見出し画像

【翻訳】どのようなミスが最も損をするか理解する【MTT、セオリー】GTOWブログ.72


幸運なことに、私は『The Mental Game of Poker』を共同執筆したメンタルゲームコーチのJared Tendlerと長年一緒に仕事をしてきたが。彼が私にくれたアドバイスの中で、最も印象に残っているのは、何を勉強すればいいのかわからなかった時期のことだ。ソルバーが普及するずっと前のことだから、今のようにリークを掘り下げるツールはなかった。彼のアドバイスはこうだった:


何を勉強していいかわからないなら、Cゲームを勉強しなさい

彼が言いたかったのは、自分の最大のミスを特定し、それを減らすことに熱心に取り組むべき、ということだ。あなたの最大のミスは、おそらくあなたに最も大きな損失を与え、おそらくあなたがそれを犯したときに最も感情的に傷つけ、そしておそらく最も簡単に特定することが出来る。このアプローチで、より多くの利益を得ることができる。というものだった。

ソルバー時代になり、私のもう一人の執筆パートナーであるDara O’Kearneyは、EVの観点から同じアプローチを行う方法を私に教えてくれた。ある種のミスは他のミスよりもコストが高くなるとソルバーがそれを示している、というものだ。特定のミスにどれだけのコストがかかっているかがわかるのだから、最も損をするミスを掘り下げない訳にはいかない。
ありがたいことに、GTO Wizardはハンド毎に全てのアクションのEVをbb単位で表示するため、さまざまなタイプのミスにどれだけコストがかかるかを示してくれる。今日は、この機能をさらに掘り下げ、研究の指針にする方法を紹介しよう。




プリフロップのミス


簡単な例から始めよう。これはChipEV有効スタック40bbのMTTのUTGからのオープニングレンジである。


このグリッドでは、各ハンドがオープンした際の全体的な期待値(EV)が表示されている。ご覧の通り、AAは非常に利益が高く、平均して10.05bbを生み出すが、44はほぼブレークイーブンで、わずか0.01bbを生み出す。Q8sのようにプレイしないハンドは、当然ながらEVは0だ。
ハンドにマウスカーソルを合わせると、取りうるすべてのアクションの具体的なEVが表示される。


見てわかるように、AAでオールインする事は利益的なアクションで、平均して8.01bb儲かるが、AAでオープンするほうがはるかに利益的である。
Q9sのように、あるアクションでは儲かるが、別のアクションでは儲からないハンドもある:


ここでオープンは平均0.07bbの利益をもたらすが、オールインは0.87BBの損失となる。この2つのアクションの差は0.94bbである。これはQ9sのようなハンドがSRPのポストフロップではうまくプレイする事が出来るが、リレイズされたらおそらくフォールドするからである。Q9sでオールインした場合、余裕で勝っているハンドからしかコールされないので、-EVのオプションとなる。

これはおそらくかなり明白だ。レンジの境界の両端にあるハンドの違いを探ることは、とても興味深い。これは、レンジの底辺を間違えることがどれだけコストがかかるかを示している。
私たちがUTGからオープンする最悪のオフスーツのエースはAToだ。


AToもまたオールインする事で利益を得られないハンドだが、オープンすると平均0.06bbの儲ける事が出来る。A9oというレンジから1つだけ外れたハンドと比較してみよう:


このスポットでA9oをプレイして、後で調べてそれが間違いだったことを知ったら、自分が「惜しかった」からとして、それが大したことでないと思うかもしれない。

しかし、それは大きな問題だ。

A9oでオープンすることは、私たちに0.08bbのコストがかかる。これとAToの違いは0.14bbだ。従って、レンジの底を1つでも間違えると、かなりの代償を払うことになる。MTTプレイヤーであれば0.14bbのエラーは大したことに聞こえないかもしれないが、キャッシュゲームプレイヤーなら、この誤差が大きなサンプルに比例して大きくなることを知っているだろう。いつもこのポジションでこのミスを犯していた場合、これは長期的には14bb/100のエラーとなる。

小さなミスが大きなサンプル数で積み重なると、自分が思っている以上に大きな犠牲を払うことになる。

UTGが正しいレンジでオープンし、アクションがBBまでフォールドした場合、これがBBの対応だ:


