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お花見弾丸ツアー:池上本門寺

 桜の花咲く園を求めて!今回は東京都は大田区、広大な寺領を持つ池上本門寺に来ておりますわ!諸事情により、今回から画像フォーマットではなく、テキストフォーマットでお送りいたします!



池上本門寺の総門。高麗門造りの重厚な黒門ですわ。扁額へんがくは本阿弥光悦の筆によるもの。(現在かかっているものは複製)

 池上いけがみ本門寺ほんもんじは、日蓮にちれん宗の寺院。正式名称を「長栄山ちょうえいざん 本門寺ほんもんじ」といい、寺格は大本山。七つある大本山の中でも日蓮入滅にゅうめつの地として知られ、いまなお広大な寺領を持ち、おびただしい数の史跡・文化財を有することで有名ですわ。この総門と扁額へんがくもそのひとつ。

総門……寺院の表門のこと。


総門から仁王門へと至る「此経難持坂しきょうなんじざか」を望みます。日蓮宗に深く帰依した加藤清正かとうきよまさ公の寄進と伝わりますの。

 池上本門寺の池上とは、鎌倉の世にこの地の名前であった武蔵野国むさしのくに 池上郷いけがみごう、そして日蓮の有力な檀越だんえつ(信者でありパトロンのようなもの)であった鎌倉武士、池上宗仲いけがみ むねなかの名から。彼が寺領を寄進して以来、池上本門寺と呼びならわすようになったとか。

此経難持坂しきょうなんじざか……妙法蓮華経みょうほうれんげきょう法華経ほけきょう)の一節にある此経難持しきょうなんじ偈文げもん九十六字にちなみ、九十六段ある。経文を読誦どくしょうしながら上ればいつのまにか上りきっているという仕組み。

此経難持しきょうなんじ……の経は持ち難し。釈迦亡き後、経(法華経)を広め、維持するのは難しい、の意。信仰の受難、困難を示したものか。この後偈文げもんは「しかし持ち続ければ仏道の功徳くどくは成就する」と続く。

偈文げもん……韻文の形式を持つ詩歌しいか・散文のこと。


不埒にも「いちにの合掌」に空目いたします


加藤清正公の寄進と伝わる石段を上っていきましょう

 本当に九十六段なのかどうか……さすがに法華経の一節を憶えてはおりませんし、途中でゼーハーしていたので数えるのはやめましたわ。



磨耗した石段にはめこまれた補修の石。この石とてもそう新しいものには見えません。
いつの頃の修復なのか……



古色蒼然とした石灯籠

 ……なのですけど、どうしてもこの真ん中の部分が何かのキャラクターの顔に見えてしかたないのです!葉っぱか花の図案だというのはわかるのですけども、抜いている部分が太眉の犬かなにかに見えてしまって、もうそれ以外には見えなくなりましたわ!たすけて!(;´Д`)



最後のソメイヨシノ、花吹雪。
動画で撮ればよかったですわ〜

 池上本門寺は知られざる桜の名所でもありますの。今年は桜の開花が足踏みしていたおかげですっかりタイミングをずらされてしまい、また春の嵐や急激な気温の変化によるわたくし自身の体調不良、またおばあさまの急な発熱に伴う看病などで、ついにソメイヨシノを鑑賞する機会には恵まれないと思っておりましたけれども──



個体差に賭けました!

 ばっちり大当たりですわ!これほどの広大な寺領ならば、まだまだ盛期のソメイヨシノがあると踏んでおりました!(訪れたのは4月14日)



石段を上りきったところ。奥に見えるのが仁王門ですわ

 でも今回は参拝に来たのではありませんので、ここで右に折れ、桜の方に近づいていきます。



奥に見えるのは日蓮上人しょうにん

 だいぶ葉桜になりつつありますけど、まだまだいけますわね!



全長3.4m、重さ約1トンだそう。アルミニウム製。

 アル……アルミニウム製?!
  像を作る金属は銅か青銅、鉄や金、銀が相場だと思っておりましたのに!やけにギラギラしていると思ったら、まさかのアルミニウムだとは!堅牢製とか、対腐食性とか、他の金属像に比べてどうなんでしょう。他にアルミ像って、存在するのでしょうか?



サムズアップ!(数珠をっているモーションだと思います)

 ああ、なるほど!以前、博物館で見た昔のお弁当箱と同じですね!アルマイト処理かなにかをして、表面を硬化&腐食防止としているのでしょう。そう書いてあるわけではありませんけど、そうでなければこんな雨ざらし、吹きさらしの所に置いておけるわけがありませんもの。
 制作は彫刻家の北村西望せいぼう先生。長崎平和記念像の制作者ですわね。奉納は富山県の黒谷美術という会社となっているので、鋳造したのはこちらでしょう。

 


枝を差し伸ばしてくれる桜

 しかし、アルミ像ですか……世の中にはまだまだわたくしの知らないものがたくさんございますのね。今後は、像の材質にまで目が行くようになるでしょう。勉強になりますわ~!



きれいきれい!お花見ならやっぱり一度はソメイヨシノを観ないと!

