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【対談】感傷マゾ研究会×負けヒロイン研究会~『アオのハコ』論考~2巻編②

本記事は後編になります。前編と、『アオのハコ』二巻を読んでからの閲覧をお勧めしています。

シーン考察③

 暴走しすぎましたね。戻りましょう(笑)。その直後(62ページ)に千夏先輩が言った、「来年も再来年もあるんだし」っていうのはちょっと残酷ではありますよね。「ねーよ……」っていう。

 そうですね。でも、ここでギスギスはするんですけどやっぱり二人の関係はリカバリーが早いですよね。

 今回も翌日には回収されてしまいますからね。

 あと第一回の論考でも言ったことなんですが、バドミントンとシンクロして進行して行きますよね。バドミントンがうまくいけば、二人の関係性もうまくいく。ただ、バドミントンのほうであんまり挫折していないのは若干気になりますね。今のところかなりとんとん拍子に進んでいます。

 ですね。個人戦では準優勝でしたけれど、挫折という感じではありませんね。

 一年生で準優勝っていうのは多分十分な成績ですしね。
あとどうでもいいんですが、この「岸祥一郎」っていう新キャラめちゃくちゃ『ハイキュー!!』に出てきそうですよね。

 うわ、いそう(笑)。彼はまだ掘り下げられていないからか、ちょっと小物のライバルっていう立ち位置に落ち着いていますよね。

 今後、彼って関わってくるんですかね?匡くんすらまだ物語にあまり絡んで来ないので、あまりイメージが湧きませんね。

 同い年のライバルとして登場するっていう可能性はありますかね?

 あー、それはありそうですね。すごい大げさな例ですけれど、インターハイの決勝で「前回は千夏先輩の連絡先を賭けたけど、今回は勝ったほうが千夏先輩をゲットできるからな!」みたいな感じで。

 千夏先輩関連でまだ決着はついていなさそうですし、今後も対戦はありそうですね。
その後はしばらく、千夏先輩が可愛いパートと匡くんがひたすら「いい親友」をやってるパートですかね。彼のこの動きが後々どう響いてくるのか、怖いところではありますが……。

 ですね。僕、匡くんが『ニセコイ』の集に見えて仕方ないんですよ。やはり器用であるがゆえに自分を封じてしまうようなところがあるのかな、と。匡くんに関する問題がちゃんと回収されるかどうかが、今後物語の評価に影響するかもしれませんね。

 『ニセコイ』ではしっかり回収してくれましたからね。今のところ匡くんに関してはまだ我々から見て不透明な部分が多いので何とも言えない気がしますけれど。

 あとは本筋とはちょっとズレますけど、話と話の間のページに描いてある絵があるじゃないですか。あれの雛ちゃんが「出番がないのだが…」(106ページ)って言ってるやつすごいですよね。こんなの、負けヒロインにしかできないですよ。

 わかる。僕も「雛ちゃんの出番、ねえなぁ……」と思いながら「ここまでは」読んでいました。

 この巻は雛ちゃん回なので、ここからエンジンをかけてくるわけですが。前半と後半で分けるなら多分ここですよね。

 そうですね。ここから大変なことになってきますし、この絵はちょっとしたジャブだった気すらします。

 で、試合に勝ちましたね。僕、大喜くんが試合に勝つとは思ってなかったんですよ。なんか「負けたけど、頑張ったから水族館行ってあげるよ」っていう感じの千夏先輩と、素直になれない大喜くん的な構図を予想してました。頑固な大喜くんが「いや、俺勝つまでは行かないっす」って宣言する、みたいな。

 僕は千夏先輩の連絡先がかかっているから勝つのかな、と思っていました。

 僕は逆ですね。ここで連絡先を交換されてしまって、大喜くんが落ち込むところを伏線として張るのかなと。

 けれど、それをやるにしては相手の岸くんの掘り下げが少し足りないかな、と感じてしまいます。そこを考えたら勝っても良いのかな、と思いました。一応「優勝できなかった」という点で、次回の大会への目標的な意味合いでは持ち越せていますし。

 準優勝ですけど、大喜くん的には勝っていますよね。今後も頑張っていこう!みたいな感じで。『アオのハコ』の登場人物って基本みんないい奴なんだなってつくづく実感しました。
少女漫画だと、たまに本当に救いようのないキャラが出てくるんですよね。それに比べたらなんて平和な世界なんだ、と(笑)。

