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世界経済フォーラムが描く2030年のユートピア

ここ数年、日本では猫も杓子も口にするようになったSDGs(持続可能な開発目標)。その目標の中には2030年に向けての目標として掲げられているものが多いのですが、SDGsの主要な旗振り役の一つである世界経済フォーラム(以下WEF)も同じように、2030年までに人類社会がどのように変化していくかという「予測」を公表しています。

このWEFという組織、彼らが目指す変化の詳細については、上記の記事で書いておりますので、ご一読いただければ幸いです。

ざっくり言ってしまうと、WEFが語っている大筋というのは、コロナ(やこれから起こりうる)感染症パンデミックによって、現状の資本主義社会の欠点が露わになった。
地球環境の持続可能性のためには、それを一旦リセットし、より公平な社会に構築し直す必要がある・・・。そんな内容になっています。

そして、彼らが理想とする2030年の社会を個人の生活の視点から描いた「Here's how life could change in my city by the year 2030(2030年、私の住む街の暮らしはどう変わる?)」という記事があったのですが、WEFのページに行ってみたところ、残念ながら今は削除されてしまっており読めなくなっています。

それでも、ネット上ではその内容をアーカイブしたものがありましたので、今回はその内容に沿って話を進めていきます。


▼2030年、私の住む街の暮らしはどう変わる?

出典

筆者注:このブログを私のユートピアや未来の夢と読んでいる人がいます。そうではありません。良くも悪くも、私たちがどこに向かう可能性があるかを示すシナリオです。
この作品は、現在の技術開発の長所と短所について議論を始めるために書きました。未来のことを考えるとき、レポートだけでは不十分です。私たちは、さまざまな新しい方法で議論を始めるべきです。これが、この作品の意図です。

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2030年の世界へようこそ。私の街、いや、「私たちの街」へようこそ。

私は何も持っていません。車も持っていません。家も持っていない。家電製品も服も持っていません。

あなたには奇妙に思えるかもしれませんが、この街の私たちにとっては完璧に意味のあることなのです。あなたが商品だと思っていたものは、すべてサービスになっています。

交通手段、宿泊施設、食べ物など、日常生活に必要なすべてのものが手に入ります。これらのものが次々と無料になっていったので、結局あまり所有する意味がなくなってしまったのです。

まずコミュニケーションがデジタル化され、誰もが自由に使えるようになりました。そして、クリーンエネルギーが無料になったことで、物事が急速に進み始めました。交通機関も大幅に値下がりしました。運転手のいない車や空飛ぶ車を呼んで数分で長距離移動ができるようになったので、車を所有する意味がなくなったのです。

公共交通機関が車よりも簡単で早く、便利になったことで、私たちはより組織的で協調的な方法で移動するようになりました。今となっては、エンジンによる大気汚染はもちろんのこと、混雑や交通渋滞を受け入れていたことが信じられません。私たちは何を考えていたのでしょうか?

私は友人に会いに行くときに自転車を使うことがありますが、運動と走行を楽しむことができます。魂が旅についてくるようなものです。

歩くこと、自転車に乗ること、料理をすること、絵を描くこと、植物を育てることなど、不思議なことにワクワク感を失わないことがあります。これはとても理にかなったことで、私たちの文化がいかに自然との密接な関係から生まれたかを思い出させてくれます。

"環境問題は遠い存在"

私たちの街では、私たちは家賃を払っていません。なぜなら、私たちが必要としていない自由なスペースを、誰かが使っているからです。私のリビングルームは、私がいないときはビジネスミーティングに使われています。

たまには、自分のために料理をすることもあります。必要なキッチン用品が数分で家に届くので、簡単です。交通機関が無料になってからは、家の中にいろいろなものを詰め込まなくなりました。パスタ・メーカーやクレープ・クッカーを戸棚に詰め込んでおく必要はありません。必要な時に注文すればいいのですから。

これにより、循環型経済のブレークスルーも容易になりました。製品がサービスに変わると、寿命の短いものには誰も興味を示さなくなります。

すべてのものは、耐久性、修理可能性、リサイクル可能性を考慮して設計されています。材料は経済の中でより早く流れており、新しい製品に簡単に変えることができます。私たちはクリーンなエネルギーとクリーンな生産方法しか使わないので、環境問題は遠くにあるように見えます。

空気はきれいで、水もきれいで、自然保護区には誰も手をつけようとしません。都市部には緑地がたくさんあり、いたるところに草木が生えています。なぜ昔は、都市の空き地をすべてコンクリートで埋めていたのか、いまだに理解できません。

