ウクライナ危機が引き起こす先進国のグレート・リセット
まず、ロシアがウクライナへの侵攻を始めて以来、大手マスコミの報道に対してずっと感じている違和感を的確に表現した記事がありましたので、和訳したものをシェアさせていただきます。
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▼西側の制裁の真のターゲットはロシアなのか?
石油価格の高騰、エネルギー危機、食糧危機が間近に迫っている・・・
経済戦争の本当の標的は、私たち自身である可能性はあるのだろうか?
外交政策アナリストのクリント・アーリッヒ氏は、投稿で、ロシアの通貨ルーブルはすでに西側の制裁によって引き起こされた落ち込みから回復し始めており、ほぼウクライナ侵攻以前のレベルにあると指摘している。
アーリッヒ氏は、「対ロシア制裁はルーブルの価値を崩壊させるように設計されたが、失敗した」と述べている。
よく言って対ロシア制裁はせいぜい無力であり、それどころか、最悪の場合は驚くほど西側にとって逆効果であるように思われる。
米国とEU、NATO が他国の経済を不自由にする方法を知らないわけではない。彼らはキューバ、イラク、ベネズエラ、そしてリストに載せるにはあまりにも多くの他の人々を飢えさせる長年の練習をして、それを実践してきたからだ。
ロシアはそれらの国よりも大きく、より発展した経済を持つと主張されることがあるかもしれない。それは事実だ。しかし、米国とその同盟国は以前にロシア経済をかなり劇的に傷つけたことがある。
ロシアによるクリミア併合後の 2014年には、米国は自国の石油生産を大幅に増やし、その年の後半、当時の米国国務長官ジョン・ケリーの訪問後 、サウジアラビアも同じことをしている。
OPEC の他のメンバー(主にベネズエラとイラン)からの反対にもかかわらず、サウジアラビアは市場に石油を氾濫させた。
これらの動きの結果、石油価格は数十年で最大の下落となり、2014年6月の 1バレル 109ドルから、2015年1月までに 44ドルに下落した。
この石油価格の下落は、当時のロシアを完全な不況に追い込み、プーチン大統領がロシアのトップにある期間中でロシアの GDP が初めて縮小するという結果になった。
ちょうど 2年前、石油市場のシェアをめぐってロシアと競争したことの一環として、サウジアラビアは再び安価な石油で市場を氾濫させた経緯もある。
これらのことから、西側諸国が対ロシア制裁を本当に望んでいるのであれば、石油生産を増やし、市場を氾濫させることによって、ロシアを傷つけることができるのだ。
しかし、米国は今回、石油生産を増やしただろうか。米国は以前と同じことをするために湾岸の同盟国に寄りかかっただろうか。
そんなことは全くなく、米国当局は「コロナによる人材不足」のために、石油生産を増やすことは「不可能」であると主張している。
同様に、サウジアラビアは石油市場を圧迫しているのではなく、意図的に価格を引き上げている。
現在、西側の同盟国がロシアとの「疑わしい」経済戦争にあるため、石油の価格は高騰しており、今後も続く可能性がある。
これはロシア経済にとって朗報であり、経済制裁による被害を埋め合わせる可能性さえある。
石油の価格が高くなり、「ロシアのガスに頼らない」または「ロシアからのエネルギー調達を排除する」必要があるため、西側同盟国のエネルギー供給には、間違いなく「グリーン」技術に何百万もの人々が注がれることになる。
これらの西側の制裁は、穀物や食料品全般を含むロシアの輸出も対象としている。
ロシアは食糧の大輸出国であり、輸入よりも多くの食料を輸出している。
逆に、西ヨーロッパの多くの国は食料供給の 48%以上を輸入している英国を含め、輸入食品に依存している。(※ちなみに日本は 63%を輸入)
ヨーロッパがロシアの食糧を購入することを拒否した場合、その効果は、食糧を持っているのはロシアだということだ。ヨーロッパではない。
そして、石油と同じように、食糧価格の上昇はロシア経済を妨げるのではなく、助けるだけだろう。
ロシアが世界最大の輸出国である小麦を例にとってみれば、この小麦の大部分は、西側諸国に販売されておらず、代わりに中国、カザフスタン、エジプト、ナイジェリア、パキスタン等に販売されており、これらの国に対しての販売は制裁の対象にはならない。
それにもかかわらず、制裁と戦争は実際に小麦の価格をほぼ 30%上昇させた。
小麦価格の上昇は、ロシア経済にとって非常に良いことだ。
一方、米国 CNN によると、米国は 2023年までに本格的な不況に陥る可能性があり、フランスは食品配給制度を検討しており、世界中の国々が燃料の配給を開始する予定だ。
したがって、西側がロシアに対して課した抜本的な制裁措置は、ウクライナの侵略に対応したとされているものではあっても、ロシア経済を圧迫するという明確な目的を持っていない中で、石油の価格を押し上げ、潜在的なエネルギーと食糧不足を生み出している。そして、西側の「パンデミック」によって引き起こされた「生活費」危機を悪化させている。
オーウェルが、小説「1984年」に戦争の概念の進化をどのように説明したかを思い出してほしい。
コロナパンデミックの結果として「 50年間で最悪の食糧不足」が予測されていたことを思い出してほしい。
しかし、コロナによる食糧不足はまったく実現しなかった。
