Time to lose yourself
韓国の国立中央博物館へ行くと、必ずと言っていいほど確認する展示物があります。それは国宝にも指定されている半跏思惟像(반가사유상)です。
現在常設展にて、2尊の半跏思惟像を展示した思惟空間(사유의 방)が開かれています。特別展ではないため、入場料は無料です。テーマは「考えをめぐらし、物思いにふける時間(두루 헤아리며, 깊은 생각에 잠기는 시간)」。英語では ”Time to lose yourself deep in wandering thought” です。
率直に、今まで観てきた半跏思惟像の展示の中でもっとも仏像の崇高さと秀麗さを堪能できる秀逸な展示でした。それだけではありません。思惟像によって創り出される、すべてを包み込むような荘厳な空間に、ただただ圧倒されました。
とにかく素晴らしい。
それは「考えをめぐらし、物思いにふける時間」というよりは、思惟像に包まれることで思考自体が不可能になり、それによって自分の存在が消えてしまう感覚に近かったです。それも一種の ”lose yourself” なのでしょうが、決して "deep in wandering thought" ではなく、言うなれば ”lose yourself in the present moment” なのだと思います。
思惟空間-考えをめぐらし、物思いにふける時間
真っ暗な壁に囲まれた真っ暗な入口――。なかへと続く狭い道はわずかに傾き、天井からは小さな星たちがきらきらと降り注いでいました。ゆっくりと進んでいった先に広がるのは、静寂に覆われた異空間です。
◆金銅半跏思惟像(国宝第78号)
半跏思惟像は、人間の生老病死について思い悩む出家前のゴータマ・シッダールタ太子を表しています。中国では主に5~6世紀に制作され、韓国では三国時代の6~7世紀に流行しました。
◆金銅半跏思惟像(国宝第83号)
日本の国宝(彫刻の部)第1号に指定された弥勒菩薩半跏思惟像をご存じでしょうか。通称「宝冠弥勒」とも言われるこの仏像は、当時の日本の仏像としては稀なアカマツの一木造で、聖徳太子から渡来人の秦河勝へ贈られたと言われています。そして、この宝冠弥勒を本尊として603年(推古天皇11年)に建立されたのが、京都最古の寺院である広隆寺です。
韓国の国宝第83号半跏思惟像は、日本の宝冠弥勒と非常に酷似していることで知られています。文化的価値だけでなく、両国の歴史的関係も含めて、国立中央博物館に来館した際には見逃せない作品です。
◆宇宙が広がる思惟空間で半跏思惟像を堪能する
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