つぶやき随筆【白杖1~白杖30】のまとめ(冒頭に中書き②追記)

【白杖31】は、5/25(土)に投稿予定(o^-^)b ※随筆の最初fからお読みの方は【中書き②】を、途中から読まれた方はまとめも併せて、ご一読頂けると大変嬉しいです。
【中書き②】
 視力障害者として生活する中で、日々感じている事を【白杖】との題名を用い、『つぶやき』にて投稿した数が、もう30回に達したとは我ながら少し驚きます。
 内容は勿論、障害者になったからこそ実感するもので、健常者時代には全く想像出来ない体験ばかりですが、悲しい事象は少なくない。
 しかしお陰で、障害者側の気持ち、健常者時代の記憶、そして世話をして頂く方々の思いやりと気遣いに、触れたりする機会に恵まれました。
 そう考えると現在の私は、いくつもの視点を通して感じる世界が拡がり、人の優しさを慮る事が出来る状況は、不便な暮らしでは無く、豊かな人生を享受しているのかもしれません。
~・~・~
【前書き】
 この内容は、『note』に投稿するキッカケとなった『視力障害者あるある話』を綴っています。
 32年間過ごした健常者時代には当たり前と感じて来た事が、今はそうでは無い現実に直面しています。
 しかしそれを憂うのでは無く、前向きに生きて行きたいと、毎日の投稿を励んでいます。
 どうか一人でも多くの方が、障害者の方に声掛けして頂けると、本当に嬉しいです。

白杖1【現状を直視出来ない臆病者】
私は全盲では無く、左目は失明していますが、右目は少し見える弱視です。
左目を失明したのは20年前なのに、白杖を使う様になったのはこの10年。
白杖を何故10年も使わなかったかと言えば、弱視である自分の状態に抗い、健常者時代に対する未練でした。

白杖2【やはり騙され易い】
目か悪いと不便な事も多いけれど、良い面も有ります。
人を判断する際、見た目に引っ張られがちなところ、顔さえ識別出来ない私は外見に惑わされません。
声色や言葉遣い、考え方や価値観で判断する為、一目惚れはしませんが、その反面、優しく介助されるとイチコロ。

白杖3【せめて一声】
白杖を持っていると、駅で介助をして頂く事は多くて助かりますが、時々怖い思いもします。
電車が来て扉が開いた途端、無言で腕を掴まれ、車内へ引っ張られました。
何度か同じ様な経験が有る私は『目の悪い私への介助』と理解し、お礼の言葉を伝えますが、無反応だと不安。

白杖4【か弱き防護服】
白杖を持つ意味の一つに、『視力力障害者である事を周囲へ知らせる』が有ります。
もし白杖を持たずに点字ブロックを歩けば、周囲から気遣われる事は無く、誰も避けてはくれません。
しかし白杖を使っていても、週に2~3回はぶつかられ、白杖が飛んで行くのは辛いです。

白杖5【魔法の使えぬ杖】
新幹線と在来線が合流する駅は、通勤に加え観光の方も多く、通勤時は大変です。
点字ブロックを通っていても、その前を通り過ぎた方のキャリーカートが白杖を引っ掻けて飛んで行きます。
その際は周囲の方が拾ってくれますが、飛ばした方で無い事が多い様な気がします。

白杖6【通勤時の追い越し】
通勤で降りる駅の改札を出てすぐの通路は、道幅が狭く人の流れが激しい。
その通路の真ん中に有る点字ブロックを通っていると、右側と左側の激しい人の流れに挟まれます。
時に急いでいる人が追い越しをしようと通路中央部にはみ出し、私の正面に突然現れて驚きます。

白杖7【電車の乗車位置】
通勤時の電車では吊革を探して掴みますが、その際に私は優先座席の前に有る吊革を選びます。
それは座席を譲って欲しいからでは無く、普通の席の前に白杖を持った私が立つと、座っている方に余計な気を遣わせる可能性を考えるからですが、私の独りよかりかもしれません。

白杖8【ホーム設置の点字プロック】
駅のホームに有る点字ブロックは、電車が入る線路の手前ギリギリに設置され、通る際は怖い思いをします。
列の先頭で電車を待つ方が点字プロックの上に立っていると、膨らんで通る事も躊躇います。
だから線路に落ちた視力障害者の報道を聞いても驚きません。

