あんらん。

始めまして、あんらん。と申します。 カクヨムで二年余り活動していましたが、こちらでも作…

あんらん。

始めまして、あんらん。と申します。 カクヨムで二年余り活動していましたが、こちらでも作品の発表をと思いたちやってきました。 妖しいもの怪しい事どもの物語を創作しています。好きな作家は京極夏彦。時代物も大好きです。どうぞよろしくお願いいたします。

最近の記事

『七つの鬼の物語』

・あらすじ・ これは七つの「鬼」の物語です。 古くて新しい「鬼」の世界を新解釈で掌編小説にしてみました。 『御伽草子』『風土記』などからその妖しくも美しい世界を追求しました。 鬼と人との間に生まれた男の子の物語。ちょっと間抜けな地獄の獄卒。鬼と絡んだ牛若丸の伝説から大江山の鬼退治の新説、生きながら鬼となった女性たちの呟き。打ち出の小槌をどうしても使わせたい鬼。最後に鬼に魅入られた兄弟の話しです。 了。

    • 『笑う 河童』

        はじめに  ・これは遠い昔、貧困飢饉にあえぐ日本のとある地方の物語です。 これもひとつの河童伝説なのです。悲しく残酷な物語ではありますが、もう二度とこんなことが語られないよう祈りをこめ、これにて追悼とさせていただきます。(写真はイメージです。うちのカエルたち) 『笑う 河童』   そのときぼくは、なにが起きたのかわからなかった。    霜がようやく消えた村はずれの川の土手で、フキノトウをみつけたぼくが手を伸ばしたその瞬間だった。  後ろから押されそのまま水の中に真っ

      • エッセイ 児童文学によせて 2      モモとジョバンニとガンバ

        ・「モモ」の声  日本を愛してくれたエンデに感謝。 『モモ』ミヒャエル・エンデ作/大島かおり訳 岩波文庫 わたしの大好きな『モモ』。 もう何度読んだかわかりません。(たぶん、うなずいている人、多いと思います) 「モモ」が時間泥棒たちから街のみんなを助けるお話しです。映像化もされました。観てないですけど。 エンデ作品は初期の『ジムボタンの機関車大冒険』がアニメで映像化されています。ずい分昔NHKで放送されました。覚えている方あるかな?。 『モモ』は、エンデがイタリアへ行

        • エッセイ 児童文学によせて

          1 児童文学という沼そして世界三大ファンタジー 三十年以上も前のことです。 娘が幼稚園の年長に上がった頃、若い母親たちの読書会に参加しました。 「子どもたちになるべく良書を」また「その良書とはどういうものか」を学びあう会でした。 主催者は、独身の頃関西のラジオ局でアナウンサー経験のある女性でした。 「絵本の読み聞かせ」ボランティアが盛んな時代です。 彼女の読む絵本はそれはそれは心地よく、子どもたちのみならず、大人もつい聞き入ってしまうほどの優しい声でした。 この読書会「T市

        『七つの鬼の物語』

          『鬼の夜ばなし7 笑う、鬼』

           これは、ぼくのおじいちゃんが子供の頃聞かされたお話し。  おじいちゃんのそのまたおじいちゃんに起こった出来事だという。  そのおじいちゃんの名前はツトム。十歳くらいの頃のことだった。  ツトムには、ケンジというもっとちいさな弟がいた。  ある時、母親が病気で入院し、そのうえ仕事が忙しくなってきた父親は、頼る者もないまま子どもたちの世話に困って、遠くの親戚の家にふたりを預けることにした。  まだ車のある家は限られていた時代だったから、電車とバスを乗り継いで、ふたりを連れた父

