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【翻訳】ドンクベットは下手くそなプレイなのか?【MTT、セオリー】GTOWブログ.64


「ドンクベッティング」とは、前のストリートのアグレッシブなアクションを取ったプレイヤーに対してアウトポジションからリードベットすることで、ポーカーの黎明期には、このようなベットは下手なプレイヤーの特徴、つまり「ドンク」(ドンキーの略)と考えられていたことに由来する蔑称である。そのステレオタイプは実際全く根拠が無いわけではない:前のストリートのアグレッサーに対してベットすることはめったに正しいこととはならないため、行われるときはしばしば誤ったアクションとして行われる。

以下のグラフは、GTOウィザードのフロップ集合分析のデータに基づくもので、MTTの様々なスタックサイズと、アーリー、ミドル、レイトポジションの相手に対する、BBの平均的なフロップドンクベットの頻度を示している。


オープンするプレイヤーのポジションが後ろになるにつれてドンクベッティングが少し増えるように見えるが、それが全体的に当てはまるわけではない。ここで最もわかりやすい傾向は、BBは明確に搾取的な目的がない限り、ほとんどドンクベットをすべきではないということだ。

ドンクベットはあなたの最優先の学習対象ではなく、それについて学ぶまでは、ドンクベットを一切しないというシンプルなルールに従った方がよい。

しかし、それだけで全ての話が語られているわけではない。こちらはもう一つのチャートで、フロップのハイカードによって分類された、BBがBTNオープナーに対して行うドンクベッティングの頻度を示している。


HJに対してはこちら


UTGに対してはこちら


このようにデータを並べ替えると、BBの戦略の中で実際にドンクベットが重要な部分を占めるフロップがいくつかあることがわかる。ローカードフロップはめったに起きないため、全体の平均がこれほど低くなっているのだが、6ハイや5ハイのフロップが来た場合、BBがベットに出るのは必ずしも「ドンキーな」アクションではない事がわかる。

とはいえ、ドンクベットが正しいことは稀であり、誤用しやすいことは事実である。ドンクベッティングを勉強の最優先事項にすべきではなく、勉強するまではドンクベッティングをしないというシンプルなルールを守る方がよい。このルールがあなたを誤った方向に導くことは滅多に無いが、無計画にドンクベットをすると、大きな間違いやエクスプロイトにつながる可能性がある。



ドンクベットはいつ行うのが正しいのか

もしあなたがこの記事をまだ読んでいるとしたら、あなたは上級者でよく勉強しているか、ロバ(donkey)のように頑固かのどちらかだろう。
BBのドンクベッティングはほとんど全て低いカードのフロップで行われる。6ハイや5ハイのフロップの特徴は、ほとんどがコネクトしていることだ。低いカードのコネクトしたボードは、プリフロップレイザーがコンティニュエーションベットをする上で最も不利なボードの一つであり、BBがリードでドンクベットをする動機付けとなる。

プリフロップのレイザーがベットする可能性が高いボードでは、BBが先んじてベットする理由はほとんどない。BBがバリューでベットするか、ブラフとしてベットするかに関わらず、彼らは相手に先に広くて弱いレンジでポットにお金を入れさせたいと望むだろう。したがって、ドンクベッティングは、チェックされた場合、相手が頻繁にCbetをするとBBが期待すべきでない状況でのみ発生する。

コンティニュエーションベットにとって望ましくないフロップには2つの要因がある:

  1. プリフロップレイザーはエクイティアドバンテージを失う。プリフロップレイザーはBBコーラーよりもはるかに強いレンジでフロップを見るので、平均的なフロップではエクイティに大きなアドバンテージがあり、高い頻度でベットしてもBBから多くのフォールドを引き出すことができる。BBが50%近いエクイティになるのは、非常に特殊なフロップ、通常ローかミディアムコネクテッドカードだけである。

  2. BBはフロップでナッツアドバンテージを持つ。これは文字通りのナッツという意味ではない。実際、浅いスタックであれば、トップペアやセカンドペアでも十分にナッツとしてプレーできる。しかし、BBがセット、ストレート、ツーペアをフロップする可能性が高いボードは、チェックレイズのリスクがあるため、プリフロップレイザーがコンティニュエーションベットをしにくい。

例えば、654rのフロップで20bbのUTG対BBのレンジの内訳は以下の通りである:


これはBBがレンジの60%をドンクベットしている場面である。BBはベストハンドとグッドハンドを多く持っており、エクイティがほぼ半々であることに注目してほしい。比較のために、JT9rのフロップでBBが決してドンクベットをしない場合の同じ構成を示す:



