いてきたのです。
さすが、かわいらしくても将来のアジュンマです。散歩中の人たちもいるなかで、走っている人間に訊いてくるなんて。でも、いいんです。かわいいから。
わたしはしっかりと急ブレーキを掛け(いうほど速く走ってないけど)、「滝は向こうにあるよ」と指をさして伝えました。
すると、「ちがいます、滝です。滝はどこにありますか?」と再び訊いてくるではないですか。
わたしは、滝の「폭포(ポㇰポ)」の発音がおかしくて伝わらないのだろうと、自分の韓国語能力を恨めしく思いました。そして「滝だよね? 滝は向こうにあるよ。この道を向こうにまっすぐ進んでいったら見えてくるよ」と答えました。
それでもその子は、「滝ですよ? えっと、滝って、ほら、なんていうのかな・・・」と言うので、「上から水がザーーって落ちるアレだよね?」とジェスチャーを交えながら答えると、「そうそう、その滝! え、向こうにあるんですか!?」と言い、すでに遠くの方まで走り去っていた友達に向かって、「そっちじゃないよ! あたしたち、逆方向に行ってる!」と大きな声で叫びました。
確かに滝は、彼女たちが進んでいる方向とは真逆にありました。ということは、伝わらなかったのは発音のせいじゃなかったのかな・・・?
2人は元気な声で「ありがとうございました」と言うと、滝の方へと駆けて行きました。
かわいいなあ。
声を掛けられて爽やかな気持ちになるなんて、久しぶりです。こういうのなら、いつでもウェルカムだよと思いながら、「ポㇰポ、ポkポ、ポッポ? いや、ポkポ、ポㇰポ」と発音の練習をして家まで帰りました。
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