宇宙軍3(ビシッと)

輝は部屋に戻り、目覚まし時計をセットする。少しの時間だけ眠り、シャワーを浴びる。
腰にサーベル、髪をあげ、ワックスで固め、軍服に腕を通す。
文句の言いたいとこは沢山有るが、これも、次の艦員募集のために仕方ないのかとも思う。若者は格好に憧れて入ってくる者もいるぐらいだし。これも、宣伝のために折れよう。
全然着ていないから、クリーニングから戻ってきたばかりのように、綺麗だった。
そして、目深に帽子をかぶり、濃いサングラスをする。顔を隠せる格好で、きっちり決める。いつものことだ。そうしてビッシリと決め、コックピッドに戻る。
戻ると、冬眞は、早速言う。
「そうしてると、毎回、思いますが、全然いつもと違いますね。年齢も普段より2、3歳は上に見えますよ」
「って、普段は、お前には俺がいくつに見えているんだよ」
「えっ、僕とそう変わらないんじゃないんですか?」
「って、お前いくつだっけ?」
「えー、覚えてないんですか?」
不満げに言う冬眞に輝は言う。
「嘘だよ。26歳だな。俺より、2歳上だから、覚えているよ」
「えー、艦長って、僕よりも年下何ですか?」
凄く冬眞は驚く。
「お前、俺をいくつだって思ってるんだよ」
それを聞き、不機嫌そうに輝は聞く。
「僕よりも1、2歳上だと思ってましたよ。一体、艦長っていくつから、軍にいたんですか?」
「えっと、いくつだったかな、忘れたよ。ま、ここに来るまでにいろいろな部署に行ったしな」
「艦長って、凄いですね」
冬眞は感心する。
「惚れるなよ、私にそんな気はないからな」
「ご安心を、私にもそんな趣味はありません」
「ビクらせるなよな」
「いつもそうしていれば良いのに、少しは艦長らしく見えますよ」
「別に、見せる必要はないだろう? 誰かに見せるなら別だが、こんな動きにくい服ごめんだね」
本当にイヤそうに言う。
「艦内放送をかけろ。もうすぐ、停留地に着くと。もし、艦から、降りるなら、自分で宿泊施設を確保しろと言っておけ。あと、降りたら、自分は軍人だと頭に入れて、節度ある行動を取れと言っておけ」
「わかりました」
そう言って、冬眞は艦内放送をかける。
こうして、乗り込む、いえいえ、訪れた先は小さなのどかな星だ。ここで、給油するのが目的だ。だから、滞在期間は給油が終わるまでの2日間と言うことだ。
長すぎると、輝は思った。こんいたくなんかないぞ。輝には、ここにいたくない理由があった。
それは、あいつがいるからだ。こんな辺境に引っ込んでいるのも、遠くから母星を見守るためだ。
あいつは、ことあるごとに、輝を引っ張ろうとする。やっかいこの上ない相手だ。
だから、降りる前に冬眞にも注意する。
「ここの主に何言われてもいいえと言え」
「それってなぜですか?」
「そのぐらい迷惑な奴ってことだ。一瞬、たりとも気を抜くな」
「はぁ~」
訳が分からず、それでも冬眞は返事をする。
そして輝とともに、船から、降りると、熱烈な歓迎が待っていた。思わず、冬眞は引いた。
「会いたかったよ~。輝君、ようやく、僕の思いを受け入れる気になったかい?」
「なるか?」
輝は右腕一本で、どうやっているのかブロックする。
それを、見てすごいと冬眞は思ったのだった。また、別の意味で、この相手も艦長に向かっていけるなんて、ある意味すごすぎると思った。
「相変わらず、お前は腑抜けだな。あっ、冬馬。こいつがさっき言っていたこの星の主の小早川卓也(コバヤカワタクヤ)だ 」
「よろしくお願いします」
冬眞は頭を下げる。すると、主は手をあげてそれに軽く答える。
「はい。よろしく。上に立つものはこのぐらいで丁度良いのさ。そうだとは思わないかい、えっと? 冬眞君」
急に振られ、冬眞は考える。確か、鑑長は言っていた。確か、全てに否定しろと。だから、否定する。
「確かに、上が抜けている方が、下はいろいろやりやすい。だって、下は行動に移した時、バレる心配が要りませんから、行動しやすい。でも、それでは下は何も成長しませんよ」
「そうかもね」
「だけど、艦長が抜けていては、自分が成長出来る機会を逃してしまいます。成長したいなら、厳しい艦長が良いのかもしれませんね」
「君の言葉は的をいている。成長を望むなら、厳しい艦長が良いのかもな」
「ええ、家の艦長は仕事に関しては、いつも凄く卒がないです。だから、何処かで気を抜かなければ、疲れてしまいます」
アハハハハと小早川は笑う。それを聞いて、輝は憮然とし、文句を言うように、言った。
「それは、評価しているのか? いないのか? どっちだ?」
それに、答えたのは主だった。
「つまり、君は艦長を評価していると」
「ええ」
「この子いいな。きちんと見てるよ君を。君の代わりに、彼を頂戴」
「断る。そいつは、私の大事な部下なんだ。欲しいなら、他を当たれ」
それに、冬眞は感動したように輝を見る。
「残念」
そのとき輝の、眼差しが変わり腰のサーベルを手にし、主を庇うように立つ。その時に、いつの間にか拳銃を小早川に構えていたSPの男に、冬眞は初めて気付いた。それに、気付いた時には艦長は、拳銃をたたき落とし、SPだった男に馬乗りになり、男の顔の前にサーベルを突き立てる。この時、冬眞は初めて知った。輝のサーベルは本物に改良してあることに。
「お前は、こいつを知っているか?」
主に聞く。
「ああ、多分、今隣の星がきな臭い。そこの誰かの差し金だろう。ここが一番、我らの世界が監視できるからな」
「そうか? じゃあ、殺すか?」
「いや、聞きたいことがあるんでね。こちらにもらえれば、ありがたい」
「ああ、いいぞ。持っていけ。ただし、俺にも立ち合わせろ。得られた情報が私も欲しい」
そう言って、彼を渡す。
「君になら良いよ。やはり、さすがだね。お前を欲しいよ」
「寝言は寝て言え」
こうして始まった停泊地での生活。なんだか、波乱がありそうだ。冬眞は、滞在期間を思い、ため息を付く。確かに艦長の言ったとおりだが、もの凄く、いずらいぞ。と、そう思う冬眞だった。そして、ここで初めて気づく事があったがそれはまだ先の話しです。

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