 なるほどです。それで、大本命蝶野雛ちゃんが登場ですね。

 いやぁ……116ページの「大喜にしては よくやったね」って言うこのシーン、雛ちゃんが見せた最後の余裕だと思うんですよ。幼馴染だったし、自分のほうが距離的に近いと思っていたはずなんですよ。

 本当にそうですよね。次の117ページで「大喜 いつの間にそんな仲良くなったの?」って聞いてるときの焦った表情がもうなんか……すごいですよね。

 千夏先輩は言っても大喜から遠い存在だし、私のほうが近いよね、という余裕がここまでは感じられますよね。

 また『あの夏で待ってる』に絡めてしまいますけど、負けヒロインって大体「ま、私のほうが上だけどね?」みたいな余裕を持っていたらいつの間にかメインヒロインに抜かれていることに気づくんですよね。で、途端に焦りだして攻め始めるっていうところまでがセオリーとしてあるイメージがあります。

 た、谷川柑菜……。

 『物語シリーズ』の羽川翼もそうですよね。彼女も最初は余裕そうに阿良々木くんと戦場ヶ原ひたぎの話をしているのに、いつの間にか……という。

 幼馴染系のヒロインは抜かれてからがスタートですよね。

 負けヒロインロードの、ね……。

 『うさぎとかめ』みたいですね。

 でも、こういうタイプって、調子こいて寝てたら抜かれてしまった、というよりは主人公がかめ(メインヒロイン)にターボエンジン積んでますよね。

 確かに(笑)。主人公が丘の頂上からかめ(メインヒロイン)の方に近づいていきますよね。

 困った主人公だなほんと……。

シーン考察④

 で、その後118ページのところで、雛ちゃんの質問に匡くんが「俺が頼んだんだよ」って言いますよね。ここの雛ちゃんの「え……。お前もか……」みたいな表情が良いんですよね。

 で、その直後にすぐ切り替えて「いや、まだ大丈夫……」みたいな感じで切り替えて煽りに来るんですよね。

 雛ちゃんって理性的なんですよね、やっぱり。また谷川柑菜の話しますけど、「私はいつもの谷川柑菜でいるの……」ってシーンあったじゃないですか。雛ちゃんも似たようなことを言う気がしてならない……。彼女はそれができるはずだし、やると思うんです。

 雛ちゃんとか谷川柑菜のタイプのヒロインを、僕は勝手に「自己破滅型」って呼んでますね。「その行動をすると負けるのはわかっているのに、そうせずにはいられない」、みたいな。そこが「負けヒロイン」の醍醐味なのかな、とは思います。

 その矛盾が凄く良いですよね。

 まぁ、とは言っても隠しきれてはいない、と。120ページでは「何か怒ってる?」と友人に指摘されてしまいますね。

 ここも良いですよね~。自覚していない嫉妬というか。

 ここ読んだ瞬間、来たな……と思いました。

 この焦りを隠す雛ちゃん、なんだか過渡期って感じですよね。155ページの「その顔ムカつく」って言うシーンではもう「負けヒロインとしての自我」が芽生え始めてるじゃないですか。

 あそこまで来ると自分が劣勢に立っていることを理解し出すんですよね。

 ここが一番よくないですか?!じわじわとボディーブローが効いて「あれ……もしかして私、負けてる?」って思い始めるの凄く好きです。

 (こいつも負けヒロイン沼に堕ちたな)
それで、今度は千夏先輩のターンですね。水族館デートのスタートです。

 一緒の家に住んでるのに駅で集合って、結構あるシチュエーションですよね。で、初めて見る服にドギマギしちゃう、みたいな。

 同居モノだとありがちですね。たしか『継母の連れ子が元カノだった』にもありましたよね。

 今回の水族館は池袋ですよね。僕は大阪住みだからわからないんですけど、東京住みでこういう知ってる駅とか場所が出てきたら興奮したりするんですか?

 あーそうですね、見たことある場所だとちょっと嬉しくなります。池袋はたまに行きますしね。行く相手もいないし、水族館には行こうと思ったことすらありませんが……。

 ……ところで、水族館ってキースポットとして使われがちですよね。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』や、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』もそうでした。

 ですね。水族館ってやっぱり一人では行かないところなのかな、という印象は根強いのだと思います。そうなるとデートとか、恋愛ストーリーにおいてわかりやすいスポットになります。

 水族館のいいところって、やっぱり暗いところだと思うんですよね。非日常感があって、見ているものを共有できるんですよ。

 比較的静かなところですし、会話しないといけない、というのもあるかも知れませんね。

 そういう楽しいところからの落差が大事なのかもしれませんね。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』でも、水族館では楽しそうだったのに、一気にシリアスシーンに行くじゃないですか。見るのが2回目だったりすると、あとに何が待ち構えてるか知っている我々は水族館のシーンがたまらなく悲しく見えてしまうんですよね。

 アニメ版だと、2期の最後の方ですよね。思い出すだけで辛くなってきた……。

シーン考察⑤

 俺ガイルの話は、後日それ専用の場を設けるので一旦置いときましょう(笑)。千夏先輩とのデートのシーンでは何かありますか?