白杖9【親切の声掛けは断らない】
白杖を持って駅の改札やホームに居ると、よく声を掛けて頂きますが、必要が無い時でも絶対に断らない様にしています。
それは、もしその方が勇気を振り絞っての初声掛けだった場合に断ってしまうと、二度と声掛けしてくれなくなるかもしれないと案ずるからです。

白杖10【可愛い障害者になってね】
かつて妻から言われたこの言葉に、当時の私は耳を貸さなかった。
『障害者は優しくされて当然』との傲りが有った様で、全くの思い違いです。
周囲の思いやりが有って優しくして頂けるのですから、今は『助けてあげたくなる障害者』になりたいと願っています。

白杖11【人の動きによる幻惑】
青色と赤色の識別が出来ない私は、信号を渡る際は工夫をしています。
ランプが右から左、下から上へと移動する動きや、同じ方向へ進む車の発進で判断したり等。
しかし個人の動きを信用すると、たまに実は赤信号で、私だけクラクションを鳴らされる羽目に陥ります。

白杖12【恩師からの叱責】
かつて介助される事が心苦しいと恩師に溢すと、「人を頼るのが問題では無い、あなたをお世話した方が『させて頂いて嬉しい』と思われなかった事が問題」とお言葉を頂きました。
だから今は介助された後、その方の幸せを願い、「また声を掛けて下さい」と笑顔で別れます。

白杖13【気を遣う対面通行】
数ヵ月に1度ほど、私が点字ブロックを通っていると、向かい側から白杖を持った方が来られる事が有ります。
全盲の方かもしれないので、私は必ず横へずれてその方に先を譲ります。
その時いつも、「全盲の方同士の場合はどうなるのかな?」と、思いを巡らせています。

白杖14【下り階段は苦手】
階段は上りより、踏み外すと転げ落ちる可能性が高い下りは怖く感じます。
微かな視力で階段の終わりを判断すると、また段が残っていて、痛い目に遭った事も有りました。
だから下り切ったと思っても、「1、2」と声を出して両足を揃え、片方の足でまさぐり確認します。

白杖15【手を握られ、ポっ】
通勤時に突然、スーツケースを持った方が横からぶつかって来て、反動で眼鏡が吹っ飛んだ。
立ち尽くす私に「ソーリー」と言い、彼女は私に眼鏡を渡した後、両手で私の手を握る。
私は頬を赤らめ「ノープロブレム」と笑顔で応えた。
その夜、眼鏡からレンズが落ちた。

白杖16【威嚇する様に舞う白杖】
地面に白杖を叩き付け大きな音を立てながら、点字ブロックを通る方に驚いた事が有ります。
しかし自分が白杖を使い始めると、そうせざるを得ない心情を想像出来る様になりました
きっと周りが自分の存在に気付かず、辛い思いで傷付いた魂が叫んでいたのだろうと。

白杖17【代わりに備わった能力】
視力や視野の激減を補う様に、神様は私に暗記力を与えて下さいました。
仕事で掛ける得意先や役所の電話番号数十件は、電話帳登録しないで何も見ずに番号を押しています。
ただ、生保の証券番号や銀行の契約者番号まで記憶している私は、少し異常かもしれません。

白杖18【振り上げた拳】
歩道を歩いていて、向かいから来た男性とすれ違う際に、腕と腕がぶつかった。
次の瞬間、男性は振り返りながら「どこ見……」と言い掛けたが白杖に気付き、隣の女性が止めた事も有り、男性は無言で去って行く。
もし白杖を持っていなかったらと想像すると、冷や汗タラり。

白杖19【譲られた時の振る舞い】
電車で席を譲られた場合、私は座る前と後に声を出してお礼の言葉を伝えます。
その後、携帯電話を絶対に触らないのは、相手を不快にさせないと同時に、その方の立ち位置を確認する為。
もし近くに居て私より先に降りるなら、再度お礼の言葉を発するのが私の心得。

白杖20【泡と消ゆ束の間の幸せ】
スーパーでの買い物をする際は周囲に迷惑を掛けない様に、買う物を予め携帯電話に記録して臨みます。
何とか会計を済ませ、予定のバスに間に合うと、深い安堵の溜め息を付きます。
しかし帰宅して、カゴの中へ豆腐を残して来た事が判り、酷く落ち込んだりします。