          『鬼の夜ばなし7 笑う、鬼』

          自己紹介

          皆さま初めまして、あんらん。と申します。 note参加、ひと月たちました。 ショートストーリーの物語18作アップしたところでの自己紹介とあいなりました。この18作は「カクヨム」で創作したものを加筆修正したものです。 愛着のある作品たちをお蔵入りにしたくなくて再度登場させました。 私、屋久島生まれ三重県在住。ただ今63歳の主婦です。夫と二人暮らし。 年々落ちる気力体力にムチ打って、夢実現のため奮闘しております。 自作品の「書籍化」これが私の夢です。 福祉関係、金融関係、サー

          『鬼の夜ばなし6 打ち出の小槌(こづち)』

           なぜなのか、と鬼は考えていた。  ひと振りふた振りすれば誰もがこれの虜《とりこ》になる。  まずは米。次に金銀、続いて豪華絢爛《ごうかけんらん》な屋敷や着るもの。打ち出の小槌はなんでも与えてくれるだ。  欲が欲を生み、どうでもいいようなものも出したりする。  いったい何に使うのか首を傾げたりするのもご愛敬だ。  人とはそんなもの。それがごくごく普通ではなかったか。   爽やかな風薫るある日のこと。 「里の者たちに悪さをする鬼め、退治してくれる」と声がする。  だが声は

          『鬼の夜ばなし6 打ち出の小槌(こづち)』

          『鬼の夜ばなし5 三人の鬼女のつぶやき(生きながら鬼となった女たち)』 

          「でね 悔しいからあの寺の釣鐘に閉じ込めてやったわ そしたらいつの間にか わたし 蛇になっちゃってて 気が付いたら辺り一面火の海だったのよ」  囲炉裏の炭が一瞬勢いよく燃え上がった。 「うふふふ」まだあどけなさの残る無邪気なこの娘には、藤色の小袖がよく似合っていた。興味津々なのだろう、若さゆえの真っ直ぐさで、娘は話しながら反対側の女を始終眺めていた。 「まあ それじゃ 中のお人は 蒸し焼きじゃないの」 「あらそれでも足りないぐらいよ 還俗《げんぞく》してわたしを嫁にするっ

          『鬼の夜ばなし5 三人の鬼女のつぶやき(生きながら鬼となった女たち)』 

          「鬼の夜ばなし4 新説大江山鬼退治の顛末」

           時は平安中期、いつの頃からか夜な夜な都に出没する鬼の集団があった。  頭目の名は酒吞童子という。  金品強奪、女子どもの拐かし、抵抗する者は有無を言わさず殺害しさらに辺り一帯打ち壊して去るという。この者どもの消えたあとはまるで大災害に遭ったような酷い有様だった。都の検非違使でさえもまるで歯が立たずやりたい放題の輩であった。  討伐を命じられたのは源頼光と藤原保昌のふたり。  頼光は配下として渡辺綱、坂田公時、碓井貞光、卜部季武の四名を従え、鬼の根城の大江山へ向かった。この

          「鬼の夜ばなし4 新説大江山鬼退治の顛末」

          『鬼の夜ばなし3 牛若丸 鬼から「虎の巻」を手に入れる。』

           鞍馬の山に幼い頃より天狗に鍛えられし者あり。名を牛若丸という。  ある日天狗の頭、大天狗に 「もうわしからお前に授けるものは何もない」 と告げられた牛若だったが、 「いえわたしはまだまだ未熟もの どうか今後も御指南を賜りたく。   こんなありさまでは なにも成し遂げられません」   ―――出会った頃は貧弱な小童《こわっぱ》であったがいつの頃からか、わしに一歩も引かぬ術を会得した。ここまでになるとは思いもよらぬことであった。残るはあれのみ。 大天狗は感慨深げな眼を向ける。

