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図書館司書に転職は難しい
プロフにも書いている通り、私は15年あまり主に大学図書館で目録係として働いていました。目録係、というのは図書館業務の裏方、縁の下の力持ち、要するに図書館が所蔵しているあらゆる資料のデータベースをちまちまと根気よく、一件ずつ作成してゆくお仕事。このデータベースがきちんと整理されていないと、端末で検索したとき利用者が探している資料をスムーズに探し出すことができない訳で、決して目立たないというか一般の方には存在さえ知られることはありませんが、実は図書館の根幹を成している、と言っても過言ではない非常に大事な仕事だと思います。恐らく、世間一般の方が司書と聞いて連想するイメージは十中八九、カウンターに座って利用者の対応にあたる職員だと思いますが、あれは閲覧係、というお仕事。図書館の顔であり、いわば接客担当です。私は対人恐怖症なので、一度も閲覧係は務めたことがなく、再三やれと言われても頑強に拒否し通しましたが、今は人手不足の時勢でもあり、そういう分業化をしっかりしている図書館はどんどん少なくなり、図書館の仕事全部やれ、と言われる恐怖の丸投げ方式のところが増加の一途をたどっています。つまり一人の人間が接客もデータベースの作成もレファレンスという非常に専門的な、資料を探す利用者の個別相談に乗り、必要があれば外部の研究機関や専門家と連携して資料を取り寄せる・・というお仕事も書店に本や雑誌類を発注し、会計処理をする受入というお仕事も、全部やるということです。ひどい場合だとこれに更にプラスして、大学の事務員としての雑務も山ほど押し付けられます。それで大体、時給は千円ちょっと、もちろんボーナスなんて、見たことも聞いたこともない、はるか異次元のお話。そして、身もふたもない話ですが日本では司書はごくごく一部の幸運な星の下に生まれた正規職以外、使い捨て前提なので数年で切られます。仮に、上記の山のような仕事をすべて完璧にこなし続けるスーパー派遣社員、シーサーちゃんのようなスーパーアルバイターだったとしても、関係ありません。あなたは優秀だから、頑張ってくれたから、正規に・・などどいう希望に満ちた展開は私が知る限り、おとぎの国の夢物語です。どんなに優秀でも、汗水垂らして何年も真面目に働いても、契約が切れたら問答無用で追い出されます。
「そんなのは嫌だっ!私はこの仕事を、職場を心から愛しているんだ!もっともっと、ここで働かせてくれっ!」
と、激しく抵抗しついには訴訟まで起こした同業者の方が、私が某国立大学に勤めていた時にいらっしゃったのですが、大学側は徹底的に冷酷でした。はあ?お前もう用済みなんだよ!つべこべ言わず、とっとと出て行け!といわんばかりの態度でした。語弊があるかもしれませんが、いつまでも居座ろうとする図々しい野良犬をたたき出す、とでもいいましょうか。傍から見ていて、ただただ気分が悪かったのを5年以上経った今でもはっきりと覚えています。その人が在職中、どういう働きぶりだったか改めて評価してみる、という発想自体が大学側には全くない、つまり人間扱いしていないし、それが悪いとも思わない、人間を使い捨てるのは、彼らにとってあまりにも当たり前のこと、すぎるのです。結局、その人は地方裁判所では敗訴し、上告したようでしたが、最終的にどうなったかまでは私も分かりません。
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