ご覧の通り、BBはレンジの半分以上をコンティニューしている。なぜならBBはコールするための良い価格を得ており、アクションを締めくくる事が出来るからである。最小防御頻度(Minimum Defence Frequency)の概念に不慣れな場合、これは良いきっかけになる。例えば、見るからに弱いJ6sのようなハンドを取り上げてみよう:


コールとフォールドの差はかなり大きい。その差は0.26bbであり、UTGが間違ったハンドでオープンした前の例で見た差よりも大きい。フォールドは「安全な」オプションに見えるかもしれないが、そうすることでお金を燃やしているのだ。26bb/100のエラーにすらなる。
一歩戻って、RFIに対応するプレイヤーがブラインドを支払っていない例を使ってみよう。UTGオープンに戻るが、今度はHJが反応を考えている:


HJがコールできる最も弱いオフスーツのエースはAJoで、その利益は0.07bbとなる。


興味深いことに、コールレンジの外の最も強いハンドは時々コンティニューされる。AToがコールされることはないが、レイズされることはある。


なぜなら、AToはUTGオープンに対してはうまくプレイできないが、レンジの大部分を占める強いAxハンドをブロックするため、ブラフとしては機能するからである。これはブレークイーブンのブラフであるが、HJはコールした時には平均で0.11bb失う。AJoとAToのコールの差は0.18bbである。このように、レンジの下限では、正しいコールと間違ったコールの差が大きくなっている。ここでたった1ピップアウトの悪いコールをすると、大きなサンプルでは18bb/100の損失となる。これはまた、コンティニューの仕方の間違いが大きな意味を持つことも強調している。

ベットでは利益が出るがコールでは利益が出ないハンドもあり、オープンでは利益が出るがオールインでは利益が出ないハンドもある。GTOウィザードのEV出力は、アクションの収益性を示すだけでなく、これらのアクションの根底にある理論的根拠も明らかにしている。

コールの話に戻り、ハンド間のギャップをもう少し広げてみよう。例えば、A9oでコールした場合、これは全くコンティニューすべきでないハンドの中で最強のものである:


AJoでコールすると0.07bb、A9oでコールすると-0.42bbであり、両者の差は0.49bbとなる。これは重要なことで、大きなサンプルでは、このミスを犯し続ければ49bb/100のミスになる。コールするハンドを1ピップ誤ることは悪いことであり、それ以上誤ることは大損に繋がる。


ポストフロップのミス


この例は、有効スタック40bbのUTGがオープンし、SBが3ベットしてUTGがコールしたスポットで、フロップはJ♥J♦4♠である。このフロップでSBはほぼ全レンジをベットし、ポットの25%のサイズが好まれる。


これは典型的なレンジベット戦略で、SBがレンジで大きなアドバンテージを持っているため、小さなベットサイズで全レンジをベットするのが最も収益性の高い戦略である。これは、ランダムなハンドサンプルの各アクションのEVを見ればわかる。

ハンドがナッツであろうと、中程度の強さであろうと、完全なミスであろうと、最も利益的なアクションは25%のベットである。このようなボードで、非常に強いKJsや完全なミスであるT8sの場合、トリップでより多くのバリューを引き出し、エアーでフォールドの可能性を高くするために、より大きな額をベットしたくなるかもしれないが、これは間違いであることを示している。KJで50%ポットをベットするのと25%をベットするのとでは、0.31bb、つまり31bb/100の誤差が生じる。これは小さなミスに見えるかもしれないが、実際は大きなミスである。

仮に我々が25%ポットをベットしたとすると、UTGからの対応はこうなる:


ほとんどのカードはベットサイズが小さいのでコンティニューされ、この種のボードではどちらのプレイヤーも後のストリートでハンドの強さがあまり向上しないので、プリフロップのハンドの強さが大きくものをいう。コールされる最も弱いハンドの一つはKQsで、コールの価値は0.07bbもある。


数少ないフォールドするハンドのひとつがKQoで、コールした場合0.71bbも失う可能性がある。


KQsがコールであることを見れば、KQoもコールとして悪くないと合理化するのは簡単だが、その差は大きい。その差は0.77bb、つまり77bb/100にもなる。表面的には同じハンドのように感じるが、バックドアフラッシュの可能性がKQsの価値を劇的に高めている。
UTGが正しいレンジでコールし、ターンがK♠だったと仮定してハンドを早送りしてみよう。これがSBのアクションである:


