週末のピスタチオ

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最近の記事

「ノーマル・イン・ジ・アブノーマル」

横道誠著「創作者の体感世界 南方熊楠から米津玄師まで (光文社新書)」読了。博覧強記の研究者で知られる南方熊楠から天才アーティストの呼び声高い米津玄帥まで、古今東西のクリエイターを取り上げ、その才能の秘密を生い立ちや先天的な特性と絡めて掘り下げた1冊。 米津玄帥をはじめ、誰もがその名を知る著名人の生い立ちを徹底的に深掘りし、知られざる1面に焦点を当てたところは素直に面白い。「君死に給うことなかれ」で知られる歌人・与謝野晶子の猛女ぶり(死語か?)が発達特性によるものだという考

    • 「新たな挑戦の話」

      四十にして惑わず……とはよく言うが、今年で36にもなろうかというのにここのところ若干迷走気味である。 現状を少しでも変えなくては……ということで、新しい分野に足を踏み入れることにした。 まずは、株式投資。今年の初めから証券口座を開設し、ネット上で取引を行うことにしたのである。当初はデイトレード(株を1日単位で売買する方式)にチャレンジしようと思っていたのだが、シェアハウスでの生活リズムの都合上、1日中パソコン画面の前にじっと貼りついているのは難しく、やむなくスイングトレー

      • 「コンビニでの風景」

        1人でコンビニに買い物に行くと時折、「おやっ?」と思う店員に出会うことがある。 その日はターミナル駅に入っている大手コンビニチェーンに立ち寄ることにした。 週に数回は利用する、「行きつけのコンビニ」だ。 いつものように雑誌と菓子パンを車椅子のサイドポケットに入れ、レジに向かう。 それほど混んでいなかったため、すぐに呼ばれる。 見慣れない顔の店員だった。色白でやや童顔の女性。20代前半だろうか。 「次の方どうぞ」 私のほうを見ているのかどうかわからない目線で、彼女

        • 「私的ボランティア論」

          気まぐれに、note を更新してみる。 脳性麻痺(アテトーゼ型)という先天性の身体障害を抱えている私は、情報系の専門学校を卒業した20歳の頃から大学生ボランティアを募り、ガイドヘルプ(外出補助)を頼んでいた。 もともとは、専門学校を卒業して毎日両親と家にこもりきりなのも難だから……という理由で学生ボランティアを探しはじめた、というのが本当の動機だった。いわゆる作業所(今でいう就労支援施設)も両親といくつか見てまわったが、作業内容やコミュニティの雰囲気が何となく肌に合わず、

        「ノーマル・イン・ジ・アブノーマル」

          「気まぐれドラマレビュー」

          久しぶりに、地上波の連ドラを見た。 フジテレビ金曜夜9時「イップス」。篠原涼子・バカリズムがタッグを組むという、夢のような豪華ドラマである。「刑事コロンボ」、「古畑任三郎」の系譜を受け継ぐ倒叙型ミステリー(犯人が最初にわかるミステリー)である点も興味をそそられる。 ただ、そのうえで第1話をチェックすると……いささか期待はずれだった印象が否めない。 以下、その理由を簡潔にまとめてみた。 1、 犯人に魅力がない 「古畑任三郎」は犯人役のラインナップが大きなキーポイントで

          「気まぐれドラマレビュー」

          「車椅子が壊れちゃった」

          電動車椅子が壊れた。 少々古い話だが、せっかくなので備忘録程度に書き留めておきたい。 より厳密に言えば車椅子のジョイスティック(操作する部分)がつなぎ目からボキリと折れ、使い物にならなくなってしまったのである。 私の場合、標準のジョイスティックでは短すぎて捜査が安定しないため、付属品の長いスティックを後付けで購入し、もともとの軸にねじでつなぎとめる形で固定していた。 標準のスティックのままであればそもそもつなぎ目が存在しないから、少なくともスティックがボキリと折れるこ

          「車椅子が壊れちゃった」

          「早すぎる追悼」

          また1人、大切な先達を亡くした。 彼女は、ひーちゃんと呼ばれていた。通っていた中学校の担任の知り合いという、本来ならばなかなか結びつかないような距離感なのだが、私が重度身体障害者ということもあり、ひょんな流れから引き合わせてもらうことになった。 担任としては、当時から親元からの独立を考えていた私に「こういう先輩もいるよ」という感じで紹介したかったのだろうと思う。 紹介されて間もなく、講演会の講師としてひーちゃんが中学を訪ねてくれた。ひーちゃんは当時、大学4年生。確か、国

          「早すぎる追悼」

          「2024年度のオールナイトニッポンに思うこと」

          ラジオでも新年度が始まった。Webライターという職業柄、ラジオは私にとって切っても切れない暮らしのキーアイテムである。 オールナイトニッポンも新年度に入り、新パーソナリティがひと通り出揃った。 オールナイトニッポン、およびオールナイトニッポンZEROの2024年度パーソナリティは以下の通り。 (オールナイトニッポン) 月:山田裕貴 火:星野源 水:久保史緒里(乃木坂46) 木:ナインティナイン 金:霜降り明星 土:オードリー (オールナイトニッポンZERO) 月:

          「2024年度のオールナイトニッポンに思うこと」

          「突然の御報告」

          noteを再開することにした。 どうでもいいことだろうが、一応報告しておく。 なぜまたこんな中途半端な時期に……と思われるかもしれない。 これといった理由は特にない。 ただ、「今始めておかないと永遠に始めるタイミングを失うから」という気持ちは、半年ほど前からどこかにあった。 だからといって、以前のように毎日更新にこだわるつもりはない。 1年ほど前は特に理由もなく「毎日note」にこだわっていたが、そうすると記事をアップすることそのものが目的化してしまい、いつしか記

          「突然の御報告」

          初の試み

          スマートフォンからnot eを作成してみた。 初の試みである。何よりもまず、書きにくい。 フリック入力にもともと慣れていないせいだろう。 心なしか、目も疲れてきた。 ということで、今回はここまで。

          「重度身体障害者が見た(平成)」

          清水真人著「平成デモクラシー史」読了。1989年から2019年まで、31年にわたって続いた平成という時代を主に政治と民主主義の視点から綴った1冊。 政治の視点から綴られているということで、自民党の成り立ちから連立政権の歩み、民主党政権の凋落まで、平成以前の政治史についても網羅されており、読むだけで教科書的な知識が身につく。 私にとっての平成は、幼少期から思春期そのものだった。高校に入学する年にちょうど支援費制度(障害者自立支援法の前身である)が施行され、さらに成人してWe

          「重度身体障害者が見た(平成)」

          「赤ちゃんポストと銃社会」

          森本修代「赤ちゃんポストの真実」読了。熊本県内で初めて設置され、メディアでも大々的に取り上げられた赤ちゃんポストの是非を成立の過程から丹念に追いかけたルポルタージュ。 基本としては中立かつ客観的な視点から赤ちゃんポスト設置の経緯が綴られているが、文章の端々から赤ちゃんポスト否定はであるという雰囲気が伝わってくる。 もちろん、いたずらな感情論から否定するのではなく、赤ちゃんポストと行政の関係をふまえたうえでの批判なため、一読の価値がある。データと客観性に支えられた建設的な批

          「赤ちゃんポストと銃社会」

          「映画好きがちょっぴり気になるR問題」

          サブスク(主にネットフリックス)で映画を観ていて、時々気になることがある。 「R問題」だ。 すべての映画には年齢によるレーティングが設定されており、内容によっては観られる対象が制限されている。 たとえばR18作品なら、18歳以上でなければ見ることができない。 ネットフリックスではR16+、R13+などの形で対象年齢が設定されている。 私の感覚としては、13+で男女の下着姿や肌の一部がチラ見えする程度、15+でフルヌード、18+でかなり本格的な性描写が映される、という

          「映画好きがちょっぴり気になるR問題」

          「介護現場の無視できない違和感」

          障害当事者という形で介護福祉の現場に身を置いていると、しばしば「無視できない違和感」に出くわすことがある。 その1つが「便失禁」だ。 本来便失禁とは、障害や病気によって排便コントロールが難しくなった障害当事者が不規則なタイミングで便を漏らしてしまう状態を指す。 排便のタイミングだけでなく便の色や形状にも異常をきたすため、慢性的な便失禁に対しては運動療法や食事療法など、さまざまなアプローチがとられることが多い。 一方、最近の介護現場では「名ばかり便失禁」がはびこっている

          「介護現場の無視できない違和感」

          「重度身体障害者の(利き手)問題」

          脳性麻痺という身体障害を抱えて長いこと生きていると、障害についていろいろな意味で誤解されていると感じることが多い。 その1つが「利き手問題」だ。 脳性麻痺についての過去記事は以下の通り。 ADLがきわめて低く、両手の機能がほぼ失われている私にも、一応「利き手」はある。 普段、電動車椅子を操作したり、PCで原稿を書いたりする際は右手を使う。そのほか、長時間の作業が求められる場面では99%右手を使うから、私の利き手はおそらく右手なのだろう。 右手に比べると格段に麻痺が強

          「重度身体障害者の(利き手)問題」

          「ちょっとだけほっこりする話」

          重度身体障害者の身で1人で外出すると不愉快な思いというか、心が削られる経験をすることも少なくはないが、何気ない優しさに心がほっこりすることも多い。 まずは、駅。 電車に乗る時はいつも、サービス介助士の資格を持った駅員に改札からホームまで案内してもらうのだが、季節の変わり目などに「急に暑くなりましたよねー」なんて声をかけられるとやはり嬉しいし、こちらも自然と笑顔になる。外出が比較的短時間の日は行きと帰りで案内のスタッフが同じだったりすることも多く、「お出かけ、楽しかったです

          「ちょっとだけほっこりする話」