子供のためのオルセー美術館(69)読書・白と赤と黒と/印象派への扉を開くメソニエからファンタン・ラトゥール、マネまで
本を読む人の色を見る
ガラス窓の美しい部屋
白い服のムッシュは、なんの本を読んでいるのでしょう。
ふふふんと、笑みがこぼれて楽しそう。
光の入る明るい窓ぎわに立ったままで、
次から次へと続く物語の世界に、もう本から目が離せません。
机の上にも、向こうの棚にも
ここには、立派な表紙のぶ厚い本がたくさん。
あ、聞こえる?
どこからかフランス語の詩を読んでいる声。
ベランダの植え込みの緑から、涼しい風が薄いカーテンを揺らします。
白いドレスのマダムはソファにゆったりすわって
息子のレオンが読む詩をうっとりと聞いています。
こんなに読みこまれて古くなった本には、
いったいどんなおもしろいお話が書いてあるのでしょう。
赤い椅子にすわって本を読んでいるのは、黒いドレスのマダム。
ときおり、ふと小さいため息をついては続きを追います。
そで口の白いレースとブルーのスカーフは、深い黒のドレスをやわらかに見せました。
気がついた?
あそこに落ちているの。
白い襟の少女はもうさっきからずっと、ここにすわっているのです。
ページをめくる音だけが聞こえる静かな部屋
ソファのあたたかな赤は少女を優しく包んで
そして、お話の中の時間だけがゆっくり流れていきました。
おしまい
Ernest Meissonier
Le Liseur blanc 1857
エルネスト・メソニエ
白の読者 1857
Édouard Manet
La Lecture 1865-1873
Madame Édouard Manet (1830-1906), et son fils, Léon Koella-Leenhoff (1852-1927)
エドゥアール・マネ
読書 1865-1873 エドゥアール・マネ夫人と息子のレオン・コエラ=リーンホフ
Henri Fantin-Latour
Victoria Dubourg 1873
アンリ・ファンタン=ラトゥール
ヴィクトリア・デュブール 1873
Henri Fantin-Latour
La Liseuse 1861
アンリ・ファンタン=ラトゥール
本を読む人 1861
お読みいただきありがとうございました。
本はお好きですか?あるいは漫画?
本でもこの時代にない漫画でも、没頭している時間は確かにありますね。今日はその瞬間を捉えた作品をいくつかご紹介しました。
展示替えで、オルセー美術館に久々にお目見えしたファンタン•ラトゥールの、本を読む人の2枚の絵。この引きこまれる黒と赤の美しさをご覧いただきたいと思いました。
メソニエの白の読む人には他に黒やローズの読者もあります。どれも小さい絵ですが、当時大変高額な取引きがされた人気作品です。
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