これはSBにとって良いカードであり、彼らは依然として大きなレンジアドバンテージを持っているので、戦略はほとんど同じである。25%ポットが望ましいベットサイズであることに変わりはない。このボードでの強さの異なるランダムなハンドを見てみよう。


レンジの優位性という点では何も変わっていないので、今回もハンドに関係なく、ベットサイズは常に25%ポットが望ましい。今残っているKJはナッツに非常に近いが、それでもこの小さいサイズが有利である。50%ポットと25%ポットのベット額の差は0.87bbであり、これは87bb/100の誤差である。
フロップの時、50%ベットと25%ベットの差は31bb/100の差であったことを思い出してほしい。これは本質的には同じ戦略上のミスだが、コストは3倍近く違う。これは、フロップの時よりもターンの時の方がポットが大きいという、かなり明白な理由によるものだが、それでも注意喚起のために覚えておく価値はあるだろう。

ハンドの後半になればなるほど、ミスは高くつく傾向がある。


ゲーム終盤のミス


ここで、ICMが重要な要素になっている時のミスのコストを見てみよう。

GTO WizardでICMスポットを見るとき、EVはbbではなく、パーセンテージとしてのトーナメントエクイティで測定される。これは、テーブルのICMの合計値(フィールド全体ではない)を取り、それに対するパーセンテージとしてEVを表現することで表せられる。つまり、例えばテーブルのICMの合計値が$1,000で、あるハンドのEVがシミュレーションでは1だとすると、そのハンドは平均$1,000の1%、つまり現実のお金では$10の利益になる。

この例では、私たちはバブルに近づいており、以下がテーブルの状況とバブルファクターである。


ご覧のように、非常にショートスタックのプレイヤーがUTG1にいて、BBもバストのリスクを負っている。


これがUTG1までフォールドされた時のレンジである:


KTsはKxのグループの最も弱いオールインハンドであり、このような数値になる:


先ほど、オールインは不利益だがオープンは利益になる場面があることを見た。これはその逆である。KTではオールインはテーブルエクイティの0.07%の利益になる。オープンは-0.03%で、両者の差は0.1%である。この理由は、オールインがよく機能すること、この特殊なハンドが多くのコールハンドをブロックすること、コールされたときのエクイティがそこそこあることである。

オープンが利益的では無い理由は、リレイズするハンドレンジはKTsをドミネイトしており、コールされてフロップでミスした場合、厳しい状況に陥ることが多いためである。これはICMが重要な場面、特にショートスタックの時は非常に重要な考慮点である。あなたが一番したくないことは、自分のスタックのかなりの割合がポットに入り、トーナメント人生を賭けた厳しい決断を迫られ、フォールドせざるを得なくなることである。自分のスタック全体のレバレッジを使って、相手プレイヤーに厳しい決断を迫る方がずっといい。

KTsは有益なオールインである。
ところがK9sでは以下の数値になる:


K9sはオールインして0.03%失う、KTsとの差は0.1%である。
UTG1が適切なレンジでオールインをしたと仮定すると、これがBBの反応である。BBもショートスタックであり、負ければバブルになることはほぼ確実である。


AJsはペアで無いコールレンジの底であり、コールから得られるテーブルエクイティは0.38%になる。


以下はATsの数値である


今、私たちは2つの近いアクションの間にかなり深い溝を見ている。「良い」コールと「悪い」コールの差は0.41%である。もし2ピップス間違っていたら、つまりA9sでコールしたら、こうなる:


AJsとA9sの違いは0.77%だ。

ここに非常に重要な教訓がある。前の例で1「マス」間違ってオールインすると、0.1%のコストがかかる。同じチップ量で1マス間違ったコールすると、ATsでコールした場合のように0.41%のコストがかかる。間違ったコールのコストは間違ったオールインのコストの4倍だ。

これは「レイズをコールするためには、レイズをするよりも強いハンドが必要だ」と言われていたポーカーの古い格言を証明するもので、間違ったオールインは、相手をフォールドさせるという望ましい効果を持つ可能性があるため、コストがそれほど高くない。プリフロップでポットを取るか、コールされた時に勝つことで、2つの方法で勝つことができる。平均的なポットサイズが、はるかに小さいため、はるかに小さな間違いになる。