同様に、私たちはコロナ関連のエネルギーの混乱と停電を経験すると予測していたが、英国のささやかなガソリン危機を除いて、コロナによるエネルギー危機は、実際に起こることはなかった。
しかし、今、私たちは確実に食糧危機とエネルギー危機へと進んでいる。それは戦争と制裁のために起きたものだ
食料価格の上昇、化石燃料の使用減少、生活水準の低下、そして、公的資金が「再生可能エネルギー」に注ぎ込まれる。
これらはすべて非常によく知られている議題の一部でもある。
プーチン、ゼレンスキー、戦争全般、またはウクライナについてどのように感じているかに関係なく、巨大なものと対峙する時が来た。
私たちは考える必要がある。「これらのロシア制裁の本当の目的は何なのか?」
そして、「なぜこれらはグレートリセットの内容と完璧に一致するのか?」ということを。
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翻訳はここまでです。
▼世界経済フォーラムの唱える「グレート・リセット」
以前に弊ブログ記事でも紹介させていただいた世界経済フォーラムという、国連とも関係性が深い組織が予測する2030年までの「グレート・リセット」のシナリオでは、以下のような世界的な動きが起こるといいます。
人々は何も所有しない。物品は無料であるか、あるいは国から貸与されなければならない。
アメリカはもはや主要な超大国ではなく、少数の国が支配するだろう。
臓器は移植されずに印刷される。
肉の消費は最小限にまで抑制される。
人々の大規模な移動により、数十億人の難民が発生する。
二酸化炭素排出を制限するために、価格は世界的に法外なレベルに設定される。
人類は火星に行き、エイリアンの生命を見つけるための旅を始める準備をすることができる。
西側世界の価値は限界点までテストされるだろう。
↑こちらが世界経済フォーラムが公開しているプロモーション(?)動画です。
ウクライナでの紛争が長引けば長引くほど、直近では上記の2、4、6、8の項目について、これまでの体制からの「リセット」が進むものと思われます。以下、解説していきます。
▼ドル基軸体制の終わりが近い
これまで、世界のどこでも通用する通貨(基軸通貨)は言うまでもなくアメリカのドルでしたが、それは時間を追うごとに過去形になっていきそうです。
今回のウクライナ紛争では、アメリカはロシアを国際的な決済ネットワークSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出すという制裁措置に踏み切りました。
ロシアにはロシア中央銀行が構築したSPFS(金融メッセージ転送システム)という独自の決済ネットワークがありますが、ロイターによれば、SPFSは「取引にかかる時間、サイズ、複雑な送金の手続きといった制約がある」と指摘されています。
その一方で、ロシアへの経済制裁を実施せず中立を保っている中国は、2015年にCIPS(クロスボーダー銀行間決済システム)という決済ネットワークを稼働させていまして、欧米の銀行や、日本のメガバンクの中国法人なども接続しているそうです。
野村総合研究所のエコノミストは CIPSの位置付けについて以下のように語っています。
ウクライナ侵攻後、ロシアと中国の主要銀行7行が両国の決済ネットワークを相互運用する案が浮上しており、すでにCIPSとSPFの間での運用に向けた作業が始まっている可能性があります。
また、ロシアは中立を保っているインドに対してSPFの利用しているという報道も。
国際通貨基金(IMF)の筆頭副専務理事も、ロシア制裁によってドルの支配力が弱まると予想。
記事中では、デジタル貨幣の使用が促進されていること、中国の発展の理由によっても、ドルの相対的な地位はすでに低くなっていたことも指摘。世界の貿易の決済通貨としてのドルの使用が減れば、世界各国の外貨準備高に占めるドルの割合も減る可能性が高くなります。
今後ドルに代わって中国の人民元の使用量が大きくなるのは確実でしょうが、一昨年の末の時点でイギリスのシンクタンク「経済ビジネス・リサーチ・センター」(CEBR)は、2023年までには中国が「高所得国」となり、 2030年を待たずにアメリカを抜いて世界最大の経済大国となるとの報告書を発表しています。
▼間近に迫る食料危機
先日書いた記事でも言及していますが、ロシアは世界1位の小麦輸出国であり、なおかつ肥料とその原料となる天然ガスや石油の重要な輸出国。
戦時下にあるウクライナを含めると世界で流通する穀物の30%は生産しているわけで、日本は両国からの輸入量は少ないと言えども小麦を始めとする穀物価格の高騰は必至の状況となっているのです。
また、ロシアとその同盟国ベラルーシ、ウクライナは世界市場での大量の窒素肥料とカリウム肥料を供給源であることが事態を深刻にしています。
国際食糧政策研究所(IFPRI)のシニアアナリスト、ラボード氏は世界規模での肥料不足が起こることについて言及しています。
肥料市場は、ウクライナ侵攻以前からすでに不安定な状況にあったようです。制裁下にあるベラルーシからのカリウム輸出が滞っていたことに加え、コロナ禍による海運とサプライチェーンの混乱、主要な原料である天然ガス価格の高騰のため、多くの欧州メーカーは窒素肥料の生産量を減らしていました。
このまま事態が好転せず、穀物の供給が大幅に減ることになればどうなるか?