 ところで、日蓮上人しょうにんの像って、上野アメ横の徳大寺にある像もそうですけど、こう……マッシブと言いますか、オフェンシブと言いますか、力強い立ち姿で造られることが多いような気がするんですよね。これはもう、来歴に由来する個人の特性みたいなものなのでしょうか。

日蓮……鎌倉時代の僧。地震、干ばつ、飢饉、疫病、元寇などの災厄が続く世の中にあって、その原因が間違った教え、間違った信仰にあるとし、釈迦から伝えられた妙法蓮華経みょうほうれんげきょうこそが唯一の真理であると宣言。他の宗派に対し攻撃的な言動を取った。浄土真宗や真言宗、時の政府の政策などを批判した「立正安国論りっしょうあんこくろん」は有名。



この、薄い花びらの中心から広がる淡い紅色が、ソメイヨシノの醍醐味

 とはいえわたくし、日蓮は嫌いではありませんの。むしろ現代に生きていたらバチバチにディベートとかやりあって、(ふん、なかなかやりますわね!気に入りましたわ!)というライバルポジにしたいくらい。それくらい、キャラとしてはおいしい性格をしていると思いますの。さすが日本の主要十三宗派の中で唯一、開祖の名前を宗派名につけるだけあります。

十三宗派……法相宗ほっそうしゅう華厳宗けごんしゅう律宗りっしゅう天台宗てんだいしゅう真言宗しんごんしゅう融通念仏宗ゆうづうねんぶつしゅう浄土宗じょうどしゅう浄土真宗じょうどしんしゅう時宗じしゅう臨済宗りんざいしゅう曹洞宗そうとうしゅう黄檗宗おうばくしゅう日蓮宗にちれんしゅうの十三派。



お天気にも恵まれたお花見日和

 近くに幹線道路(国道1号線)があるとは思えないほどの静けさ。広大な寺領だけあります。



長栄堂ちょうえいどうと紅葉をバックに桜

長栄堂ちょうえいどう……長栄大威徳天だいいとくてん(大威徳明王みょうおう)を祀るお堂。大威徳明王は流刑になった日蓮のもとに老人の姿で現れ、これを生涯守護したという。転じて法華経の守護者としてもあがめられる。


聖域にふさわしい感じの桜

 桜は日蓮上人像の周りだけではありません。いったん本堂の方に戻って、近くを探してみましょう!



屋台数軒を発見!


じゃがバター屋さんあれども店主はなし!クキィー

 桜の下の特等席に屋台を出すのはどうなんですの……反対側に出店して、桜の下に席をもうければ、いくらでもお客は入るのでは?



本堂近くにあったシダレザクラ。さすがにもう散っていますわね

 身延山みのぶさんは、山梨県南巨摩郡みなみこまぐんの身延町と早川町の間にまたがる山。日本仏教三大霊山のひとつに数えられ、日蓮宗の総本山としても知られています。

日本仏教三大霊山……高野山、比叡山、身延山を指す。日本三大霊山は高野山、比叡山、恐山。



それでも部分的に観ればまだいけますわ!

 身延山久遠寺くおんじは日蓮が修行の日々を送った場所であり、日蓮の遺骨を祀った場所でもある、名実共に日蓮宗の総本山。その身延山から贈られたシダレザクラということでしょうか。



経蔵をバックに

 死の直前、身延山から湯治のために足を運んだ日蓮の姿が重なりますわね……



ここからが本門寺の桜の本番

 なぜ、池上本門寺が知られざる桜の名所なのか。お花見の好適地として名前が上がらないのか。その理由がここにございます。
 ほとんどの桜が、墓地の中にあるのです。



上の方はもりもり咲いております!

 どんちゃん騒ぎはもちろんご法度。桜を鑑賞する時は、死者の眠りを妨げないように、礼節をもって訪れましょう。



(なので、ここからはしばらく沈黙いたしますわ~)

 

 

 

 

 

 

(は?)

 力道山りきどうざんって、あの力道山ですわよね。プロレスラーの。名前しか知りませんけど。ここにお墓があったのですね。



本門寺の五重塔をバックに

 お墓の中を通り抜ける途中、何本かの卒塔婆そとばがカタカタ鳴っておりました。卒塔婆とは、日本仏教では追善供養ついぜんくよう、つまり故人の冥福を祈るために建てられるもの。いわば故人への手紙のようなものだと、わたくしは解釈しております。そして、その卒塔婆が鳴るということは、死者が返事として語りかけてきているのでは……とも思えますの。



 うららかな日差しと、花吹雪が降り注ぐ、生の終着点。

 鳥の声と風の音だけが耳に届きます。



 見上げれば、蒼き天に向かって立つ朱塗りの塔。

 はらはらと散りゆく桜……



 全身の感覚が透明になり、濃密ななにかの中にいだかれ、押し進むとそのなにかの流れを感じるようなものを覚える──
 うらはらに精神は、空間に拡散して、しかし確たる意志をもってたゆたうような──
 そんな不思議な気持ちを味わいました。



そろそろ、おいとまいたしましょうか

 いかがだったでしょうか?
 東京23区屈指の霊場、池上本門寺。大本山の称号にふさわしい寺格、雰囲気をまとっておりましたわ。今度来るときは、力道山のお墓におまいりするプロレスラーを探してみましょう!(*^^*)




 さて、今回から、お花の投稿にはわたくしがイメージする音楽をあわせてご紹介したいと思います。これはnoterの「星の汀」さんがやっていらしたのを真似させていただいたものですわ(*^^*)

 今回の「お花見弾丸ツアー:池上本門寺」に合わせる曲は、こちら。



 画像をクリックすると画像だけ切り替えて見られますので、曲を流しながら画像をめくるようにしてもお楽しみいただけます。



 それではまた、どこかの桜の樹の下でお会いいたしましょう。
 ごきげんよう~




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