間違ったコールは間違ったベットよりもコストがかかる。なぜならポットは確実に大きくなる事が決まっており、ショーダウンで最高のハンドを持っている必要があるからだ。

これがICMを学ぶことが重要な理由である。同じテーブルでのエラーがトーナメントが後半になるにつれて複雑になる。ミスを「たった」xbbの損失で済ませるのは、このようなことを考えるための方法ではない。ミスの実際の金銭的コストはそれよりもはるかに大きい。

bb数ではなくテーブルエクイティで物事を測ることに戻ろう。例えば、バイイン$11のSunday Stormのバブル近くで3%のミスを犯したとしよう。あなたの座っているテーブル全体のエクイティが$200だった場合、それは$0.60のエラーであり、$11のバイインに対してそれほど多くは見えないかもしれない。賞金総額$50,000近いSunday Stormのファイナルテーブルで同じミスを犯すと、そのミスによって$150のエクイティが失われる。ほぼ14バイインのエラーになる訳である。非常に小さなミス、おそらく正しいレンジからたった1マス外れただけで、大金を失う可能性があるのだ。


ポーカー研究のトリアージ


今日は、利益が出るレンジの下限にあるハンドと、グリッド内で隣接する利益が出ないハンドの上限とのEVの違いについて見てきた。これは、定期的にミスを犯す場合の境界のミスのコストを示している。

  • これが示しているのはまた、ある種のミスが他のものよりもコストが高いということだ。

  • 間違ったフォールドは技術的には何もコストがかからないが、機会損失ちなる。すでにチップが投資されている場合は、特に大きな機会損失となる。

  • ベッティングミスはそれほど問題ではない。なぜなら、間違ったベットでもフォールドを引き出すことができるからだ。時には悪いオールインが悪いベットほどコストがかからないこともある。なぜなら、全スタックを使うレバレッジによって、より多くのフォールドを生むからだ。

  • コールのミスははるかに、はるかに、コストがかかる。フォールドさせることはできず、ショーダウンで最高のハンドを持っている必要があり、ポットははるかに大きい。

  • ICMが重要な因子となる状況のコールのミスは非常にコストがかかる。なぜなら、ミスの実際の金銭的な価値が重複するからだ。年間で最大のファイナルテーブルでコールレンジを間違えると、エクイティで換算するとで数十または数百のバイインを失う可能性がある。

  • ベッティングとコールのミスも、ハンドが後半のストリートに進むにつれて重複する。リバーでの間違ったコールは、通常、以前のストリートよりもポットが大きいため、より多くのコストがかかる。

ポストフロップを研究するとき、これはまた、リバーのミスをターンのミスよりも、ターンのミスをフロップのミスよりも修正することが重要であることを意味する。これがGTO WizardのDrill機能が本当に価値を発揮する場所だ。ここでは、あなたが犯すミスの種類とそれが何を失うかを迅速に特定できるだけでなく、バンクロールを全くリスクに晒す事なく、最もコストがかかるスポットを具体的に練習することもできる。

これは、ポーカーの勉強をする際により効率の良い近道を通る機会があることを意味する。プリフロップでは、オープニング/オールインレンジに取り組む前に、コールレンジを徹底的に掘り下げることがより重要だ。これは、ICMを研究している場合に特にそうだ。ファイナルテーブルやバブルでのコールレンジを理解することは、年間で最も大きな金銭的決断のいくつかになるかもしれない。


要旨


  • 何に取り組めばいいのかわからない場合は、一番大きなリークに取り組もう。

  • 利益的なハンドとレンジから1ピップ外れたハンドの差は大きい。

  • ベットのミスはコールのミスほど高くはならない。

  • ベットで利益を得られてもコールで利益を得られないハンドもあれば、オールインで利益を得られてもオープンで利益を得られないハンドもある。

  • ストリートの後半になればなるほど、ミスの代償は大きくなる。

  • トーナメントの後半になればなるほど、ミスの代償は大きくなる。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事を読んで良いと感じて頂けましたら、noteのスキ、やSNSでの拡散、Twitterのフォロー、サポート等をして頂けますと、本当に執筆の励みになります!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?