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鉄欠乏性貧血(スポーツ貧血)💉🙅~基本編~       

*ゼリア新薬工業株式会社が2020(令和2年)に11月26日を『鉄分の日』と制定。(鉄の元素記号が26であることから1126(いい鉄)にちなんで。)
この日を世界ではIron Deficiency Day(鉄分欠乏の日)とされている。



アスリートの中でも特に陸上長距離選手は何度も地面を踏みつけることで赤血球が破壊され(溶血)、また汗からもミネラル分(特に鉄分)が抜けることで発症する可能性が高くなります。更にトレーニングが増すことでリスクが高まることは充分予測がつきますが、その中でも貧血になりやすいタイプとそうでないタイプがいることも現状です。


鉄欠乏性貧血とは?

鉄欠乏性貧血とは、鉄の欠乏によって赤芽球のヘモグロビン合成が低下して起こる貧血です。一般に若年~中年女性に多い傾向にあります。貧血の中では最も頻度が高く、わが国では貧血の約2/3を占め、臨床上でも重要です。

原因は、男女共通のものでは、慢性消化管出血、痔出血などが多く、まれに胃の切除、無胃酸症などによる吸収率の低下によるもの、アスリートの多くはトレーニングでの消耗に加え、体重制限や偏食により利用可能エネルギー量、鉄の摂取量が少ない為に起こります。成長期であれば骨格筋の発達に伴い、鉄需要が増加します。女性特有のものでは、子宮筋腫などによる性器出血、出産による出血、過多月経などが多いです。

症状としては頭痛、めまい、動悸、息切れ、易疲労感、眼瞼結膜蒼白などがあげられます。また、スプーン状爪、食物の嗜好の変化で、氷(胃に熱を持つ為)や土などを好んで食べる異食症、舌乳頭委縮(赤い平らな舌)といわれる症状をきたし、ときにPlummer-Vinson(プランマ―ビンソン)症候群と呼ばれる鉄欠乏が原因と考えられる舌炎を伴う場合もあります。
以前女子校生アスリート(陸上競技長距離選手)でこの症状を診る機会がありました。初めて診たときは苺のような形をした舌だなと思った記憶があり、後にこの名前を知りました。脈では脾腎の弱り、強いのぼせ症状もみられ、極度の鉄欠乏性貧血であることが舌や脈からもわかる症状です。


改めて血液・「血」とは?

血液とは、心・血管系の中を循環する液体であり、生命の維持に極めて重要であり、その主な役割には、O₂、CO₂、ホルモン、栄養、熱量の運搬作用・pH、ホルモン、体温などを一定にする緩衝作用・病原体や異物などから身体を守る防御作用・止血作用があります。通常の成人において、血液量は体重の約8%を占めます。また、全血液量の1/3を失うと生命に危険を及ぼします。

東洋医学における「血」とは全身を循環して、臓腑をはじめ、皮毛、骨肉など、人体を構成するあらゆるものに栄養を与えて、それらの機能活動を盛んにしています。人の身体を動かしたり、温めたりして生命活動を維持する燃料としての働きを担っています。 血と五臓は密接な関係にあり、心は血の循環を主り、肝は血を蔵し、脾は血の動きを調整しています。
また、【「血」の中には陰と陽が存在し、陽的な働きとして身体を温め、血を巡らせます(営気)。一方、陰的な働きとして、体内の熱が暴走しないように冷却水の役割をしたり、形作る原材料となります(津液)。】と大上勝行先生の著書「よくわかる経絡治療講義」で記載されており、言葉の表現は違いますが、血液と「血」ともに、物質を運搬したり、外的内的要因から守るという働きは同じ意味を表しています。


血虚=鉄欠乏性貧血??

血虚とは「血」を虚するという言葉から、鉄欠乏性貧血と同じように表現されがちです。
血虚は「血」という物質が不足し、本来「血」の持つ働きが低下することであり、鉄欠乏性貧血とは、血液中の鉄の欠乏によって赤芽球のヘモグロビン合成が低下して起こる貧血です。

私達は物を持ったり、投げたり、走ったりという肉体的な労働で「血」を消費します。そのため、血虚になると、筋肉痛(アスリートでは肉離れが多い)や腰痛、神経痛になります。
肝が主る筋(靱帯・関節)は「血」が充実していて潤っていると伸び縮みしやすく、様々な動作をすることができます。
ところが「血」が不足し、潤いがなくなると、伸び縮みしにくくなり、無理に動かそうとすると痛みが出たり、運動障害が生じたりします。
*靱帯や関節に付着している筋肉とは肌肉(脂肪)のことであり、肌肉は脾が主る。靱帯や関節、骨に血が充実せず、潤いがないと筋肉は発達しにくく、怪我や病気にも繋がりやすいのです。

短距離選手で定期的に肉離れをしている選手に共通していたことは慢性的な血虚状態、夜更かし(就寝時間が不規則)、液晶画面の見過ぎ、五味の偏り(酸味の摂り過ぎ)、情緒が不安定。。。五臓、内臓の疲労を助長することばかりで本当にもったいないことをし続けている選手、学生を幾度となく見て来ました。

よく肉離れを起こす選手に鉄欠乏性貧血の症状が多いのかというとそうでもありません。

月経の分野でも触れましたが、アスリートは日々のトレーニングにより日常的な血虚状態に陥っていることが多いのです。

また、気を遣ったり、勉強などの脳を使う作業に「血」は大量に消費されます。ですので、「血」が不足すると、物事を考えることができなくなり、イライラします。頭自体は何かを考えないといけないと、働こうとするのですが、血虚の状態では消費するガソリンがありません。それで考えがまとまらずイライラするのです。何かを見るときにも「血」を消費します。
目に「血」が充分に行き渡れば、目を栄養され、物がよく見え、判別することができます。ですから、「血」の不足は目の疾患を引き起こします。

最近ではネット社会の影響で幼少期から視力低下の傾向が強く、度のきつい眼鏡やコンタクトレンズを着用している子供が多いのが現状です。
また、中学校で部活を始めて、急に視力が落ちたと言われるのはハードなトレーニングにより「血」の消耗が激しく、夜遅くまで塾で勉強するといった生活スタイルが現代の子供達に大きな影響を与えているのだと思います。
自身はその代償を負った1人なので子供達には自身の目を、身体と大切に向き合って欲しいと強く願う日々です。

血と精神活動

『肝は血を蔵し、血余りあれば怒り、不足すれば恐る』

『素問』調経論篇(62)

「血」が有余すると、肝気が鬱して怒り易くなり、「血」が不足すると、肝気が虚しそれにつれて腎気も虚して、ものに恐れ易くなります。
「血」の過不足が精神や意識など、感情的な面に大きな影響を及ぼすことを述べています。  
                 

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