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雪化粧した日の森のカラス  キーンの物語 #シロクマ文芸部

雪化粧した日の森のカラス  キーンの物語


雪化粧した山の中でカラスのキーンは、はしゃいでいた。

「わぁい!こうしていると憧れてた白い鳥になれたみたいな気がする」

しんしんと降る雪の中で羽をバサバサと振るわせ、高く飛んだりパウダースノーの雪の中でピョンピョン跳ね回って!
「カァカァ」と歓声をあげた。

森の陰の
ツワブキも南天も雪化粧していく


昨日から降り続いた雪は、何もかもを真っ白に変えた。
山々の樹々も、山の陰の南天も、ツワの葉も真っ白になっていった。

「やったー!これがおばあちゃんが言っていたことなのかもしれないわ!」


   ❄️           ❄️           ❄️


キーンは幼い頃を思い出していた。
小さい頃、キーンはカラスが嫌だった。

「私も白や黄色や青の羽がいい。
黒い羽なんて全然オシャレじゃないし…」
いつも、そう泣いては母さんを困らせた。
母さんカラスは悲しそうな表情で、しばらくキーンの話を聞いていた…。

やがて、くちばしを開いて優しく語りかけた。

「そうね…キーン。母さんも小さい頃、そう思っていたの…よくわかるわ。白鳥や白鷺さんのような真っ白な鳥に生まれたかったって…『カァカァ』大きな声で泣いたわ」

キーンは泣き止んで母さんの顔を、じーっと見つめていた。
母さんは続けて言った。

「でもね、キーン。昔、おばあちゃんは言ったの…『あら、カラスの私たちにだって魔法がかかる日があるのよ。それは大雪の日。白うさぎたちが雪に埋もれて、どこにいるかわからなくなってしまう日にね。私たちの黒いツヤツヤの羽に真っ白なキラキラの粉雪をまとったら森の中で一番オシャレな鳥になれるのよ!』ってね」
「ヘェー?!雪の?」
「そう!空から細かい雪が降って森が真っ白になった日にカラスの真っ黒な翼をバサバサしたら積もりたての粉雪がフワッと浮き上がるって言っていたわ。粉雪を浮かせて、浮き上がった時に羽いっぱい雪を浴びるの。
タイミングよくお日様が顔を出したら大成功。明るい日差しが差してきた瞬間、ダイヤモンドみたいに光るらしいわ。『真っ黒な私たちの羽だからこそ雪のダイヤは一等美しく輝く』って、おばあちゃんは言っていたわ」

母さんの話を聞いているうちに、さっきまで泣いていたキーンの目はキラキラと輝いていった。
「うわー、雪の日が楽しみ!」
「そうね、キーン。母さんも楽しみ!」
キーンは、お母さんにミミズの掘り方を教えてもらって夏を過ごした。
やがて、甘い柿の見つけ方、ヤマブドウ、やまなしが森のどんな所にあるかも教わった。
胡桃の食べ方も習った。
「いろんな物を食べるのよ…
そうしたら羽がツヤツヤになるから」


   ❄️           ❄️          ❄️


冬になった。


キーンが目を覚ますと森は真っ白になっていた。
キーンは目を見張って、あたりを見まわした。
「うわー、きれい!」
キーンは寝床から飛び出して、勢いよく真っ白な森の中へと羽ばたいた。


翼をバサバサして、パウダーみたいな細かい雪を巻き上げた。遊んでいると友だちカラスもたくさん雪の中へと集まってきた。
キーンたちは雪のかけ合いっこをしたりして、「カァカァ」歓声をあげながら、みんなでひとしきり遊んだ。


すると、その時だ!
雲間からお日様がちょうど顔を出して森に眩しい光が注いできた。
雪をいっぱいまとったキーンの翼は、まるでダイヤのスパンコールのように太陽の光を受けキラキラと輝いていた。


「黒い羽そのものの、『ありのままの』カラスの自分たちで輝いてるんだ!」
友だちカラスの翼や自分のキラキラ輝く翼を見ながら、
「カラスも悪くないわね」
生まれて初めて、そう思った。


         おしまい



小牧幸助部長さま、
企画参加させて頂きます。
毎回、素敵な企画をありがとうございます❄️


#シロクマ文芸部
#雪化粧から始まる話
#企画参加



[あとがき]

カラスにとっての「ありのまま」を考えてみました。
雪化粧の話から思い浮かべたのは、この曲です❄️


ディズニーの有名な「アナと雪の女王」から、
「ありのままの」

https://youtube.com/@DisneyUK?si=lpW5KK57W1j4ssNC

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