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それについて考えよう

現役のころは行政との関わりなんて、年に1度の入札くらいだった。年間の委託業務に自社の数字を書いてはこに入れる。最低価格なら残ってそのまま打ち合わせを行い、落札できなければ速やかに退出する。
あとは落札した先(現場)とのやりとりで、先方の特性なんて気に掛けることがなかった。
それが最近、行政と日常的に関わる機会が増えたことで、民間との違いに改めて思い至るのだ。

彼らの姿勢に共通しているのは、徹底した前例踏襲ぜんれいとうしゅうであることだ。たとえささやかな課題を前にしても、少しでも冒険しようという意識が皆無である。

月の半分は通っている生涯学習交流館でX(Twitter)を始めていて、アップするネタのお手伝いをしている。
僕が撮った写真と140文字以内の記事を担当職員に提供し、交流館で責任をもってアップしてもらう形だ。
利用率が高い施設で、たとえば音楽サークルに限っても6つ、ダンスの関係で3団体というように、同じ趣味で集まる人たちの多さに驚かされる。他の交流館でも、ここまでのところはないそうだ。
ホールや調理室、和室など含め6室ある大小の貸しスペースが、午前・午後・夜の3つの区切りで使われている。平均稼働率で、70%以上はありそうだ。

これまでだと、部屋の鍵と必要書類を渡せば、中で何をやっているかまで交流館ではノータッチだった。
今回、X(Twitter)に載せるので写真撮影と取材をさせてください、そう頼めば皆さん、喜んで応じてくれる。もう少し更新の頻度が高まれば、けっこう認知度を上げられるはずだ。

交流館には図書室もあって、市立図書館の規模ではないものの、それなりに蔵書がある。さすが地元の郷土資料に関して強く、ここ以外ではまずお目にかかれない古書も充実している。

貸し出しを行っているので、これを写真に撮ってX(Twitter)用の原稿にした。さっそく担当の女性がアップすると、翌日には10数件の「いいね」や、「リポスト」まで付いている。交流館を利用しない人にとって、図書室があること自体が新しい情報になるわけだ。

ところがこのX(Twitter)を目にした館長さん、即座に記事を消してしまった。
などと書けば融通ゆうづうの利かない偏屈オヤジを想像しそうだが、むしろたいへん温厚で、穏やかな方である。
絵本やベストセラー小説、郷土史など、僕はサンプル的に手前に並べて室内の様子を撮ったのだが、特定の作品や著者名を出すことが、よろしくないと判断されたそうだ。
「民間だったら問題ないんですけど」そうおっしゃられる。
なるほど、そういう基準で公的施設は運営されていくのか。

別にその措置に、腹を立てたわけでも不快になったわけでもない。単純に、「面白みに欠ける」と思ったまでだ。
写真1枚のみで何かを伝えるなら、情報よりもイメージである。そこに行けばこうしたたぐいの本があるんだな、意外と充実しているななどと大まかな印象を持ってもらえれば、発信側としてまずは成功である。
図書室の遠景のみでは、読みたい本や探したい資料があるのかX(Twitter)を見た人には不明なままだろう。
致し方ない。それ以上に近づこうとすれば、「前例のない」踏み込んだ表現になってしまうというわけである。

安全運転を心がけるのは、間違ったことではない。ただし30㌔指定の一車線道路を30㌔きっちりで走っていたら、急ぐ後続車がどんな動きにでるか、分かったものではない。
それを一概に「安全」とは呼べない。現実的には、”常識的”な速度と流れに沿った運転をする人の方が多数を占めていて、危険を回避できている。

また日を改めて書くことになるだろうが、4月末日に行われた意見交換会で、道の駅に向けた取り組みに対し、今年度中に最初の予算取りの可能性が出てきた。
限られた条件によるささやかなトライアルの機会となるが、すでに僕の頭の中はアレやるコレやるの妄想で、パンパンにふくらんでいる。

今回のトライアルに対し、いみじくも役所の統括官がおっしゃった。
「なんせ、前例のないことなもんで」
いいじゃないか、やったろうじゃないか。
僕らがその、最初の「前例」になればいいのだ。

イラスト hanami🛸|ω・)و

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