見出し画像

前科のある若者をどう支えるか

私が彼と初めて出会ったのは半年前だ。
アパート管理をしている友人の紹介だった。
福祉関係の仕事をする友人は、自身の持つアパートに入居したばかりの男の子を私に紹介した。
男の子といっても、24歳の青年だ。
友人は私に、彼の生活支援(金銭管理や安否確認など)をして欲しいと依頼した。
最初の印象は、がっしりした体型とは真逆の、幼い話し方をする、愛想のいい子、だった。
それからすぐに住所変更と生活保護の手続きを一緒に行った。それによって、数年間で市内を転々としていること、生活保護受給が初めてではないことを知った。
訪問看護サービスを開始し、次の月には、障がい者支援担当者と、計画作成担当者と顔合わせができた。
それからは役割分担しチームで彼を支援できることになった。
彼には軽度知的障がいと、統合失調症があった。
過去に消費者金融から数十万の借金があることが判明し、
通帳は私が管理し、生活費は毎週手渡しした。
会うたびよく笑う、どこか放っておけない可愛らしい子、と印象が変わっていった。
そして、就労支援作業所に仕事が決まった。
仕事は楽しいです。友達ができました。工賃は少ないけど嬉しいです。
その子はいつも、にこにこして私にそう言った。
私が、何か困っていることはないかと聞くと、大丈夫です、と笑い返した。
仕事に慣れてきた頃、夜眠れないからと缶チューハイを1本飲んで寝ていると言った。
ストレス発散になるならそれもいいと思った。
そのうち、アパートのゴミステーションには、大量のチューハイの空き缶と、ウイスキーの空瓶が捨てられるようになっていた。
誰のゴミか特定できずそのままになっていた。
ある日、就労支援作業所の職員から電話が入る。
無断欠勤した、と。
アパートの部屋を見に行ったが、鍵がかけられ、エアコンも電気もついていなかった。人がいる気配がない。
毎日2回ドアをノックしに行った。
応答がないまま4日目、
弁護士から連絡が入った。
彼は、公然わいせつ罪で勾留された。
わいせつ罪は2度目、他にも窃盗、無銭飲食で逮捕された過去があった。
アパートで支援チームがいくつか関わりながら、自立した生活を送れていると思った矢先、半年後にまた罪を犯し、留置所に逆戻りした。

どうすれば再犯を防げたのか、いまだにわからない。
裏切られたような、うちのめされた気分のまま悔しくてならなかった。

何年か前に、研修かなにかで保護観察所の職員と話をしたことがある。
何回か罪を繰り返し何度も逮捕されてようやく更生できる人もいる。
一度の罪で反省できる人と、そうでない人がいる。
私たちは何回目でも更生を信じる。

私は信じてあげていたのか。
あんなにしてあげたのに、という自分のエゴではないか。
気持ちをうまく言葉にできず、お酒に走るしかなかった彼の思いをどうすればキャッチできたのだろうか。
障がいがあるから、と簡単に片付けたくはなかった。

18歳で親に捨てられた彼は、家を飛び出してからネットカフェや野宿を続け、生活費が底をつき借金と窃盗。
性欲の本能は理性が抑えられなかったのだろうか。

以前の記事にも書いたが、
私は性被害に遭ったことがある。
性犯罪は決して許されない。それが大前提であるが、
なぜその罪を犯したのか、それに至る経緯を知る必要がある。
犯罪心理と、罪を犯した人間のバックグラウンドを知りたい。

もしかしたらまた再犯するかもしれない。
だけど、みんなでまた支えたいと切望している。
私の独りよがりにならないように、彼の苦しみを知りたい。
ひとりにしない。
裏切られてもいい。
私は彼がいつか更生できる日を信じている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?