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子供のためのオルセー美術館(69)読書・白と赤と黒と/印象派への扉を開くメソニエからファンタン・ラトゥール、マネまで

ほんひといろ


ガラスまどうつくしい部屋へや

しろふくのムッシュは、なんのほんんでいるのでしょう。
ふふふんと、みがこぼれてたのしそう。

ひかりはいあかるいまどぎわにったままで、
つぎから次へとつづ物語ものがたり世界せかいに、もうほんからはなせません。

つくえうえにも、こうのたなにも

ここには、立派りっぱ表紙ひょうしのぶあつほんがたくさん。


あ、こえる?
どこからかフランスポエムんでいるこえ

ベランダのみのみどりから、すずしいかぜうすいカーテンをらします。
しろいドレスのマダムはソファにゆったりすわって

息子むすこのレオンがポエムをうっとりといています。



こんなにみこまれてふるくなったほんには、
いったいどんなおもしろいおはなしいてあるのでしょう。

あか椅子いすにすわってほんんでいるのは、くろいドレスのマダム。
ときおり、ふとちいさいためいきをついてはつづきをいます。

そでくちしろいレースとブルーのスカーフは、ふかくろのドレスをやわらかにせました。


がついた?
あそこにちているの。

しろえり少女しょうじょはもうさっきからずっと、ここにすわっているのです。


ページをめくるおとだけがこえるしずかな部屋へや



ソファのあたたかなあか少女しょうじょやさしくつつんで
そして、おはなしなか時間じかんだけがゆっくりながれていきました。


おしまい

Ernest Meissonier
Le Liseur blanc 1857
エルネスト・メソニエ
白の読者 1857

本を読む人の姿はメソニエが好んだテーマの一つである。
1840年のサロンで初めて受賞したのも、このテーマの絵だった。メソニエはそのキャリアを通じて、本に没頭する男性の姿を描いた作品を少なくとも12点は描いた。オクターヴ・グレアールによれば、これらの作品には画家の「古き良き時代」への郷愁が反映されているという。
「風俗画」とは、日常生活を題材にした小サイズの絵画のカテゴリーを指す。細密な描写で、過去や現在を舞台に無名の人物や逸話的な状況が描かれる。
アカデミーの大規模な歴史画には劣ると考えられていたが、これらの絵画は19世紀、特に第二帝政期(1852年~1870年)に成功を収めた。
メソニエは、こうした風俗画家の中で最もよく知られた画家である。彼の「写真的」な写実主義は、17世紀のオランダ絵画と18世紀のフランス美術に触発されたもので、市場で最も高価なもののひとつとなった。しかしそれはまた、現実や日常の美に対する新たな関心を反映している。
現実を題材にした絵画は、印象派の「現代生活の絵画」への道を開いた。

musée d’orsay

Édouard Manet
La Lecture 1865-1873
Madame Édouard Manet (1830-1906), et son fils, Léon Koella-Leenhoff (1852-1927)
エドゥアール・マネ
読書 1865-1873 エドゥアール・マネ夫人と息子のレオン・コエラ=リーンホフ

Henri Fantin-Latour
Victoria Dubourg 1873
アンリ・ファンタン=ラトゥール
ヴィクトリア・デュブール 1873

Henri Fantin-Latour
La Liseuse 1861
アンリ・ファンタン=ラトゥール
本を読む人 1861

この読書に没頭している若い女性は、画家の姉妹の一人である。初期の頃、ファンタン=ラトゥールは家族の中からモデルを選ぶことが多かった。またこの時期には多くの自画像も制作している。
この“読者”は、ファンタンが特に好んだテーマで描いた最初の作品である。オランダ絵画とシャルダンから借用したこの主題によって、画家の作業や見る者の視線に無関心なまま(読書という)活動に没頭する人物を描くことができた。ラトゥールは、裁縫や機織りをしている若い女性を描いた時のように、その場面の瞑想的な性質を強調した。座っている人の静けさ、前景の2冊の本が形作る静物、ソファの赤の淡い色調、これらすべてが静寂の雰囲気を作り出すのに貢献している。
この肖像画は、ファンタン=ラトゥールが1861年のサロンに出品した最初の作品である。彼は1859年に自画像の出品をサロンから拒否されていた。この肖像画には、後の彼の肖像画の特徴である厳格さ、シンプルさ、厳しさがすでに表れている。

musée d’orsay

お読みいただきありがとうございました。
本はお好きですか?あるいは漫画?
本でもこの時代にない漫画でも、没頭している時間は確かにありますね。今日はその瞬間を捉えた作品をいくつかご紹介しました。
展示替えで、オルセー美術館に久々にお目見えしたファンタン•ラトゥールの、本を読む人の2枚の絵。この引きこまれる黒と赤の美しさをご覧いただきたいと思いました。
メソニエの白の読む人には他に黒やローズの読者もあります。どれも小さい絵ですが、当時大変高額な取引きがされた人気作品です。

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