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摂食障がいのつらさを少しわかって、食べる楽しみを味わう

摂食障害、という言葉は私には無縁だと思っていた。

食は細くても食べることは大好きだった。
いつでも食べられるようにお菓子やパンは家に常備していたし、
通学の電車の中でも常にスナック菓子を友達と回し食べていた。

よほど高熱でも出ない限り、食欲が落ちることもなかった。
夜中に無性にフライドポテトが食べたくなってマクドナルドに走ったり、
衝動的に宅配ピザを頼んだり、
カロリーお化けも構わず摂っていた。

狂い始めたのは、夜勤のある仕事に就いてからだ。

15年ほど前、病院の介護職員として就職した。
精神科、脳神経内科の病院で、
夜勤は17時〜翌朝9時までだった。

フロアに看護師1人と介護職員が2人で夜勤をする。

当時のその病院の看護師さんはベテラン勢が多く、経験もプライドも高く、
新人の、しかも格下の介護職員には風当たりが強かった。

人の顔色を伺い、気にしすぎる特性の私は、夜勤が地獄のように辛かった。
日勤なら食事介助や入浴介助で、職員同士の煩わしさから逃れられる。
だが、夜勤は違った。
ナースステーションに、基本的に職員が詰める。
座る位置、仕事内容、会話、
全てに気を使う。
看護師の動きを察知し、邪魔にならない動きをしなければならない。
沈黙を好むのか、話しかけた方がいいのか、話しかけるならどの程度の話題が無難か、
神経を一晩中すり減らし続け、
もちろん入院患者に異変や事故のないように接するのは必須だった。

夜勤に入る前に、なるべく長く寝ていようと思うが、眠れない。
眠れないから夕方の勤務まですることもなく、
これから夜勤やだなー
そればかりが頭を逡巡する。
お昼ご飯を食べ始めると止まらない。
食べたくないのに。手が勝手に口の中に食べ物を入れる。
不思議と満腹感はない。
だけど胃は膨張して満杯だとわかる。
食べ続けて
家を出る少し前、嘔吐する。

夜勤前のルーティン。
幸い今は夜勤はしていないし、職場も変わり、ストレス喰いは治った。

ところが、
また変化が起きた。

昔、女癖の悪い彼と付き合い、そのたびに喧嘩や過度なイライラによって、
食事を受け付けなくなった。
お腹はすいている。なのにご飯を食べようと思うととたんに吐き気がする。
固形物は口に含むのも嫌になった。
水分だけは無理して流し込み、飲んだ半分くらいはもどした。
お腹が減っているのに食べられない。
食べることも怖くなる。

これが拒食か?

1週間水分だけで5キロ痩せた。
食べなきゃ痩せる。
当たり前のシンプルダイエット。
やつれただけの老化ダイエット。
おすすめできない。

栄養が足りてないのだから、
頭も回転しない。仕事に影響が出る。
ふらふらする。不眠。

摂食障がいは死に至ることもある病。合併症にも気をつけなければならない。
決して、ただの好き嫌いではないし、弱いから罹患するわけでもない。
心のストレスに向き合い、解決できなければ、
食べる、寝る、活動する、
基本的な人間の営みに支障をきたすことを知った。

食べる楽しみがひとつ奪われただけで、
こんなに生きる実感を得られなくなるとは知りもしなかった。
食べることは生きること。
好きなものを美味しく食べられることは、それだけで幸せなのだと実感して感謝して食事を楽しもうと思う。

今はさすがに、マクドナルドやピザはいけなくなった。残念。

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