"ショッピングの死"

ショッピング?それが何なのか、よく覚えていません。ほとんどの人にとって、それは使うものを選ぶことに変わりました。これを楽しいと思うこともあれば、アルゴリズムにやってもらいたいと思うこともあります。アルゴリズムは、私よりも私の好みをよく知っています。

AIやロボットが私たちの仕事の多くを引き継いだとき、私たちは突然、よく食べ、よく眠り、他の人々と過ごす時間を持てるようになりました。ラッシュアワーという概念はもはや意味をなさず、私たちが行っている仕事はいつでもできるものです。仕事と呼べるかどうかはわかりませんが。思考時間、創造時間、開発時間といったところでしょうか。

一時期、すべてがエンターテイメント化していて、人々は難しい問題に煩わされたくないと思っていました。最後の最後になって、これらの新しいテクノロジーを単なる暇つぶしではなく、より良い目的のために利用する方法が見つかったのです。

"都市部とその他では生活が異なっている"

私が一番心配しているのは、この街に住んでいない人たちのことです。私たちが途中で見失った人たちです。このテクノロジーを使いこなせないと判断した人たち。ロボットやAIが私たちの仕事の大部分を占めるようになったとき、時代遅れで役に立たないと感じた人たち。政治体制に憤慨して反旗を翻した人たち。

彼らは都市の外でさまざまな生活をしています。ある人は小さな自給自足のコミュニティを形成しています。他の人は、19世紀の小さな村の空っぽの廃屋にとどまっている。

私は時々、本当の意味でのプライバシーがないという事実に悩まされます。行くことができる場所で、登録されていない場所はありません。どこかで、私の行動、思考、夢のすべてが記録されていることを知っています。ただ、誰も私に対してそれを利用しないことを願っています。

全体的に見れば、これは良い人生と言えます。私たちが進んできた道に比べれば、はるかに良いものだと思います。

生活習慣病、気候変動、難民危機、環境破壊、都市の完全な混雑、水質汚染、大気汚染、社会不安、失業など、恐ろしいことが起きていました。私たちは、これまでとは違ったやり方ができることに気づく前に、あまりにも多くの人々を失ってしまったのです。

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筆者注:このブログを私のユートピアや未来の夢と読んでいる人がいます。しかし、そうではありません。これは、良くも悪くも、私たちがどこに向かっているのかを示すシナリオです。この作品は、現在の技術開発の長所と短所について議論を始めるために書きました。未来のことを考えるとき、レポートだけでは不十分です。私たちは、さまざまな新しい方法で議論を始めるべきです。これが、この作品の意図です。

(訳はここまで)

この手記のような記事はIda Aukenという方が執筆したとあります。彼女はデンマークから選出され、WEFのGlobal Young Leadersというグループに所属する人物だそうです。

▼私有財産がなくなりシェア社会へ

ここまでIdaさんの文章を読まれた中で、いくつか気付くことがあったと思います。その最初のものはおそらくこれでしょう↓

私は何も持っていません。車も持っていません。家も持っていない。家電製品も服も持っていません。

こうした所有物は全て「無料のサービス」に置き換えられていて、必要な時に誰かからレンタルできる、という訳です。車や電車、自転車など交通機関も無料か低価格で使用できるのだと。

そういった社会になることで何が期待できるのか?

まずは、これまでのように大量に商品を生産する必要がなくなるということでしょう。理想的には、必要なモノが必要な人の分だけ作られる、あるいはレンタルされ、リユースされることになるのだと思います。

最近は年を追うごとに「シェア」が社会的にもポジティブに捉えられる風潮が高まっていますよね。その土壌は着々と造られつつあるようです。

上記の記事によると、シェアが主体の経済で共有される可能性があるものは次の5つだとあります。

・空間(貸し会議室、レンタルスペース、駐車場、民泊など)
・乗り物(ライドシェア、カーシェア、シェアサイクルなど)
・モノ(ご近所レンタル、フリマアプリなど)
・スキル(外国語、Webデザインなど)
・お金(クラウドファンディングなど)

出典

また、以下のようなメリットがあるとも述べられています。

・使っていないモノやスペースが一つの収益源になる
・本来なら捨てられるモノでも誰かの役に立ち、ごみが減る
・シェアサービスの普及により、モノの生産を抑えて環境負荷を下げる