当然、人間の食べる穀物、カロリーベースを優先するために、家畜用の飼料の供給が減ることにつながる可能性が高くなってくるでしょう。
それに備えてなのか、代替肉・培養肉・昆虫食などの準備が着々と進んでいますね。
▼欧州、日本でのエネルギー不足が深刻化する
ウクライナ侵攻は、先進国でのエネルギー政策にも激震をもたらしています。
2011年の福島原発事故以来、先進国のエネルギー政策は、脱原発と気候変動対策として脱石炭と再生可能エネルギー導入をすすめる「エネルギー転換」を急いできましたが、今回の侵攻によって、コスト、安定供給、安全保障の面での脆弱さが露呈してしまったのです。
ロシアのプーチン大統領は、欧米日など「非友好国」に指定した国や地域に対し、輸出している天然ガスの取引代金をロシアルーブルで支払うよう命じる大統領令に署名。ルーブルでの支払いがなければ輸出停止する可能性にも触れました。
ドイツはロシア産の天然ガスへの依存度は5割を上回るそうで、「ドイツ産業に災害をもたらす」(ドイツ化学工業協会のクルマン会長)と懸念を表明。ドイツ政府もガスの供給状況から「早期警戒」を宣言しました。
ドイツ以外の EU加盟国も対応に追われていて、フランスの規制当局が市民に節電の協力を呼び掛けているほか、オランダ政府も国民だけでなく企業に対する節電も促す方針だといいます。
ちなみに、IEA(国際エネルギー機関)の統計からG7各国の天然ガス消費量に対するロシアからの供給量の割合をみると、ドイツ45.7%、イタリア40.9%、フランス20.0%とEU諸国に対する影響が大きいことが分かります。
日本での割合は8.2%とEU諸国に比べると少ないのですが、石油・天然ガス・石炭といった化石燃料の価格いずれもが世界的に高騰する中での影響は避けようがないというのが現実でしょう。
報道によれば、日本でも大手の電気・都市ガスともに値上げが確定されています。
こうしたエネルギーコストの高騰は、これから夏・冬とエアコン需要が高まる時期を迎えると、一般家計にとって大きな負担となることが確実でしょう。
電気ガス代を節約する、支払えないなどの理由から、高齢者や低所得の家庭では熱中症や凍死による犠牲者が増えることにならなければ良いのですが・・・。
このような社会的な損失を防ぐためとして、日本も含めた西側先進国では原発の再稼働への期待度が高まっていくことが予想されます。
日本経済新聞が18歳以上の成人を対象に行った世論調査では、
「基準を満たして安全が確保された原発は再稼働すべき」という回答が半数を上回る53%に。
「再稼働してはならない」という回答は38%で、昨年9月に同じ内容で実施した調査での、賛成44%・反対46%から逆転した形になっています。最近相次いだ地震による電力不足も影響していると分析しています。
▼結局、苦しむのは G7先進国の庶民
先進国にもジワジワと影響が出てきているウクライナでの紛争はいつまで続くでしょうか?
ウクライナのゼレンスキー大統領は国民に銃を渡しロシアへの徹底抗戦を呼びかけ、男子には出国禁止という強い措置を取っているため、ロシア軍にとっては、謂わば国中にいるゲリラと戦うような泥沼状態に陥っています。
さらにアメリカが同盟国からウクライナへの戦車の供与を支援する方針を決めた上記記事のように、欧米からの武器供与、そして世界各国からの義勇軍の派遣も行われているため、紛争の長期化は必至と言えるでしょう。
もちろん、最も大きな被害を被っているのは現地ウクライナの国民であることは疑いもないです。
しかし、欧米から経済制裁されているはずのロシア国民よりも苦しむことになるのは、実はロシアから「非友好国」と目指しされたG7先進国の国民、さらに言えば、その中でもエネルギー資源と食料自給率の低い国かもしれません。
資源と食料、日本はそのどちらもありません。
状況が大幅に改善されない限りは、今年の後半にはあらゆる商品・サービスのインフレによって一般庶民の生活が厳しくなる時期がやってきそうです。
話を食料に戻せば、2022年10月に政府による小麦の売り渡し価格が改定される際には、ウクライナ危機での値上がり分を織り込んだ価格になります。(現在の価格はまだ反映されていないのです)そのため、小麦を使う食品については、確実に大幅値上げを余儀なくされることになります。
その後にやってくる冬はエネルギー需要が1年で一番大きい時期でもあり、日本政府の今後の対応次第では、飢えと寒さに苦しむ国民があふれる事態にもなりかねないのです。
実は、この戦争での本当のターゲットになっているのは、日本をはじめとした先進国に暮らす一般市民の生活なのかもしれません。
そう考えると、世界経済フォーラムの唱えた「西側世界の価値は限界点までテストされる」という言葉の意味が見えてきますね。
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