          『鬼の夜ばなし3 牛若丸 鬼から「虎の巻」を手に入れる。』

          『鬼の夜ばなし2 鬼の獄卒 神さまのお供えに手を出す。』

           ひとりの獄卒鬼が地上へ向かうべく、地獄の門を潜り抜けようとしていた。 「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ」  あちらにけつまずき、こちらにぶつかり、あたふたあたふた。  ザンバラ髪振り乱し、赤いはずの顔は青ざめている。 「おい、またあいつだぜ」ふたりの門番は横目で顎をしゃくるだけ。声もかけなかった。  鬼は焦っていた。   実はこの鬼、たびたびやらかす奴で、閻魔|さまの雷も一度や二度ではなく、その度に周りに及ぼすとばっちりは災害級だった。 「やれやれ」門番ふたり嵐の予感に頭

          『鬼の夜ばなし2 鬼の獄卒 神さまのお供えに手を出す。』

          『鬼の夜ばなし1 コズナ(昔話「鬼の子小綱」より)』

          昔々のことだった。山深い村にそれはそれは美しい娘がおったそうな。 その瞳は星のよう その姿は月のよう 笑顔は咲いたばかりの花のよう。 娘はまた身を惜しまずよく働くので 嫁に欲しいという者が絶え間なく 噂はあたりの村々に広まり 娘を見に来る者も絶えなかった。 その噂は風にのり山の奥の奥に住む鬼のところまで届いていた。 ある日のこと嵐とともにやってきた鬼に娘は連れ去られてしまう。 上を下への大騒ぎとなったが鬼が相手となれば誰もが尻込みする。 そこにひとり名乗り出た者があった。隣

          『鬼の夜ばなし1 コズナ(昔話「鬼の子小綱」より)』

          「鬼について」

          「鬼」といえば古くはおとぎ話の『桃太郎』『一寸法師』に登場するものや『泣いた赤鬼』などがよく知られていますが、現代では『鬼滅の刃』がダントツでしょう。 ではその「鬼」とはなにかと問われれば、知っているようで知らない方が大多数ではないでしょうか。かく言う私もそのひとりでした。 なぜ時代を越えてもてはやされるのか?それを探り、「鬼」をテーマの物語の創作を思い立ちました。そのとき参考にしたのが上記の方々の著書です。そこには私の知らない世界がありました。 そもそも日本人にとっての「

          「鬼について」

          「怪しいもの好きなんです」

          私の生まれ故郷は南の島。世界遺産で度々取り上げられるあの島です。 これは「白谷雲水峡」という山の上にある自然林の中にある光景です。 まるで宇宙人が休憩しているみたいですが、何年かかってここまで成長したのか、れっきとした樹木の一部です。 故郷を離れはや四十年。東海地方の田舎に暮らす私はもうそんなに帰省することもありませんが、標高800メートルほどのところにあるこの姿、興味のある方はどうぞお越しくださいませ。

          「怪しいもの好きなんです」

          『奇談・怪談・夢語り その十』

          ~横断歩道の女~ その女《ひと》は横断歩道の向こう、信号機の脇に身を寄せるように立っていた。薄桃色のワンピースと長い髪が印象的だった。 うつむき加減に足元の一点を見つめている。 怒っているような、今にも泣き出しそうなそんな横顔だった。 そういえば前にもあそこにいた。 見かけるようになったのはいつからだろう。 今までは気にしなかったのになぜだか今日は目が離せなかった。   それでもぼくは今日早く帰りたかったから、足踏みして信号が変わるのを待っていた。見たいテレビがあったのに

          『奇談・怪談・夢語り その十』

          『奇談・怪談・夢語り その九』

          ~世界の果ての蟻地獄~ 逃げていた。 昼も夜も  逃げていた。 草原を駆け抜け 山谷を越え 海原を渡り 逃げていた。   あいつ あいつが やってくる。 かわして いなして やり過ごしていたのに。 神出鬼没 奇々怪々のあいつが またやってくる。 僕の事なんかもうとっくに諦めたと思っていたのに  ふいに 後ろから手が伸びてくる。 僕の髪に指先をからめ そっと耳に触れ 肩をかすめ通り過ぎていく。 油断してはいけない。 あいつは また引き返してくる。 耳障りなノイズのような声

          『奇談・怪談・夢語り その九』