 149ページで、「大喜くんは いい同居人だね」っていうところですかね。次は付き合ったときに来て、「大喜くんは いい彼氏だね」って言われて欲しい。

 そういえば大喜くんが122ページで「ワンピースとか見たいな」って思っているところで、ちゃんとワンピース着てきたの良かったですね。こういうのだよ、こういうの……って思いました。このワンピース、めちゃくちゃ可愛くないですか?

 わかる。僕の目が悪いからなのか、このワンピースの色がすごい“青く”見えてしまうんですよね……。

 あ~……これは……青ですね。間違いない。

 で、この後雛ちゃんの負けヒロイン自我が芽生え始めるんですよね。155ページの「その顔ムカつく」のところとか。ここ顔半分隠れてて表情見えないの良いですよね。

 そうなんですよ。ここから話が動きだした感じがしますね。

 159ページで「雛もきっと大会では一目置かれる側だと思うけど 普通の女子なんだよなって」って匡くんが言うところあるじゃないですか。これ2巻の表題の「普通の女子」と繋がりますよね。1巻は表題が「千夏先輩」だったし、やっぱり雛ちゃんの巻なんでしょうね。

 その手前のドヤ顔も良いですよね。まだ大丈夫、みたいな余裕が感じられます。

 からの、整骨院でマウントを取りに行くっていうね。ここ多分、無意識なんですよね。

 ここ、本当に凄いな(笑)。これ最初読んだとき、「お、雛ちゃんまだ牽制する余裕あるじゃん!」って思ったんですよ。残りが20ページくらいじゃないですか。今回は宣戦布告しておいて、雛ちゃんが劣勢になるのは流石に次巻以降だろうと。
……まぁそんな甘くなかったですね、世の中。

 でも、雛ちゃんって宣戦布告できないと思います。やっぱり理性的で良い子なので。サカウヱさんがおっしゃっていましたね。
前回もいろいろな負けヒロインがいるよね、みたいな話はしましたけどその中でも雛ちゃんは「変な返答でごまかしちゃう」っていうタイプなのかもしれません。

 この手の負けヒロインが一番キますね……。

 で、その代表格として166ページにあるんですよ。「なんかすごい性癖あって欲しいな」が(笑)。

 伝説のね(笑)。

 雛ちゃんが「先輩のすごい性癖」を想像してるってだけでもう面白いですね。

 ここまでの無自覚マウントボクシングで、今回のところは勘弁して欲しいなって思ってたんですよ。164ページの「株を上げておいたぞ!」っていうのも明らかに強がりじゃないですか。

 マウント取りに来てるだけですからね……。

 辛いな……。2巻はもうこの辺で許してほしい……。
ところがどっこい。169ページが来るんですよ。

 ここ、雨降ってるのが良いですよね。

 塀のそばにしゃがみこんでの「え―――?」、これは良くないですよ。大変なことになりました(僕の感情が)。

 ここって、少女漫画なら雛ちゃんが帰って、家で悶々としているところを30ページくらい描くと思うんですよ。学校ですれ違ったり、というマイナスのシーンを描いたうえで、ちょっと和解するみたいな。でもならないんですよね。これが『アオのハコ』という作品ゆえなのか雛ちゃんの性格由来なのかはわからないですけど。ここでちゃんと聞きに行くんだ、と思いました。

 これは負けヒロインだからこそ、みたいな気はしてきますね。ここで行かなかったら雛ちゃんが勝てるのかも……。

 172ページの「いのまたたいき!これはどういうことだ!」って飛び跳ねながら言うのも、茶化してくる感じが良いですね。

 「説明してもらおうか!」のところもですよね。まだギリギリ、ほんのちょっとだけ余力があるというか。
で、しかも説明を聞いて許しちゃうんですよね。ここも負けヒロインって感じです。

 174ページの「親友だと思ってたんだけどな」ってところもお前本当か???ほかの感情はなかったか???って思いました。
その後のジャンプを大喜くんの膝の上に載せて「それで5時間耐えたら 許してやろう」っていうところもなんだか頓珍漢ですよね。