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日本でSDGsを語る際にとくに強調されている地球温暖化。その原因とされる二酸化炭素の排出を抑えるためにも、使い捨てを前提とした大量消費経済よりもシェア経済が奨励されるようになっていくでしょうね。

その一方で、コロナ禍での経済活動の自粛によって、これまでよりさらに貧富の格差が拡大したという現実があります。フランスの経済学者トマ・ピケティ氏などが運営する「世界不平等研究所」の発表では、

世界の上位1%の超富裕層の資産は2021年、世界全体の個人資産の37.8%を占め、下位50%の資産は全体の2%にとどまった。

出典

コロナ禍で経済活動が制限される一方、景気刺激のための財政出動や金融緩和によるマネーが株式市場などに流れ込み、多くの資産を保有する富裕層に恩恵をもたらした。報告書は「不平等は今後も広がり続ける」とした。

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このまま社会構造に変革がなければ、わずか1%の超富裕層がほとんどの富を独占し、残りの米粒ほどの富を99%が分け合うような社会構造に固定されてしまうのではないか・・・?という危惧があります。

▼AIが仕事を引き継ぎ、人間はよりクリエイティブな仕事へ

AIやロボットが私たちの仕事の多くを引き継いだとき、私たちは突然、よく食べ、よく眠り、他の人々と過ごす時間を持てるようになりました。
(中略)
私たちが行っている仕事はいつでもできるものです。仕事と呼べるかどうかはわかりませんが。思考時間、創造時間、開発時間といったところでしょうか。

「AI(人工知能)が人間に替わって仕事をするようになる。それによって仕事を奪われる人も出てくる。」というナラティブは、ここ数年でそれこそ耳にタコができるほど聞くようになりましたね。そして、WEFはこのストーリーの大きな発信元にもなっています。

コロナ前の2018年、WEFはグローバル企業300社以上の経営者へ調査し、以下のような分析結果をまとめています。

  • 22年には7500万の職が失われる一方、自動化で1億3300万の新たな仕事が創出される

  • 17年には機械が行う作業時間は全体の29%だが、25年には52%になり、技術革新によって職場が大きく変わる

  • 50%近くの企業が22年までに自動化により常勤の労働者の数を減らす

  • 経理やデータ入力などの事務従事者が不要となり、科学者やソフトウエア開発者、ソーシャルメディア専門家らの需要が増え、営業や顧客サービスなど対人の仕事の必要性も高まる

  • 労働者が新たな仕事に就くためには技能向上や再訓練が欠かせないとし、特に交通や医療、化学などの業界で再教育が迫られる

フューチャリストのスティーブ・ブラウン氏が書いた「The Innovation Ultimatum」という本によれば、AIによる自動化で雇用が激減する可能性がある職業として、以下のようなものが挙げられるそうです。

・農業
・肉体労働
・放射線技師
・保険業務
・テレマーケター
・キャッシャー
・経理
・税務
・銀行窓口
・弁護士助手
・タクシー運転手
・カスタマーサポート

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その一方、今後AIの時代で需要が高まりそうな仕事としては、次のようなものがあると言います。

・データサイエンティスト、ロボットエンジニア、機械学習エンジニア
・2つ以上の専門領域を持っている人(例:AIと医療)
・これまで無関係とみなされていた領域の接点にいる人(例:AIと倫理)
・予想可能な社会変化が生み出す仕事(例:高齢者向けコーチング、自動運転車の周辺サービス、環境保全に関連する仕事)

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このリストを見る限りでも、AIは新しい仕事と雇用を生み出すかもしれませんが、これまでより高度なスキルが必要とされることになるのは確実です。

果たして、20世紀の工業化社会のニーズに対応した教育を受けてきた人々が、急速に変化するニーズに対応し、短期間に新しいスキルを身につけることができるのでしょうか?