【中書き①】
 現在、私の目の状態ですが左目は光も感じない完全な失明状態で、右目は視野は狭いものの少しは見えています。
 ただ片目しか見えないので距離感が正確に掴めず、油断すると電柱や開いたドアに顔から突っ込み、痛い思いをしたり。
 昨日も病院で勘違いをして入る筋を間違え、5段有る下り階段に気付かず、右膝が床にダイレクトの落下。
 それでも奇跡的に、こうして投稿が出来るくらいの小さな怪我で済んだ事を思うと、まだ命の灯は消えない様です。

白杖21【知らずのご無礼】
点字ブロック設置は個人の方が私財を投じて始められたと、TV 番組で解説していました。
公共物だから当然、国や自治体が費用負担していると思い込んでいました。
その起源が判れば、利用料も払わず使う私は、感謝が全く足りておらず、恥ずかしい程に申し訳ない限り。

白杖22【次世代の担い手】
優先座席の吊革を持とうとしたら、「代わります」と席を譲られ、お礼を言うと「すみませんでした」と意外な言葉。
すぐに席を立たなかった事を謝られた様でしたが、恐縮します。
向こうでも「すぐ降りますから」と、ご婦人へ声掛けをする姿を見て、日本の若者に期待大。

白杖23【神様のご加護】
先日、病院内から接続した検診施設へ移動の際、通路を1筋間違えた事に気付かぬまま急ぎ足。
次の瞬間、私と白杖は宙を舞い、5段下の地面に叩き付けられました。
落ちた高さと飛んだ幅を、後で恐る恐る確認して驚きましたが、賜りしお導きは痛み有れども骨折せずの奇跡。

白杖24【無頼の助っ人】
ホームで待っている隣で、若者が言葉遣い荒く電話していて、少し怖い。
着いた電車は満員で、優先座席の前に立っても誰も知らん顔は、毎度の事。
すると先程の彼が「誰か代わってやれよ」と庇ってくれれたので、人は先入観で判断してはいけないと、私は心に強く誓いました。

白杖25【忍び寄る金属の箱】
私が運転していた頃はミッションが主流で、オートマがまだ稀な時代でした。
最近は電気自動車が持て囃され、町で見掛ける事が増えましたが、私はかなり苦手です。
音や気配で危険を察知する私の背後に回り込み、気が付くとすぐ傍らに居たりして、背筋が凍るからです。

白杖26【悪気無き囁き】
電車で席を譲ってくれたご婦人が連れの方へ、「私も腰が痛いけど若い人が代わらないからね」と仰られた。
「大丈夫です」と慌てて立ち上がろうとすると、彼女に押し止められる。
近くに座っている女性に分からせたかった様だけれど、聞かされるこちらは居辛くなりました。
白杖27【昨日の友は今日の敵】
陽が昇る前の早朝、バス停へ向かう路地を通る際、私は道の中央に有るマンホールを目印にしています。
何故なら端に寄ると、両側に建つ家の植木鉢等に当たったりして、怖いし危ないからです。
しかし雨の時は要注意で、迂闊に踏もうものなら、滑って転んでさあ大変。

白杖28【念ずれば通ず】
バスでは毎回、乗れば挨拶を降りる際は「ありがとう」と声に出しています。
先日は下車後に停留所前方へ進み、運転席の横に差し掛かった時、感謝を込めてお辞儀をしました。
すると「お気を付けて」との言葉が扉越しにマイクを通して響き、思いは伝わるのだと、ほっこり。

白杖29【絵に描いた餅】
先日、丼鉢に生卵を割り入れる際、溢さない様にと慎重な姿勢で臨みました。
綺麗に割れたなと安心した次の瞬間、床に落下した音に驚き、見ると無惨にも液状化。
手元にばかり気を取られ、器の位置を勘違いした過ちにより、貴重な蛋白源は雑巾が摂取する結末を迎えました。

白杖30【魔法の呪文】
通勤時、優先座席の前でいつもの如く立っていると、真正面の方が立ち上がった。
そこで注意深く手で場所を確認しようとすると、横から男性が滑り込む様に座り、私を見てしたり顔。
こんな時、心の中で「お先にどうぞ」と唱え、目を閉じるとあら不思議、感情は波立ちません。

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