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言論の自由は当たり前ではない!? 約100年前に発売禁止になった文学作品とは【黎明日本左翼史 左翼の誕生と弾圧・転向 1867-1945】池上彰、佐藤優著

『蟹工船』(小林多喜二著)、
『セメント樽の中の手紙』(葉山嘉樹著)
これらの作品を聞いたことがありませんか。

『セメント樽の中の手紙』は
中学校の国語の授業でやった記憶があります。
「機械に巻き込まれるなんて怖い」と子どもながらに思いました。

授業中、当時の教科担当の先生から
こんなことを言われました。
「プロレタリア文学というものがありました」
「この作品が出た当時(1929年)、
国で発売が禁止されました」
そう言われて驚きました。

国はなぜ、発売禁止にするほど
これらの作品を恐れたのかと疑問に感じました。


・権力側は恐れていたもの

一番多い時でも、
共産党の党員はたかだか600人でした。
それでも権力側が彼らを恐れていたのは、
プロレタリア文学の影響が大きいと本書の中で指摘。

今の時代、書籍だけでなくSNSなどを見ていると
言葉の力は強いと感じます。
権力側は感覚的に、言葉の力の強さを恐れていたのかもしれません。

この本の中盤は、組織を立ち上げては
関係者が逮捕される様子を繰り返し触れてました。
彼らの思想が国民に広がらないように
必死になっていたのを感じました。

・エンタメ性があった

小林多喜二と葉山嘉樹を比較している章があります。

小林多喜二は現在の小樽商科大学出身です。
今でいうところのエリートでした。

それに対して、葉山嘉樹は
学費が払えず大学を退学になってます。

小林多喜二は経験しているわけではないので
人からの伝聞や想像で書くしかなかったと指摘。
それに対して苦労人の葉山嘉樹は
リアリティがあったとのことです。

小林多喜二が書いた『蟹工船』では
ストライキの鎮圧に海軍が出てきます。
実際、当時の治安維持法の管轄は警察です。
軍隊が出てくるのはあり得ないと指摘しています。

リアリストの葉山嘉樹は
ストの鎮圧に軍隊を出すとは
想像できなかったでしょう。

そうは言っても、多くの国民はそんな細かい事情は分かりません。
軍隊が出て鎮圧した方が、物語としては面白いと指摘。

エンタメ性で比較したら、
小林多喜二に軍配が上がってました。

・感想

プロレタリア文学のイメージは、
言論弾圧にあっていた印象が強いです。
いろんな方の本で小林多喜二の作品が出てきますが、特別高等警察に拷問されて殺されたイメージが強いです。

今の時代、当時発売を禁止されていた文学作品が
自由に読めます。

当時と今を比較して、
隔世の感があると言ってた人がいました。

将来的には分かりませんが、今の時代は恵まれていると感じずにいられませんでした。

『蟹工船』は、以前聴いていたラジオ放送「メロディアスライブラリー」で紹介されてました。
読んだことがないので、機会を見つけて読みたいと思いました。

以上、ちえでした。
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