知らない男

ほんの
何ヵ月か前まで
知らない男

街で
すれ違うとき
あ
素敵な人
くらいは
思ったかもしれないけれど

信号待ちが終われば
忘れているような
そんな
他人だった
彼

でも今は

毎日
連絡を取り合い
深い話から
笑い話までして

心のうちを
語り合い

仕事以外の時間は
無意識に
お互いのことを考えてしまう

会うごとに
セックスの良さは
最高潮を迎え
するごとに
身体の相性は
増していく

回数を
重ねれば
重ねるほど
深くなり
快楽の淵の底は
見えない

離れがたく
別れてすぐに
会いたいと
願う

何度も絶頂を迎えたのに
夜にはもう
彼が欲しくて
心も子宮も疼き出す

今までこんなに
したいと思ったことはない
と
彼のリップサービスを受けて

私の身体は
熱くなり
彼を求める

彼は
私の何なのかしら
私は
彼の何なのかしら

彼を知らない私は
わたしではなく
私を知らない彼は
かれではない

お互いが
求めあう当たり前の
二人のかたち

それは
夢ではなく
確かにそこにあるもの

それは
きっと
美しいかたちをしている