本当の芸術家
わたしは、この文の意味が、わかってなかったんですが、(『近代の呪ひと近代の超克』といふ記事が)成田亨氏の批判になってるといふ意味ですね。
わたしは、歳を取ると急に、日本の経済中心の物質文明を批判する人たちに呆れてゐるのです。そのことを書くために、成田亨氏の最後の詩を取り上げました。
戦後、民主化し自由化し個人主義の社会となった日本をさんざん享受して過去の日本を批判して生活費を稼いできたインテリたち。自分の死が見えたとたん、物質文明を嘆き出す。
それって、あなた、AV女優が誰にも相手にされないおばちゃんの身体になった途端、若い女の子に純潔(って死語?🤭)を説くみたいなもんぢゃないの、って。
成田亨さんの描くウルトラマン、怪獣、ほんとに美しいですね。
胸を突かれる美しさです。
テレビに登場した怪獣スーツは、あの悲しくなるやうな美しさがすべて脱落した結果に生まれた何か、といふ感じ。
美の脱落したスーツに大衆の人気が出て、成田氏が人に知られる芸術家となったと考へると、成田氏の晩年の嘆きはもっともだなと思ひます。
お前たち、ウルトラマン、ウルトラマンともてはやすけど、ウルトラマンのこと、なんにも分かってない
と叫んでゐるのだと、わたしには感じられます。
星から来た勇者 地球を救った勇者 永遠(とこしえ)であれ
君を利用し 金儲けをたくらむ地球人の為に
角をつけたり
髭をつけたり
乳房を出したりしてはいけない
スーツを着たり
和服を着たり
星空に向かってラーメンをかゝげてはいけない
経済と技術に溺れて了った地球人は 叡智と勇気を失って いま もだえ苦しんでいる
しかし 遠からず必ず不変の叡智を取りもどすだろう
君は星空の彼方から見とどけてくれたまえ
永遠の偶像よ
『ウルトラの原点』
と題された成田亨氏の作品集の表紙に次のやうなコピーがあります。
現存するどのような分野からもはみ出してしまったのは、彼が本当の芸術家であることの、消すことのできないあかしだろう
わたしは、同時代からはみ出さないでゐられる芸術家、社会に居場所を見つけられないことのない芸術家、といふものを想像出来ません。
本当の芸術家、とはどうしたってはみ出してしまふものだらうと思ひます。
けれども、別に、常に反逆のポーズを取ったり、ことあるごとに社会批判したり、ことさら奇異な言動をしたり、人目を引く服装をしたり、精神的に病んでゐることを聞かれもしないのに語ってそれを人並み外れた才能の証のやうにしたりする、かうしたステレオタイプの、実は、社会にすっぽりハマり込んでゐる芸術家のことを言ってゐるのではありません。
むしろ、日常的には小市民の仮面を被って社会の中に紛れ混みながら、
この時代のどこにも居場所が無い、
この時代の誰とも馴染めない、
と苦しんでゐる。それでも、やはり、周囲の人からは愛想の良い、無害な好人物と思はれて生涯を送るやうな人たちのことを言ってゐます。
成田亨氏は、そんな、本当の芸術家になれたかもしれない人だと思ひます。
もし、成田氏が本当の芸術家になれてゐたら、大衆であるわたしたちは氏の名前を知らなかったはずです。
同時代の本当の芸術家とは、そんな人たちだとわたしは思ひます。
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