そのため、労働者の生活を守る制度として位置づけられるのが、「ベーシック・インカム」だと言われています。

これは仕事に就いているか否かに関わらず国民全員に最低限の生活に必要なお金を支給する制度で、米テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスク氏やバージン航空のリチャード・ブランソン氏などの企業家もベーシック・インカムの必要性を述べています。

日本でも「日本維新の会」が選挙公約の一つとしてベーシック・インカムを上げていましたが、アメリカでは大統領候補だったアンドリュー・ヤン氏が18〜64歳までの国民に毎月1000ドル(約11万円)を支給するベーシック・インカムを公約にあげていました。

また、コロナ禍の期間で日本のみならず欧米各国で失業者などへの給付金が配布されていたことは、ベーシック・インカム導入に向けた「地慣らし」にもなったと言えるでしょう。

▼プライバシー無き社会

私は時々、本当の意味でのプライバシーがないという事実に悩まされます。行くことができる場所で、登録されていない場所はありません。どこかで、私の行動、思考、夢のすべてが記録されていることを知っています。ただ、誰も私に対してそれを利用しないことを願っています。

WEFの創業者 クラウス・シュワブ会長は、コロナ禍以前の2016年に受けたインタビューで興味深い話を披露していました。

  • 数年以内に体内に埋め込むチップが登場する

  • まずは服の中に埋め込まれ、その後、脳や皮膚に埋め込むことになる

  • その体内デバイスを使って人間はデジタル世界でコミュニケーションするようになる

いまはスマホを使ってSNSでコミュニケーションしているわけですが、体内に埋め込んでしまえば、思ったことをそのまま伝えられるので、スマホのキーボードや音声認識でチマチマ文章を打つ必要もなくなるというわけです。

とても便利な技術だと思いますが、現状のスマホと同じかそれ以上の機能がチップには搭載されることになるはずです。

つまり、個人のID、位置情報、検索履歴による趣味嗜好、電子マネーでの購買情報、金融情報、健康状態なども保存されることになるのでしょう。
そして、それらのデータは6G通信によって日常生活で活用されることになると想像されます。そうなれば、とても便利ですからね。

ちなみに、EU成立の影の立役者としても知られるフランスの経済学者ジャック・アタリ氏は、『未来の歴史の概要』(2006年)という著書の中で、未来の監視社会について、以下のように予想しています。

………………..

社会に「監視役」が出現し、そのすべてのデータは、公共および民間のセキュリティ会社によって収集される。監視目的以外には、「人物の追跡を可能とする」ことが挙げられる。

それに含まれるすべてのデータは保存され、専門企業や公安および民間警察に販売される。データには、日常生活の画像を含んでいる。

2050年までには、これらの機器は、「自己監視マシン」と呼ぶものに進化し、誰もが日々の生活を監視されるようになるだろう。

また、体内の皮下に装着された電子装置が、心拍、血圧、コレステロールを絶え間なく記録し、さまざまな臓器に接続されたマイクロチップが、その機能を監視するようになる。

これは、保険会社が、加入者の健康リスクを知るために必要なものだ。保険会社は、喫煙者、飲酒者、肥満の人、失業、注意欠陥症、過食などにペナルティを科すことが可能となる。

………………..

(※翻訳はindeepさんより引用させていただきました。)

こうしたマイクロチップ埋め込み(今はもうナノレベルになっているかも知れませんが)は一体なにを目的に行われるのか?

1つ目には、おそらくウィルスをはじめ病気の脅威から健康を守るため、という理由から推奨されることになると思われます。

2つ目には、良い意味でも悪い意味でも、人間の管理ということになるでしょう。

実際に(人間に先立つ形で)2022年6月より、ペットへのマイクロチップ埋め込み義務化が始まっています。その主な目的は、ペットが行方不明や迷子になった場合、埋め込まれたチップの情報を読み取って、飼い主の元へ返すことだとされています。

また、2030年を目標に、人類全員にデジタルIDを提供するというプロジェクトも国連の機関やNGO、各国政府の連携で進んでいることも以下の記事でふれています。
そのデジタルIDがどういった形になるのかと言うと、シュワブ会長の話からすれば推して知るべし・・・でしょうね。

▼ユートピアから締め出される「不適合者」

ベーシック・インカムで生活が保証され、必要なものは全てレンタルでき、AIがほとんどの労働を肩代わりして人間はクリエイティブな活動に集中でき、スマホなしでも誰とでも会話でき、トラッキング技術によって身の安全も健康も守られる、そんなユートピア社会。

WEFはそのような理想社会を2030年の青写真として描いていますが、気になるのは、人類全てがユートピアの恩恵に預かることができるわけではない、という点でしょう。

その人々は「この街に住んでいない人たち」として描かれています。

私が一番心配しているのは、この街に住んでいない人たちのことです。私たちが途中で見失った人たちです。
このテクノロジーを使いこなせないと判断した人たち。ロボットやAIが私たちの仕事の大部分を占めるようになったとき、時代遅れで役に立たないと感じた人たち。政治体制に憤慨して反旗を翻した人たち。

