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※フィクションです。

フォルクスワーゲンのオイルパンが割れた。そんなわけで、修理に出している3日間はレンタルした車を使う。

昨日、ペルージャへ出かけた帰り道。
走ったり鳴ったりするおもちゃが大好きな35歳児は、
「レンタカーだから警察以外にならナンバーを覚えられても大丈夫! 俺はBeep Beepロードランナーだ!」とかなんとか叫びながらクラクションを鳴らしまくり、時速250㎞でスーペルストラーダを爆走する。
僕はその隣で、いつも通りシートベルトを締めずに爆睡していたが、後部座席に同乗しているカルロが
「アンドレア! 頼むからやめてくれ!」と懇願する声で、時折目を覚ましながら帰宅した。

そして、夕食後。

「ねぇ、これ、一緒に読もう」
僕はそう言いながら、3本目のビールを開けたアンドレアに、noteのとある記事を表示したスマホを差し出した。


※この記事(上のリンクの記事ではなく、今あなたが読もうとしてくださっているこの文章)は、日本人の僕とイタリア人の友人アンドレアがイタリア語で交わした架空の会話を、日本語に訳したものです。
ほぼ会話のみで構成されているので、どちらの発言であるかを明確にするため、僕の台詞にはL、アンドレアの台詞にはAを、「」の前に付けてお送りしたいと思います。


A「あ、”かるた” だ。君は取れた枚数が家族で一番少ないと号泣するから、誰も一緒に遊んでくれなくなったカードゲームだよね」

L「...そうだよ」

A「学校でやったとき、札の取り合いが手の叩き合いになって、そのうち殴り合いに発展して、先生に怒られたカードゲームでもあるよね」

L「...そうだよ」

A「ということは、これはバトル漫画だね」

L「...どういうことかは分かんないけど、競技かるたが題材になっているとはいえ、『作品のメインは、主人公の友情や恋愛という青春ストーリーかなと思います』ってkaekoikさんが書いてるから、違うと思う」

A「あぁ、そう。物語の内容は漫画を読んでみないと分からないけど、かるたのルールはとても詳しく書かれているね。でも、むかし君が説明してくれたのとは違うような気がする...」

L「あぁ、それは、何ていうか...僕がお前に説明したのは子供用のかるた*だから。こっちのは百人一首なんだよ」
* “いろはかるた”のことです。

A「百首の和歌って、君が中学生のときに “三分の一だけ覚えて100点を取った” やつか」

L「そうそう! 3年のときの国語の先生が、生徒に暗誦させるのが大好きだったんだよ。『枕草子』の冒頭を、暗記できたやつから先生の前で暗誦する...っていうのをやったことがあったんだけど、僕は最後に出て行って、自他ともに認める早口なのに、さらに舌を噛むんじゃねぇかと思うくらいのスピードで暗誦したんだ。そしたら半分くらいのところで『もういい。次から覚えたらすぐに出てこい』って言われたの。そんなことを繰り返してたら、そいつ、3学期の学年末に『百人一首の和歌を1首暗誦するごとに1点として、それを学年末試験の代替えにする』とか言い出したんだ。みんなは国語の授業ごとに数首ずつ先生のところへ暗誦しに行ってたんだけど、僕は30首だけ覚えて、それを最後の授業の終了数分前に先生の前で、いつも通り早口で暗誦したんだよ。そしたらさ...w」

A「...うまくいったから良かったけど、危険な賭けだ。先生が『もういい』って言わなければ30点しか取れないんだから」

L「中学には留年とかないから別にいいんだよ。出し抜いたときの快感に比べたら、そんなのリスクでもなんでもない」

A「君は本当に救いようがないな...日本の学校では限られた人数しか最高評価をもらえない*んだろ。まじめに暗記した子に失礼だ」
*絶対評価のことです。

L「...言っておくけど、お前にそんなこと言う資格はないよ。共犯者なんだから」

A「...共犯者?」

L「そう。国語じゃなくて英語だけどね。ねぇ、今でも極小スマホって売ってるのかな? 6年間、本当にお世話になったよねぇ」

A「それは... 君が “小学校に行きたくない理由は英語の授業が嫌だから” って言うから... 中学に入ったら内容も難しくなるし時間数も多くなるから、心配して...」

L「まぁ、あれは完全犯罪だし、仮にバレてても偽計業務妨害罪の時効は3年だから気にすんな。それよりさ、明日、『ちはやふる』立ち読みしに行かない?」