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雪が降った日

静かな魔法使い

 風のない日の雪は、とても静かです。それはきっと、目に見えるのに音がしないからかもしれません。空中を舞い踊るひらひら音。地面に辿り着いた瞬間のふさっ。それをこころのどこかで期待しているのです。

 しかし雪は、やはり静かです。

 あたりの騒音すらも吸収しているかのような静寂。寒い寒いと言いながらポケットに手を突っ込み、雪がゆらゆら舞い降りて来るのを眺めていると、こころが勝手にうきうきしだします。

 氷点下のなか
 笑みがこぼれてしまうのは
 雪が魔法を
 掛けたからなんだなあ

 るしを

雪は温かい

 今日、ソウルでは雪が降りました。久しぶりの雪です。ここ数日、日本同様、韓国にも寒波が訪れています。最低気温は-17度、最高気温は-10度。そんな日もありました。おかげで、外出自粛、外出時の足元注意、道路の凍結注意など、安全警報メッセージが1日に何件も届きます。

 雪は、寒いと降るものだと思っていました。

 しかし韓国に来て、必ずしもそんなことはないのだと知りました。とてつもなく寒い日には、むしろ雪は降りません。そして、雪の日は、少し温かく感じます。雪がない日は乾燥しています。湿気がない分、気温の低下がより激しくなるのでしょうか。いつか気象予報士さんに逢ったら訊いてみたいと思った瞬間、そういえば、伯父さんが気象予報士だったことを思い出しました。

子どもの頃と変わらない

 雪が積もったときの恒例行事といえば、いまだ何の跡も付いていない場所に、一番に、足を踏み入れることです。踏みしめる際は、からだの全神経を集中させなければなりません。あの、ぐぐっという独特な音と感覚が、雪の醍醐味なのですから。

 結局大人になっても、やりたいことは子どもの頃と変わらないようです。

 昔、片栗粉を握った音が雪を踏みしめたときの音と似ていると気づいたとき、世紀の大発見でもしたかのような喜びがありました。さらに、片栗粉と雪は同じ白色ではありませんか。世界が輝いて見えました。

雪は綿毛じゃない

 雪の日の恒例行事は、もう一つあります。それは、雪の結晶を見ることです。ふんわりふわふわ、こんもりと積もった雪の端っこに目を凝らします。個性豊かな形状に、幾重にも折り重なった姿が興味深くて、自分も仲間に加わりたくなります。

「目の前の結晶たちが、ふたたび空を舞ってくれないだろうか」

 そう思って、息を吹きかけてみました。結果は失敗。舞うどころか、息の熱で溶けてしまいました。そうだった。雪の結晶は、たんぽぽの綿毛じゃなかったね。

高所恐怖症の雪はいない
雪は綿毛じゃない

 

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