彼らは都市の外でさまざまな生活をしています。ある人は小さな自給自足のコミュニティを形成しています。他の人は、19世紀の小さな村の空っぽの廃屋にとどまっている。

この未来予想図からうかがわれるのは、街の中と外に住む人では相当に暮らし向きが違う社会構造になるのだな、ということです。

おそらく最新のテクノロジーや公共サービスはユートピアに住む人間にしか提供されないことになり、そこから取り残された人々、もしくは住むことをみずから拒否した人々は、20世紀だか19世紀に時計を戻したような生活を強いられるようになると。

「ホモサピエンス全史」の著者としても有名なユダヤ人の思想家ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、ユートピアの恩恵から排除されるのは「不適合者」だと言っています。

この動画は2020年に世界経済フォーラムが主催するダボス会議でハラリ氏がスピーチしたもので、特に「テクノロジーによる破壊」に焦点をあてて、その危険性に警鐘を鳴らしています。

彼は、テクノロジーの発展によって膨大な数の人々の仕事が奪われ、その多くの失業者が新たなスキルを身につけられず、経済・社会に適応することが困難になると予測した上で、以下のように述べています。(2:43あたりから)

かつて人間は「搾取」と闘わなければなりませんでしたが、21世紀においては「不適合」との闘いが最も大きいものになるでしょう。

「不適合」との闘いに負けた人間は、(経済・政治システムの視点から見て)「不要な人間」という新階級を構成することになります。

そして、この「不要な人間階級」は、かつてないほど力を持つエリートたちと、かつてないほど大きな溝で隔てられます。

出典

ちなみに、ハラリ氏はWEFシュワブ会長のトップアドバイザーも務めている人物です。それゆえに、WEFが予告予想する2030年の未来像にも大きな影響を及ぼしていると思われますし、WEFに関わる政治家、投資家、グローバル企業のリーダーといったエリートたちに社会の目指す方向を指し示している、とも言えます。

なお、この動画の後半では、バイオテクノロジーとデータを駆使した「人間のハッキング」、それによるデジタル独裁国家に関しても語っていまして、前述したジャック・アタリ氏の未来予想とも重なる部分が多いのが印象的でした。

さらに、その際には世界最大の独裁国家ではなく、小国でしかない北朝鮮を例に挙げていたのも気になるところです。
なぜなら、既にかの国では大量に収集した個人データをAIを用いて解析し、個人の信用力をさまざまな角度から数値化した「芝麻信用」という信用スコアのシステムが普及しているからです。

信用スコアは従来の「信用情報」で扱われていた、年収や資産、借入の状況や返済履歴といった個人情報に加えて、性格やウェブでの行動履歴・購買履歴、SNSの使用履歴などの情報も加味した上で、最終的にはAIが数値化・可視化するというものです。

出典

中国では12億人以上のユーザーを抱えるスマホ決済アプリ「アリペイ」に集まるビッグデータを活用することで、その精度が日々高められており、このスコアが高い人はさまざま金銭的な特典やサービスを得ることができるそうです。

その一方で、どうなるとスコアが低くなるかについてはブラックボックスの中なのだとか。支払いの滞り、トラブルを起こす、交通違反などの説が言われていますが、公開されたことはないそうです。

この中国での成功を受けて、信用スコア制度がアメリカをはじめ世界各国で広がりを見せつつあるようですが、AIを操る側に思惑によっては、個人の思想や発言、行動までにスコア判定が及ぶのではないか・・・?そんな不安も湧いてきます。

中国では「芝麻信用」の普及によってマナー違反が減ったとの分析もあるそうですが、信用スコア制度は人心の萎縮につながる危険性も孕んでいるのです。技術的には、「適合者」「不適合者」の仕分けにも使うことも十分に可能でしょうから。

この中国を、アフターコロナの世界での「ロールモデル国家」と持ち上げているのがWEFのシュワブ会長だというのは、もっと知られるべき話です。

ハラリ氏の説明では、「不適合者」とはテクノロジーの発達についていけない人たち、という定義でしたが、もうすでにAI(アルゴリズム)によって別の角度から選別は始まっているような気もしています。

「(WEFやWHOといった国際機関、マスコミなどの)権威を信じ、彼らの言葉に従うか。それとも従わないか。」

信じるものは救われて、ユートピアの住人になれるわけです。

ただし、そのユートピアでは、心の底から彼らの言葉だけを信じなければいけないでしょうね。脳の中身まで覗き込まれるので。

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