どんなハンドがドンクベットに適しているのか


ドンクベットに適したフロップを見極めた後でも、どのハンドがベットのレンジに入るのかという悩ましい問題が残る。
次の図は、有効スタック20bbのUTGオープナーに対する764rのフロップでのBBのドンクベッティングレンジを示している。これは、全てのポジションとスタックサイズにおいて最も頻度の高いドンクベッティングスポットの一つであるため、特定のハンドがベットに魅力的であることを明確に示している。



ドンクベッティングを正確に実行することが難しい理由の一部は、比較的高頻度のベッティングスポットであっても、適切な候補が明らかでなかったり直感的でなかったりするからだ。しかし、BBのベッティングハンドの中でいくつかの傾向を見ることから始めることができる:

  1. トップペアはキッカーに関わらず、ほぼ純粋なベットである。

  2.  セカンドペアも非常に高頻度でベットされる。

  3. ほとんどのオープンエンドのストレートドローがベットされる。

  4. BBのより良いAxやKxのハンドからも多くのベットが行われる。

ベットしないハンドの種類にも注目できる。BBが最も一貫してチェックするのは:

  1. 小さなオフスーツのオーバーカード(QJo、JTo)。

  2. A2oやK2oは、弱いキッカーだけでなく、A3やK3が持つストレートドローも欠けている。

  3. 彼らの最悪のペア、特にストレートドローもある場合(主に33はチェックだが、22は主にベットされる)

  4. ナッツ。BBは主に85をチェックするが、これはUTGのコンティニューするハンドである98、88、87をブロックする。しかし、主に53をベットする。セットやツーペアをスロープレイするのは望ましくない。なぜなら、恐ろしいターンカードでアクションが出来なくなったり、ポット全体を失う可能性があるからだ。


これらの原則を明確にすることで、このドンクベットが具体的に何を達成するのかが見えてくる。ポットの33%という小さなベットであることに注意。このシミュレーションに含まれる他のベットサイズはオールインだけであり、BBがこれを使うことはないので、例えば75%のポットベットをBBが使うことはないと断言することはできない。しかし、アウトオブポジションからの小さなベットでは、UTGがフォールドすることはほとんどないはずである。つまり、BBはコールされたときにエクイティが良く、なおかつエクイティを否定することである程度の利益を得られるハンドにベットすることがほとんどである。つまり、このレンジでは完全なエアーでのブラフはほとんどない。A2oとK2oはBBの最もエクイティの低いハンドの一つであり、これらは純粋なチェックである。このベッティングレンジのほとんどは、薄いバリューとプロテクションである。

AToとKToは単なるブラフではない。AJoやKQoのようなドミネイトされているハンドをフォールドされることもあるが、QTsやK9sのようなこちらがドミネイトしているハンドにコールされることもある。そしてQJoのエクイティも否定する。QJoは後のストリートでのポジションの利点に加え、8つのアウツも持っている。ベットすることで、これらのハンドのエクイティを一掃し、Tがターンで出たときにバリューとしてベットし続けるか、AやKがターンで出たときにチェックしてブラフを誘う準備をする。

中程度の強さのハンドを多くベットすることの危険性は、UTGにレイズする動機を与えることである。従って、BBはレイズされるのを嫌うハンドと、レイズされると非常に有利なハンドでバランスを取っている。これにはセットやストレートだけでなく、75、65、54も含まれる。これらはUTGのブラフのエクイティを否定するためにレイズされた時にオールインをすることが出来、同時にオールインをコールする強いハンドに対しても堅牢なエクイティを維持することができる。BBのベッティングレンジのほとんどは、エクイティを否定することで利益を得つつ、コールされたときにもエクイティとプレイアビリティを維持できるハンドで構成されている。これらの多くのハンドはレイズに対して脆弱であるため、ナッツハンドと強いドローは、UTGがレイズすることをインディファレントにさせるために役立つ。


より深いスタックの例


スタックが浅いほど、このプレイはBBにとって可能性が高くなる。T7を持ってレイズされることは、SPRが3であればそれほど怖くない。BBはこのフロップでベストハンドを多く持っているわけではないが、グッドハンドを多く持っている。わずか20bbでグッドハンドはナッツとして扱うには十分である。
100bbのスタックでもBBは764のフロップでドンクベットをするが、その頻度は3分の2近くに減る。スタックが深くなると、BBはスタックする価値のあるハンドを持ちにくくなり、レイズに弱くなる(あるいは、チェックレンジにナッツハンドを残しておかなければ、ビッグベットに弱くなる)。これは、T7のようなトップペアがナッツとしてプレイできなくなったこともあるが、プリフロップのコーリングレンジに53oが少なくなったためでもある。