 それで、帰り道なんですよね。もう余裕がないですよ、この雛ちゃんは。

 こんなの絶対演技に影響しますって……。前につむじさんが「演技の時大喜くんのこと思い出すんじゃないか」みたいなことおっしゃってたと思うんですけど、こんなの絶対考えてるに決まってるじゃないですか。

 ですね。それこそ「普通の女子」っていうのは、これのことですよね。

 181ページの「もし本番ミスでもしたら―…」ってところも、もう怖いですね。ミスする未来しか見えない……。

 これはもう、本番ミスって、大喜くんも取られて、新体操もなくなって、「これからどうするんだろう……」ってなるところまで僕には見えましたよ。

 さらに追い打ちでミサンガの話もされますしね。雛ちゃんはここで孤独を感じてますよね。大喜くんが「同志的なやつで」って千夏先輩を評価しますから。
ここは大喜くんが千夏先輩に取られているっていう悲しみもそうなんですけど、「自分って独り」なんだなっていう思いも強いと思うんですよね。

 ですね。新体操の実力的にも孤高の存在でしょうし、雛ちゃんの幼馴染かつ理解者だった大喜くんも千夏先輩のほうへ行ってしまいますから。しかもそこにミサンガで追い打ちするっていうね。千夏先輩が「同志」って言われたときのダメージが計り知れない……。

 大喜くん的には色恋から離すためにそう言ったと思うんですけど、明らかに逆効果ですよね。

 疎外感しかない、これは。

ペ で、泣きましたね。またサカウヱさんの話になりますけど、Tシャツが檸檬なのは面白いですね。「夢ならば どれほど 良かったでしょう」っていうね。どんな考察だよって(笑)。でも、もしかしたら狙ってるんじゃないかって思っちゃいました。

 まだ2巻なんですよね……。恐ろしい話だ。

 普通なら4巻くらいかけても良いと思うんですよね。

 で、「1人でも平気だもん」って……。んなわけないだろ……。ほんとに辛いな……。

展開予想

(注)2人とも本誌未読勢です。勝手に3巻の展開予想をしています。

 今後の予想なんですけど、雛ちゃんは本番ミスると思います。

 それはもう、本当にそうですね。

 その失敗を大喜くんが慰めると思うんですよね。「何してるんだよ雛、辛いことあったら俺に言えよ」みたいな。それに雛ちゃんが「あんたに何がわかるのよ!!!あんたのせいよ!!!」って怒ってどっかに行っちゃうところから、すれ違いパートが始まるんですよ。
で、雛ちゃんに手を差し伸べるのが匡くんなんじゃないかな、と。そこで匡くんが雛ちゃんに対する自分の恋情に気づくんですけど、雛ちゃんの感情は知っているから……という展開になるんじゃないかなと思います。

 『あの夏で待ってる』の哲朗だ……。
僕は匡くんのところが千夏先輩になるんじゃないかなと思います。雛ちゃんに追い討ちかけに来そうですね。

 そんないじめます?雛ちゃんのこと。鬼だな……(笑)。

 大喜くんと雛ちゃんが喧嘩しているところを千夏先輩が見て、二人の仲を取り持つ……。もとい追い討ちをかけに来てもいいのかなと。この展開だと誰も幸せにならないな……。なんか自分で言ってて辛くなってきました。

 ほんとに誰も幸せにならないですよね?徹底的に負けてほしい感じですかね。

 そういう展開が見たい……かもしれないです。あと、負けヒロインがラストで主人公以外とくっつく展開は、なんかそれ負けてなくない?と思ってしまいますね。

 それはちょっとわかります。

 そういうのをひっくるめたら、ここは追い討ちタームなのかな、と。

 追い討ちターム(笑)。ただ、1巻が千夏先輩、2巻が雛ちゃんって来たら3巻は匡くんの話になるんじゃないかなっていう気持ちもあります。

 なるほどです。2巻についてはこんな感じですかね?

ペ あとは言うなら帯ですかね。「青春が動き出す―」って。

 本当に動き出しましたね……。三巻に期待です。

 これ、作者さん読んだりしてないかな(笑)。

 でも性癖の話してますよ。いいんですか?

 そうだった……。

 というわけで、次は順調なら12月初旬ですかね。またやりましょう。ありがとうございました!

 そうですね。またお願いします。ありがとうございました!

(たぶん)3巻編に続く……!

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