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世界にひとつだけの民

地方に住んでいて切実に感じるのが、少子高齢化だ。
人口動態(一年間の人口の変動)からみればさほど大きな変化はなくとも、今の高齢世代がいなくなれば、地域の総人口は激減する。

今年62歳になる僕が、まだ若い方なのだ。ご近所も70代から80代が中心。
仮に自分が今の男性の平均寿命まで生きるとしてあと20年、そのころ地区の人口は、今の20~30%程度にまで減少しているんじゃないか。

新しく、「消滅可能性自治体」の一覧が発表されている。これでみる限り、わが静岡市は該当していない。

ただし、全国の政令指定市で最も人口が少なく、人口の減少率も高くなっている静岡市では、他の指定市に比べて、女性人口の減少率の高さと婚姻率の低さが顕著だ。
市内の15~49歳の女性人口は、2000年の約16万5700人から20年には約12万7900人に減っている。
20年の総人口に占める15~49歳の女性人口の比率も、大都市の多くが20%を超えているのに対し、静岡市は18・4%と、北九州市の18・0%に次ぐ低さになっている。

市は婚姻率が低い背景として、「若者が結婚や子育てを思い描けない」「賃金の引き上げや雇用の安定化」「働き方の柔軟化」などを挙げている。
確かにそれらも要因の一つだろうが、では生活が安定し、将来に希望が持てれば婚姻率は上がり、少子化に歯止めがかけられるのだろうか。
そうは思えない。

国立社会保障・人口問題研究所が18~34歳の独身者に「独身にとどまっている理由」を聞いたところ、18~24歳の若い年齢層では「まだ若すぎる」「仕事(学業)にうちこみたい」「まだ必要性を感じない」などが選ばれた。
25~34歳の層では、「適当な相手にめぐり会わない」という理由が最も多く、「まだ必要性を感じない」や「自由さや気楽さを失いたくない」というこれに理由が続く。
「自由さや気楽さを失いたくない」に至っては、若い年齢層よりも多く選ばれているのだ。

女性の(否応もない)社会進出により、結婚して夫の稼ぎに頼る必要は、必ずしもなくなった。
むしろ生活の大半を占める会社勤務のハードさに加え、さらに出産・育児をこなすなど、女性からすれば負担が大きすぎると考えて不思議はない。
両親と同居しているケースであれば、家賃もかからなければ炊事・洗濯・家事全般に至るまで親がやってくれる。給料は光熱費や養育費にもならず、プライベートで使いたい放題だ。
わざわざ家を出て苦労しようなどと、思う方が少数だろう。

一方で女性には、妊娠の適齢期が厳然と存在している。
不妊症の頻度は(ある調査で)20~24歳が7.0%程度とされ、それが30歳になると徐々に増加し、40~44歳では28.7%と4倍にまでなる。
流産の確率は、35歳未満の妊婦を起点にした場合、35~39歳で2.0倍、40歳以上は2.4倍と増加し、染色体異常児はそれぞれ4.0倍、9.9倍まで増加する。

いかに女性のライフスタイルや意識が変化しようと、身体的な構造まで変化するわけではない。
2010年・ESHRE(欧州ヒト生殖学会)の調査では、30代以上の日本人女性における妊娠と年齢の関係について、およそ7割が知識の欠如を認めたと報告されている。
これは欧米の2-3割に対し、圧倒的に多いパーセンテージである。
「閉経するまでは妊娠可能」と思いこみ、産婦人科に来院するカップルも少なくないんだとか。

ならば、2007年より内閣府特命で任命されている少子化対策担当大臣というのは、これまでどういう対策を打って来たのか。
まったく成果を生まないどころか、少子化は加速度的に増加傾向にある。加えて現役の大臣は、子育て支援を眼目に現役世代から新たな税金をとりたてるという。もはや少子化”推進”担当大臣に、看板をかけ替えるべきだろう。

もちろん女性には、子供を産まない権利も自由もある。
産みたくても産めない人や、経済的に困難という方もおられるだろう。各々の立場を非難するつもりは、毛頭ない。
一方で、「産む」女性がマジョリティとして存在し続けなければ、日本人という民族が絶えていくのは、理念や情緒でなく自明の理である。

宗教上の理由から避妊を忌み嫌い、子供を産む数もサイクルも日本人と異なる、たとえばイスラム圏の人たちを移民として大量に受け入れたなら、日本国で日本人が少数民族になる日も遠くない。
我々日本人が少子化していくのに反比例し、どんどん家族を増やし、同じイスラム教徒としか婚姻を結ばない人たちでは、年を経るほど人数や立場が逆転していくのは、火を見るより明らかだ。
ここは原点に立ち返り、少子化対策も人手不足も、日本人が主体となって解決すべき問題と認識すべきである。

このまま頭の中のお花畑が続けば、世界に一つの花も残せない未来が待っているかもしれない。
そのためには、子供を産み育てることが人間にとって最も崇高な役割であることを、社会全体でしっかり再認識することだ。
専業主婦を一段下に扱うアホな風潮を改め、お母さんが子育てに専念する間、お父さんの給料だけでやりくりできるほどに、自国経済を立て直すことに傾注すべきだ。

分断された個人のままでは、日本の少子化や衰退は、今後も続いていく。
国が豊かになり、自分たちの生活がうるおう事に反対する人はいないだろう。その大きな目標のため、せっかく生まれ育った地域や国に対し出来ることは何か、自分の足元から考えてみる必要がある。

世界に一つだけの花になるよりも、世界に一つだけの国の民として、どこよりも大輪の花を咲かせたいもんである。

イラスト hanami🛸|ω・)و


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