100bbのスタックでは、BBのエクイティは少なくなり、グッドハンドも少なくなるので、ドンクベットは少なくなる:


有効スタック100bbの場合、BBが最もベットするフロップは654rである。頻度は20bbの764rより若干低いが、レンジの構成はよく似ている。


繰り返しになるが、主なチェックハンドはオフスーツの弱いブロードウェイで、信頼出来るアウツが無いものである。彼らはバックドアのストレートやフラッシュドローさえ持っておらず、トップペアを作ったときにドミネーションされるリスクもあ理、このスタックの深さではさらに大きな懸念事項となる。BBはバリューとエクイティの否定を目的に、脆弱なペアやドローでベットすることを好む。

BBのナッツアドバンテージ-UTGは87、65、54、32のコンボをほとんど持っておらず、また44を全頻度でレイズしているわけでもない-は、UTGがこれらのベットを積極的にレイズするのを防ぐ。また、BBはこれらのストレートやツーペアをレンジに持ち得ると予想されるBTNのオープナーに対して、このフロップでほとんどドンクベットを行わない。

しかし、BBはスタックの浅いUTGレイザーに対しては654rのフロップで積極的にドンクベットする。以下が彼らの有効スタック20bbの戦略である。


ドンクベッティングの頻度は同じか、少し高いくらいだが、レンジにはいくつかの違いがある。20bbのスタックでは、BBはA8sや83sをベットしないが、これらはより深いスタックで高頻度でベットされるハンドである。これらのハンドでは、ショートスタックである事が不利に働き、相手がドンクベットに対してオールインを行い、これらの強いドローをポットから追い出すのが容易になる。

スタック20bbのUTGの均衡戦略は、BBのドンクベットに対して約16%のハンドをオールインすることである。下のBBの反応から、A8sは純粋なフォールドであり、83sのエクイティは36%で、コールするのに必要な39%には少し及ばないことがわかる。


代わりにベットされるのは、QJoやQToのような弱いオフスーツのオーバーカードで、100bbのスタックでは決してベットされない。BBは83sをフォールドするのと同じように、オールインに対してこれらをフォールドすることを勿体無い事に感じる事はないし、スタックが深いときとは違って、トップペアになったときにこれらを強いハンドとして扱うことができる。

深いスタックでは、UTGはもはや無頓着にオーバーペアでスタックオフすることができなくなる。したがって、彼らは以前の半分以下の頻度でレイズし、主に小さいサイズを使う。これは、BBがこれらのドローからレイズされる危険がもはやないことを意味する:彼らは以前よりも少なくレイズされ、レイズされたときには即座にコール出来るほどオッズがよくなり、ストレートに改善した場合にはより大きなペイオフを期待できる。


ICMの影響

ICMはプレイヤーのインセンティブを劇的に変化させることができる。
大まかに言えば、両プレイヤーともポットを大きくしようというインセンティブは低くなる。片方のプレイヤーがカバーされている場合、ベットする意欲は特に減退する。したがって、有利なボードであっても、自分がカバーされたプレイヤーであるときは、ドンクベットの回数を減らすべきである。逆に、相手をカバーしているときは、ドンクベットをするのが望ましくないと思われる場面でも、ドンクベットは戦略の重要な一部となる。この記事では、これらの概念について詳しく説明しているので読んでほしい。


結論


BBがドンクベットのオプションを有効的に使用するためには、以下の三つの条件が必要とされる:

  1. エクイティが十分に近い。プリフロップのレイザーが高頻度でフロップをCbetするとは期待できない。BBはエクイティアドバンテージを必要としないが、大きな不利を負っていてはならない。

  2. ボードがダイナミック(動的)である。BBがプロテクトを重視し、レンジのかなりの部分で早期に資金を投入することを望む。

  3. BBがナッツアドバンテージを持つ。相手がポラライズしたレンジで大きなレイズをしてドンクベットを攻撃する能力を制限する。

フロップのカードがこのように揃うことは稀であり、すなわちフロップでドンクベットをすることも稀である。しかし、低いカードと中程度のカードで構成されるいくつかの特定のフロップでは、BBはかなりのドンクベッティングレンジを展開することで実際に利益を得ることができる。


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